10 / 22
塁 ― 5
しおりを挟む
似た顔の男の子が僕のいる場所にきた。いや、きたというのだろうか、突然目の前に現れた。
「何でまだいるんだよ! 突き落としたはずなのに。流れていっただろ!!」
怖い。僕はまた固まってしまう。
「お前が出ていくなんて許さない! 許さない!」
彼は僕の積んだ白いお山を崩していく。
「……よくも」
お兄ちゃんと同じ高さになれば、お母さんに会える。それが崩された。僕は怒って、彼と同じ事をする。
「何するんだ!!」
崩して、崩して、ばらばらにする。崩れていく白い塊たちは次々に消えていく。
全部、全部。
わぁぁぁぁん
彼が泣き出した。僕も負けじと泣き出した。
「「お母さぁぁぁぁぁぁん」」
彼が呼んだのは僕とおんなじだった。
◇
まだ積み上げてなかったお兄ちゃんの白いのだけは残っていた。それを持って僕は彼から離れようと歩きだした。
どれだけ歩いても、彼と同じ場所に出てしまう。そして、彼も同じだった。
二人で話し合う。そして、彼が先に積み上げるという約束で一緒に最初から積み上げだした。
お兄ちゃんの話を聞かせたら、彼は少し考えてから僕に提案してきたのだ。
僕のはまだ低かった。お兄ちゃんと変わらない高さだった彼の山を崩したから、しょうがないって思った。
彼の名前は「生田陽人」。お父さんと同じ名字だった。
◇
「この食べ物、お父さんに似てない?」
背中に大きな赤い亀裂のある食べ物が落ちてきた。顔は落ちてきた時に潰れてしまったみたいだ。
「知らない」
もう、僕はお父さんを覚えていない。お母さんしかわからない。
「ぼくは食べたくない」
陽人のお山はもうてっぺんがお兄ちゃんと同じになっていた。
「いいの?」
僕は食べ物を食べた。食べ物の味を感じている時に、陽人が出てきた。この人は陽人のお父さんだったのかな?
最後の一口を口にいれた時に、僕のお母さんが出てきた。僕の目から涙が出てきた。
「お母さん、お母さん、おかあさぁぁぁん!!」
待って、もう一度、お母さん!!
そう思ったのに、もう食べるところは残ってなかった。
◇
ボタリ
食べ物が落ちてきた。
「どっちが食べる?」
僕は陽人に聞く。
「ぼくは行くね――」
彼は少し前に食べ物になってしまったんだった。
二つ並んだ食べ物。僕は先に陽人だった食べ物を食べだした。
正直、――美味しくなかった。
「バイバイ、おにいちゃん……」
「何でまだいるんだよ! 突き落としたはずなのに。流れていっただろ!!」
怖い。僕はまた固まってしまう。
「お前が出ていくなんて許さない! 許さない!」
彼は僕の積んだ白いお山を崩していく。
「……よくも」
お兄ちゃんと同じ高さになれば、お母さんに会える。それが崩された。僕は怒って、彼と同じ事をする。
「何するんだ!!」
崩して、崩して、ばらばらにする。崩れていく白い塊たちは次々に消えていく。
全部、全部。
わぁぁぁぁん
彼が泣き出した。僕も負けじと泣き出した。
「「お母さぁぁぁぁぁぁん」」
彼が呼んだのは僕とおんなじだった。
◇
まだ積み上げてなかったお兄ちゃんの白いのだけは残っていた。それを持って僕は彼から離れようと歩きだした。
どれだけ歩いても、彼と同じ場所に出てしまう。そして、彼も同じだった。
二人で話し合う。そして、彼が先に積み上げるという約束で一緒に最初から積み上げだした。
お兄ちゃんの話を聞かせたら、彼は少し考えてから僕に提案してきたのだ。
僕のはまだ低かった。お兄ちゃんと変わらない高さだった彼の山を崩したから、しょうがないって思った。
彼の名前は「生田陽人」。お父さんと同じ名字だった。
◇
「この食べ物、お父さんに似てない?」
背中に大きな赤い亀裂のある食べ物が落ちてきた。顔は落ちてきた時に潰れてしまったみたいだ。
「知らない」
もう、僕はお父さんを覚えていない。お母さんしかわからない。
「ぼくは食べたくない」
陽人のお山はもうてっぺんがお兄ちゃんと同じになっていた。
「いいの?」
僕は食べ物を食べた。食べ物の味を感じている時に、陽人が出てきた。この人は陽人のお父さんだったのかな?
最後の一口を口にいれた時に、僕のお母さんが出てきた。僕の目から涙が出てきた。
「お母さん、お母さん、おかあさぁぁぁん!!」
待って、もう一度、お母さん!!
