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「君の名前は?」
同い年くらいだろうか、目の前に立つ女の子に問いかける。
「私? 私はね――」
鬼だよと、彼女は笑いながら言った。
とても美しい彼女には似合わない小さな小さな角と赤色のまだらがある肌。
「君はどこからきたの?」
「私? 私、どこからきたんだっけ。そうだ、空からふってきたの。こんな風に」
べしょりと何かがふってきた。
「出られない私のお仕事。今回はあなたの番。えっと名前は?」
「え、オレの名前? なんだっけ」
「……名前ないの?」
「あはは、あったんだろうけどさぁ。オレ記憶が次の日まで持っていけないらしくてさ。事故の日のオレなんだ。ずっと」
「……? 何それ」
「これ」
オレの手にはマジックで大きく文字が書かれていた。事故の日のオレへ、手紙を見ろ、と。
「たぶん手紙はこれ」
ポケットから手紙を取り出す。さっき彼女が声をかけてくる前にざっと読んだ。
「そうなんだ」
「さて、どうしたらいいんだろう。オレどうしてここにきたんだろう」
「さぁ。私に聞かれても困る。ただ」
「ただ?」
「ご飯の時間だから、お先に」
「え、まじ? オレもお腹空いてるんだ」
彼女は先ほど落ちてきた何かに手を伸ばした。
「うっわ、まじ? ヤバいな。やっぱ鬼は人の肉をたべるんだ」
「……人の肉? これは食べ物」
「いやいや、どう見ても人でしょ。これ」
「食べ物だもん」
「へー、なんか学校のやつに似てる気がする。あー、誰だっけ」
ぽろぽろと涙を流しながら人を食べる鬼。なぜ、泣いているんだろう。
「食べてみる?」
手の上にきれいな赤色を乗せて彼女はこちらを見た。あぁ、きれいだな。こんなに美しいものを、オレは明日忘れてしまうのか。
「じゃあ、君が食べさせてー」
「やだ」
おどけてみせたが、彼女には逆効果だったようだ。
オレはとなりにしゃがみこんでそれをずっと眺めていた。
同い年くらいだろうか、目の前に立つ女の子に問いかける。
「私? 私はね――」
鬼だよと、彼女は笑いながら言った。
とても美しい彼女には似合わない小さな小さな角と赤色のまだらがある肌。
「君はどこからきたの?」
「私? 私、どこからきたんだっけ。そうだ、空からふってきたの。こんな風に」
べしょりと何かがふってきた。
「出られない私のお仕事。今回はあなたの番。えっと名前は?」
「え、オレの名前? なんだっけ」
「……名前ないの?」
「あはは、あったんだろうけどさぁ。オレ記憶が次の日まで持っていけないらしくてさ。事故の日のオレなんだ。ずっと」
「……? 何それ」
「これ」
オレの手にはマジックで大きく文字が書かれていた。事故の日のオレへ、手紙を見ろ、と。
「たぶん手紙はこれ」
ポケットから手紙を取り出す。さっき彼女が声をかけてくる前にざっと読んだ。
「そうなんだ」
「さて、どうしたらいいんだろう。オレどうしてここにきたんだろう」
「さぁ。私に聞かれても困る。ただ」
「ただ?」
「ご飯の時間だから、お先に」
「え、まじ? オレもお腹空いてるんだ」
彼女は先ほど落ちてきた何かに手を伸ばした。
「うっわ、まじ? ヤバいな。やっぱ鬼は人の肉をたべるんだ」
「……人の肉? これは食べ物」
「いやいや、どう見ても人でしょ。これ」
「食べ物だもん」
「へー、なんか学校のやつに似てる気がする。あー、誰だっけ」
ぽろぽろと涙を流しながら人を食べる鬼。なぜ、泣いているんだろう。
「食べてみる?」
手の上にきれいな赤色を乗せて彼女はこちらを見た。あぁ、きれいだな。こんなに美しいものを、オレは明日忘れてしまうのか。
「じゃあ、君が食べさせてー」
「やだ」
おどけてみせたが、彼女には逆効果だったようだ。
オレはとなりにしゃがみこんでそれをずっと眺めていた。
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