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三人の女の子

選別される三人

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 結愛と手を繋ぎ、立ってる場所から見える範囲を左から右へと見る。
 たくさんの人が後ろ側に、数人が私達の近くに立っていた。少し奥には、絵本に出てくるような王様みたいな人が立っている。

「三人ですか。これは、これは」
流石さすがは、稀代きだいの魔法使い。しかも、その魔法使いが二人組んでの召喚しょうかんですからねぇ」
「いやいや、そちらの国の……」
「一人みすぼらしい服がいますね。他の二人は光り輝く美しいドレスなのに――」

 私達のまわりで話が進められている。みすぼらしい、私の事だろうか。二人は舞台衣装のドレスのまま、私は着替えが終わっていたから私服だった。

「ねぇ、何これ。ゆあちゃん」
「……」

 小さな声で、結愛に話しかけるけど、彼女の手はぶるぶると震えていた。

「さぁ、ここに!」

 バタンと扉が開き、三人の男の人が連れてこられる。
 三人とも、怪我が酷かった。

「召喚されし、聖女達よ。その力を示して欲しい」

 最初に声をかけてきた整った顔の男性が笑顔でそう言った。彼は、まるで男性アイドルのような顔立ち、濃い青い髪、瞳も海のように深い青色だ。

「あの、私達は――」
「どうすればいいんですか?」

 結愛が話そうとした時、同時に麻美が前に出た。
 男は、前に出た麻美に微笑ほほえみかけて、手をとった。

「勇気がある、君の名前は?」
麻美あみです。あの貴方はなんと呼べばいいですか?」
「僕はリオン・ヴァン・ファイスヴェード。リオンと呼んでくれてかまわない。アミ、では君からだ」

 手を引かれ、麻美はリオンと一緒に一人の男の前に立たされた。

「彼の怪我が治るように祈り、歌って欲しい」
「歌……」

 麻美はすぐに、息を吸って歌いだした。私達の『SAY』の歌を――。

『泣かないで、私達がいつだって一緒にいるよ。大丈夫、お日様はいつだって輝いてる。その涙、すぐに乾くよ。一緒に笑おう~』

 麻美のカッコいい凛とした声がこの空間に響き渡る。いつもメインを歌う、心に響く歌声。涙が出そうになる。何で、彼女の歌声はこんなに心を揺さぶるんだろう。あんなことを言われたのに、心のどこかでしょうがないかもしれないと思ってしまうのは、彼女のこの圧倒的な歌声……。

 ぽたり

 さっきまで止まっていた涙が、一粒こぼれ落ちてしまった。

「「「おぉぉぉ!!」」」

 麻美の目の前に立つ男の様子が変わった。怪我が光の粒に包まれ、消えていく。何が起こっているの?
 怪我がなくなった男は、麻美にひざまずく。

「感謝いたします。聖女アミ様」
「これで一人は確定した。さぁ、次の少女よ」

 麻美はリオンに手を引かれ、彼が立っていた場所に連れていかれた。

「我が国の番だ」

 燃える炎のような髪と緋色の瞳を持つ男の人が私達の前に立った。とても厳しそうな顔をしていて、どこか物憂げな感じがする。私はその瞳に魅入みいっていた。

「貴女の名前は?」

 彼の差し出した手は、私ではなく結愛へと向けられた。

「あの……、結愛です。和泉結愛いずみゆあ
「ユアでいいのかな?」

 こくりと結愛が頷くと彼の厳しかった顔が少し柔らかくなって薄く紅くなっていた。

「私の名前はテト・ポト・ナグカルカ。名はテトだ。ユア」

 すっと結愛の手をとり、麻美の時のように一人の男の前に連れていかれる。

「あっ……」

 私と結愛の手が離れた。テトと名乗った男は私に目を向けることなく結愛だけを見ている。

「ユア。さぁ、見せてくれ」

 私の方をちらちらと結愛が見ながら、一度大きく息を吸って、結愛が歌い始める。今度は彼女の優しい歌声が響く。『SAY』の歌。

『二人の約束。プロミス、交わした約束を今、果たそう。会いに行くよ。あなたに。そして言うよ。約束の言葉を~』

 麻美と同じ現象が起こる。光の粒が男の人の怪我を包み、すぐに怪我が消えた。

「ユア、君も聖女なんだね。良かった。私の国に来てくれ」
「え、あの……」

 結愛はそのままテトに手を引かれ、麻美とは反対の場所に連れていかれた。

「最後の一人ですね」

 冷たさを感じる女の人の声が、その場に響いた。
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