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魔法の学園
テトの国へ
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「あれ、すずちゃん。見えてきたって!」
「何、あれ……」
赤レンガの色だろうか。赤い大きな塔が一本そびえ立つのが見える。
「ここが、私の国ナグカルカ。首都のグウリだよ」
「赤い街ですね」
「そう。このあたりでとれる壁等の材料は、焼き入れするととても美しい赤色になるんだ」
「あの大きな塔は?」
「あれは大昔の遺跡なんだ。ずっとここにあり、街を見守ってくれている」
「そうなんですね」
「すずちゃん、あそこ! 浮いてる」
「え、あ、本当だ」
塔の上の方がぶっつりと切れている。なのに、その上に塔は続いている。
「魔法なんですね」
「そうだね。あそこは誰も入ることが出来ない謎の場所なんだ。きっと、創った人が魔法をかけているんだろう」
「誰も入れないんですか」
「あぁ」
とても高い場所。あの窓から覗けば街を一望出来そう。
「なぁ、すず、暑いんだけど……」
馬車の外から、ヨウが話しかけてきた。彼は私達の頭上、馬車の屋根に座っている。
「ここにいたいなら、ヨウはそのフードで角を隠しておいてもらわないと」
「だって……、ヨウ。そんなに暑い?」
「……すずと居るためなら我慢する。だけど、魔法が使えれば、黒陽炎で隠せるのに……」
ぶつぶつと文句を言いながら、彼は体勢を変えたのか窓の外に彼の靴が見えた。
なんだか、ヨウの言動が出会った時と比べてだんだんと幼くなっている気がする。もしかして、あの金輪のせい?
「すずちゃん、ヨウさんと、どんな関係なの?」
「え……、どんなって言われても、――」
言ってもいいのかな? 本人が上にいるのに――。牢に入れられてたって言ったら、また牢に戻されたりしないかな。
「あの、その――」
焦ってあたふたしていると、ヨウの声が上から聞こえてきた。
「牢で隣同士だった。すずが隣で歌ってたのがすごく聞いていて気持ち良かったんだ。だから、一緒に逃げてきた。そのまま、すずを連れて遠くに行くつもりだった」
「歌、気に入ってくれたんだ。ありがとう……」
歌をそんなに気に入ってくれたんだ。そっか。この世界の初めてのファンか。なんだか、嬉しいな。
私は照れながら、両手の人差し指を合わせくるくるとまわした。
「魔人が聖女の歌を気に入るとはね……」
テトは少し考えるようにしている。
「あの、でも私は聖女とか、何も力がないって、その――」
「いや、鈴芽さん、君からも聖女の力を感じるよ。今はとても微弱なだけだ。だから、きっと力の使い方がわかれば君も聖女になれるよ! 都についたら学園に通えるように手配しておこう。二人とも、たくさん学べるようにしておくよ」
私も、麻美や結愛みたいな事が出来るようになる?
力の使い方を学べば……。
「えっと、学園ですか?」
「そう、ナグカルカ魔法学園。この国のことや魔法のことを知るのに一番いい方法だから。さぁ、もうすぐ着くよ」
ガタンと音がして馬車が止まった。
「ナグカルカへようこそ。異世界の少女達」
テトが結愛に微笑みかけたのを見て私はそっと目をそらした。
「何、あれ……」
赤レンガの色だろうか。赤い大きな塔が一本そびえ立つのが見える。
「ここが、私の国ナグカルカ。首都のグウリだよ」
「赤い街ですね」
「そう。このあたりでとれる壁等の材料は、焼き入れするととても美しい赤色になるんだ」
「あの大きな塔は?」
「あれは大昔の遺跡なんだ。ずっとここにあり、街を見守ってくれている」
「そうなんですね」
「すずちゃん、あそこ! 浮いてる」
「え、あ、本当だ」
塔の上の方がぶっつりと切れている。なのに、その上に塔は続いている。
「魔法なんですね」
「そうだね。あそこは誰も入ることが出来ない謎の場所なんだ。きっと、創った人が魔法をかけているんだろう」
「誰も入れないんですか」
「あぁ」
とても高い場所。あの窓から覗けば街を一望出来そう。
「なぁ、すず、暑いんだけど……」
馬車の外から、ヨウが話しかけてきた。彼は私達の頭上、馬車の屋根に座っている。
「ここにいたいなら、ヨウはそのフードで角を隠しておいてもらわないと」
「だって……、ヨウ。そんなに暑い?」
「……すずと居るためなら我慢する。だけど、魔法が使えれば、黒陽炎で隠せるのに……」
ぶつぶつと文句を言いながら、彼は体勢を変えたのか窓の外に彼の靴が見えた。
なんだか、ヨウの言動が出会った時と比べてだんだんと幼くなっている気がする。もしかして、あの金輪のせい?
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「え……、どんなって言われても、――」
言ってもいいのかな? 本人が上にいるのに――。牢に入れられてたって言ったら、また牢に戻されたりしないかな。
「あの、その――」
焦ってあたふたしていると、ヨウの声が上から聞こえてきた。
「牢で隣同士だった。すずが隣で歌ってたのがすごく聞いていて気持ち良かったんだ。だから、一緒に逃げてきた。そのまま、すずを連れて遠くに行くつもりだった」
「歌、気に入ってくれたんだ。ありがとう……」
歌をそんなに気に入ってくれたんだ。そっか。この世界の初めてのファンか。なんだか、嬉しいな。
私は照れながら、両手の人差し指を合わせくるくるとまわした。
「魔人が聖女の歌を気に入るとはね……」
テトは少し考えるようにしている。
「あの、でも私は聖女とか、何も力がないって、その――」
「いや、鈴芽さん、君からも聖女の力を感じるよ。今はとても微弱なだけだ。だから、きっと力の使い方がわかれば君も聖女になれるよ! 都についたら学園に通えるように手配しておこう。二人とも、たくさん学べるようにしておくよ」
私も、麻美や結愛みたいな事が出来るようになる?
力の使い方を学べば……。
「えっと、学園ですか?」
「そう、ナグカルカ魔法学園。この国のことや魔法のことを知るのに一番いい方法だから。さぁ、もうすぐ着くよ」
ガタンと音がして馬車が止まった。
「ナグカルカへようこそ。異世界の少女達」
テトが結愛に微笑みかけたのを見て私はそっと目をそらした。
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