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魔法の学園
学園の中で
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ピアノがある。部屋の真ん中に置かれた大きな楽器。形が違うけれど、ピアノだと思った。
「この部屋は?」
「音楽の教室ですわ。別の授業の時に使う部屋」
「音楽があるんだ」
「ありますわ。でも魔法の授業はここではありません。もう少し先です」
彼女はスタスタと歩き続ける。ピアノがあるなら、曲が作れる。頭の中で描く曲は実際に音にするとやはり違いがあったりするから、あると嬉しい。貸してもらえたりするのかなと考えていると、魔法の授業で使う教室に着いたみたいだ。
「ここからは、その子は危ないと思いますけれど?」
「え?」
「猫さん、一緒で大丈夫かしら?」
優しい口調でヨウに話しかけるイソラ。ヨウはその視線から逃げるように移動する。
「ありがとう、心配してくれて。上手に逃げてくれると思うから」
「そう、もし何かあれば預かりますわ」
残念そうにするイソラだが、気軽に預けてもし私が居眠りなんてした日には膝の上に魔人の男の子が乗ってるなんてことになるのよね。ぶるりと震えてから、気をつけようと心の中で何度も自分に注意した。
「基本的に自由席なのですが、力関係が少しありまして、奥に陣取っている銀色の髪の男性がクラス内最上位クラン・ブイ・フートェとそのお友達です。まあ、彼らは自分達のグループで固まっているので特に何か言われることはないかと思います」
奥を見ていたイソラが、結愛のいる場所に目線を移す。
「あちらが、クラス内中位ですわね。彼女の後ろ楯で上位になるつもりかしら」
イソラはふぅとため息をつく。彼女はどういう立ち位置なんだろう。
「あら、私のことバカにしています?」
「いえ、イソラはどういう力関係なのかなって思って。って何か顔に出てますか?!」
慌てて、手をふると彼女は笑って答えた。
「私は、そうですね。底辺でしょうか」
「え?」
「グループに所属するのが面倒なので、いつも一人ですの」
「あ、えっと、そうなの?」
「えぇ、世話好きなのですが、なぜか皆さんお逃げになるので、いつの間にか……」
何て言えば良いんだろう。とてもいい人に見えるけれど。
「まあ、すずも逃げたくなったらいつでも逃げてもらって構いませんわ。逃げるものは追うつもりはありませんので」
「そんなことしないよ――」
「ふふふ、あそこに座りましょう」
彼女が指さした席は、はじっこで人が全然いなくて、ある意味すごく目立つ席だった。
「あぁ、すずもいつか逃げるのかしら……」
うっとりとした感じの抑揚でそんな言葉がちらりと聞こえた気がしたけれど、私は聞こえないフリをしてイソラの隣に座った。
ぐるっと見渡すと、一階に観客席がある体育館みたいだった。
少しして、カイともう一人男の人が入ってきた。同時に声が響く。
「きゃぁー! カイ先生が授業を?」
「同じクラスになれて良かった」
「嬉しい」
「おぉ、すごいな。滅多に動かないカイ先生が授業をするなんて」
なんだか、一部悪く言われているような気もするが、かなりすごい先生なんだろう。カイの話ばかりで、もう一人の先生の話はでてこない。どんな人なのだろうと見ていると、イソラが気がついたのか教えてくれた。
「カイ先生は知ってますの?」
「あ、うん。結愛の専属だって聞いてます」
「なるほど……。もう一人は?」
「初めて見ます。お名前は?」
「彼はカイ先生と同期の上位クラス担当、ルキア先生です」
「上位クラス……?」
「そう、私達上位クラスの」
「えぇ?!」
何も知らないのに、いきなり上位クラスに入れられるなんて、どうなってしまうんだろう。私が不安に思っているのをよそに、魔法の授業が始まった。
「この部屋は?」
「音楽の教室ですわ。別の授業の時に使う部屋」
「音楽があるんだ」
「ありますわ。でも魔法の授業はここではありません。もう少し先です」
彼女はスタスタと歩き続ける。ピアノがあるなら、曲が作れる。頭の中で描く曲は実際に音にするとやはり違いがあったりするから、あると嬉しい。貸してもらえたりするのかなと考えていると、魔法の授業で使う教室に着いたみたいだ。
「ここからは、その子は危ないと思いますけれど?」
「え?」
「猫さん、一緒で大丈夫かしら?」
優しい口調でヨウに話しかけるイソラ。ヨウはその視線から逃げるように移動する。
「ありがとう、心配してくれて。上手に逃げてくれると思うから」
「そう、もし何かあれば預かりますわ」
残念そうにするイソラだが、気軽に預けてもし私が居眠りなんてした日には膝の上に魔人の男の子が乗ってるなんてことになるのよね。ぶるりと震えてから、気をつけようと心の中で何度も自分に注意した。
「基本的に自由席なのですが、力関係が少しありまして、奥に陣取っている銀色の髪の男性がクラス内最上位クラン・ブイ・フートェとそのお友達です。まあ、彼らは自分達のグループで固まっているので特に何か言われることはないかと思います」
奥を見ていたイソラが、結愛のいる場所に目線を移す。
「あちらが、クラス内中位ですわね。彼女の後ろ楯で上位になるつもりかしら」
イソラはふぅとため息をつく。彼女はどういう立ち位置なんだろう。
「あら、私のことバカにしています?」
「いえ、イソラはどういう力関係なのかなって思って。って何か顔に出てますか?!」
慌てて、手をふると彼女は笑って答えた。
「私は、そうですね。底辺でしょうか」
「え?」
「グループに所属するのが面倒なので、いつも一人ですの」
「あ、えっと、そうなの?」
「えぇ、世話好きなのですが、なぜか皆さんお逃げになるので、いつの間にか……」
何て言えば良いんだろう。とてもいい人に見えるけれど。
「まあ、すずも逃げたくなったらいつでも逃げてもらって構いませんわ。逃げるものは追うつもりはありませんので」
「そんなことしないよ――」
「ふふふ、あそこに座りましょう」
彼女が指さした席は、はじっこで人が全然いなくて、ある意味すごく目立つ席だった。
「あぁ、すずもいつか逃げるのかしら……」
うっとりとした感じの抑揚でそんな言葉がちらりと聞こえた気がしたけれど、私は聞こえないフリをしてイソラの隣に座った。
ぐるっと見渡すと、一階に観客席がある体育館みたいだった。
少しして、カイともう一人男の人が入ってきた。同時に声が響く。
「きゃぁー! カイ先生が授業を?」
「同じクラスになれて良かった」
「嬉しい」
「おぉ、すごいな。滅多に動かないカイ先生が授業をするなんて」
なんだか、一部悪く言われているような気もするが、かなりすごい先生なんだろう。カイの話ばかりで、もう一人の先生の話はでてこない。どんな人なのだろうと見ていると、イソラが気がついたのか教えてくれた。
「カイ先生は知ってますの?」
「あ、うん。結愛の専属だって聞いてます」
「なるほど……。もう一人は?」
「初めて見ます。お名前は?」
「彼はカイ先生と同期の上位クラス担当、ルキア先生です」
「上位クラス……?」
「そう、私達上位クラスの」
「えぇ?!」
何も知らないのに、いきなり上位クラスに入れられるなんて、どうなってしまうんだろう。私が不安に思っているのをよそに、魔法の授業が始まった。
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