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ゆめ ― 3
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「お腹すいた」
落ちてこない。食べ物が落ちてこない。
お山を積み直さないといけないのに。
「……ゆめちゃん?」
あいがお山のそばに倒れていた。
動かないなら食べ物なのに。あいは動いてる。
ゆめを見る目が怯えている。ゆめはそんなに怖い顔をしてるのかな。してるかもしれない。大事なお山を崩されたから。
「どうして、寝転んでるの?」
あいが力なく口を動かす。
「お腹がすきすぎて、動けないの」
「そっか、でも残念。いま食べ物はないんだ。それに悪いことした人にはお仕置きしないとなんだよ?」
ゆめは愛の腕に白いとがったのをぎゅっと押し付ける。ぐりぐりぐりぐりと。
「痛い、やめて!」
手で払われる。ゆめはやめてって言ったらもっとひどくされたよ? あいにももっとしてあげなきゃ。
「食べ物。まだかな」
何をするにも、ゆめもお腹が空いてる。はやく次がこないかな。
どちゃっ
落ちてきた。
「あい? 食べ物だよ?」
いい子にしてたら食べ物をくれる。そうだよね。ママ。だから、あいもいい子なら食べ物をあげないと。
「あい?」
あい、動かなくなっちゃった。
「寝ちゃったの? せっかくご飯がきたのに」
あいの横に座って食べ物を食べる。動かないあいをよく見ると髪の毛が何故かチリチリと曲がっていた。
この前の食べ物の頭に残ってた髪の毛みたい。
「食べたら、あいのこともわかる?」
動かなくなったあいの口に食べ物を突っ込んだけれど、食べられないみたいだったので取り返して自分で食べた。
◇
「いってらっしゃい」
女が男に手をふる。
女の後ろには小さな子どもがいた。大きく膨らんだ女の腹は重たそうだ。
「いってくる」
その日は本当に普通の日だった。何でもない、ただただ普通の日を送るはずだった。
男は青になった横断歩道を渡る。渡り終えた。そこに鈍い銀色の大きな何かが突っ込んできた。
◇
「ママは手を繋ぐ?」
あいの手にふれる。動かない。冷たい。
「あいはどう思う?」
動かない彼女にゆめは何度か聞いた。答えは返ってこなかった。
落ちてこない。食べ物が落ちてこない。
お山を積み直さないといけないのに。
「……ゆめちゃん?」
あいがお山のそばに倒れていた。
動かないなら食べ物なのに。あいは動いてる。
ゆめを見る目が怯えている。ゆめはそんなに怖い顔をしてるのかな。してるかもしれない。大事なお山を崩されたから。
「どうして、寝転んでるの?」
あいが力なく口を動かす。
「お腹がすきすぎて、動けないの」
「そっか、でも残念。いま食べ物はないんだ。それに悪いことした人にはお仕置きしないとなんだよ?」
ゆめは愛の腕に白いとがったのをぎゅっと押し付ける。ぐりぐりぐりぐりと。
「痛い、やめて!」
手で払われる。ゆめはやめてって言ったらもっとひどくされたよ? あいにももっとしてあげなきゃ。
「食べ物。まだかな」
何をするにも、ゆめもお腹が空いてる。はやく次がこないかな。
どちゃっ
落ちてきた。
「あい? 食べ物だよ?」
いい子にしてたら食べ物をくれる。そうだよね。ママ。だから、あいもいい子なら食べ物をあげないと。
「あい?」
あい、動かなくなっちゃった。
「寝ちゃったの? せっかくご飯がきたのに」
あいの横に座って食べ物を食べる。動かないあいをよく見ると髪の毛が何故かチリチリと曲がっていた。
この前の食べ物の頭に残ってた髪の毛みたい。
「食べたら、あいのこともわかる?」
動かなくなったあいの口に食べ物を突っ込んだけれど、食べられないみたいだったので取り返して自分で食べた。
◇
「いってらっしゃい」
女が男に手をふる。
女の後ろには小さな子どもがいた。大きく膨らんだ女の腹は重たそうだ。
「いってくる」
その日は本当に普通の日だった。何でもない、ただただ普通の日を送るはずだった。
男は青になった横断歩道を渡る。渡り終えた。そこに鈍い銀色の大きな何かが突っ込んできた。
◇
「ママは手を繋ぐ?」
あいの手にふれる。動かない。冷たい。
「あいはどう思う?」
動かない彼女にゆめは何度か聞いた。答えは返ってこなかった。
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