そう思ったのに、もう食べるところは残ってなかった。
◇
ボタリ
食べ物が落ちてきた。
「どっちが食べる?」
僕は陽人に聞く。
「ぼくは行くね――」
彼は少し前に食べ物になってしまったんだった。
二つ並んだ食べ物。僕は先に陽人だった食べ物を食べだした。
正直、――美味しくなかった。
「バイバイ、おにいちゃん……」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
パラサイト/ブランク
羊原ユウ
ホラー
舞台は200X年の日本。寄生生物(パラサイト)という未知の存在が日常に潜む宵ヶ沼市。地元の中学校に通う少年、坂咲青はある日同じクラスメイトの黒河朱莉に夜の旧校舎に呼び出されるのだが、そこで彼を待っていたのはパラサイトに変貌した朱莉の姿だった…。
夜葬の村
中岡 始
ホラー
山奥にひっそりと存在する「夜葬の村」。
この村では、死者を普通の墓に埋葬せず、「夜葬」と呼ばれる奇妙な儀式が行われているという。
新聞記者・相沢直人は、その噂の真相を確かめるため、村へ足を踏み入れる。そこでは、村人たちが外部の人間を極端に警戒し、夜ごとに不気味な儀式を執り行っていた。そして村の墓地には、墓石の代わりに木の板が立ち並び、そこには「夜葬された者たち」の名前が刻まれていた。
取材を進めるうちに、村に関わった者たちが次々と奇妙な現象に巻き込まれていく。
山道で道に迷った登山者が見つけたのは、土の中から覗く自分自身の手。
失踪した婚約者を探す女性が辿り着いたのは、彼の名が刻まれた木の墓標。
心霊YouTuberが撮影した白装束の少女は、カメラからも記憶からも完全に消え去る。
村の医者が往診に訪れると、死んだはずの男が「埋めるな」と呟く。
──そしてある日、村は突如として消失する。
再び村を訪れた相沢直人が見たものは、もぬけの殻となった集落と、増え続けた木の板。
そこに刻まれた名前の最後にあったのは、「相沢直人」。
なぜ、自分の名前がここにあるのか?
夜葬された者たちは、どこへ消えたのか?
本当に滅びたのは、村なのか、それとも──
この村では、「死んだ者」は終わらない。
そして、夜葬は今も続いている……。
紺青の鬼
砂詠 飛来
ホラー
専門学校の卒業制作として執筆したものです。
千葉県のとある地域に言い伝えられている民話・伝承を砂詠イズムで書きました。
全3編、連作になっています。
江戸時代から現代までを大まかに書いていて、ちょっとややこしいのですがみなさん頑張ってついて来てください。
幾年も前の作品をほぼそのまま載せるので「なにこれ稚拙な文め」となると思いますが、砂詠もそう思ったのでその感覚は正しいです。
この作品を執筆していたとある秋の夜、原因不明の高熱にうなされ胃液を吐きまくるという現象に苛まれました。しぬかと思いましたが、いまではもう笑い話です。よかったいのちがあって。
其のいち・青鬼の井戸、生き肝の眼薬
──慕い合う気持ちは、歪み、いつしか井戸のなかへ消える。
その村には一軒の豪農と古い井戸があった。目の見えない老婆を救うためには、子どもの生き肝を喰わねばならぬという。怪しげな僧と女の童の思惑とは‥‥。
其のに・青鬼の面、鬼堂の大杉
──許されぬ欲望に身を任せた者は、孤独に苛まれ後悔さえ無駄になる。
その年頃の娘と青年は、決して結ばれてはならない。しかし、互いの懸想に気がついたときには、すでにすべてが遅かった。娘に宿った新たな命によって狂わされた運命に‥‥。
其のさん・青鬼の眼、耳切りの坂
──抗うことのできぬ輪廻は、ただ空回りしただけにすぎなかった。
その眼科医のもとをふいに訪れた患者が、思わぬ過去を携えてきた。自身の出生の秘密が解き明かされる。残酷さを刻み続けてきただけの時が、いまここでつながろうとは‥‥。
究極?のデスゲーム
Algo_Lighter
ホラー
気がつくと、見知らぬ島に集められた参加者たち。
黒いフードを被った謎のゲームマスターが告げる—— 「これは究極のデスゲームだ」。
生き残るのはただ一人。他の者に待つのは"ゲームオーバー"のみ。
次々に始まる試練、迫りくる恐怖、そして消えていく敗者たち。
しかし、ゲームが進むにつれて、どこか違和感を覚え始める主人公・ハル。
このデスゲーム、本当に"命がけ"なのか……?
絶望と笑いが交錯する、予測不能のサバイバルゲームが今、幕を開ける!
ゾバズバダドガ〜歯充烏村の呪い〜
ディメンションキャット
ホラー
主人公、加賀 拓斗とその友人である佐々木 湊が訪れたのは外の社会とは隔絶された集落「歯充烏村」だった。
二人は村長から村で過ごす上で、絶対に守らなければならない奇妙なルールを伝えられる。
「人の名前は絶対に濁点を付けて呼ばなければならない」
支離滅裂な言葉を吐き続ける老婆や鶏を使ってアートをする青年、呪いの神『ゾバズバダドガ』。異常が支配するこの村で、次々に起こる矛盾だらけの事象。狂気に満ちた村が徐々に二人を蝕み始めるが、それに気付かない二人。
二人は無事に「歯充烏村」から抜け出せるのだろうか?
百物語 厄災
嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。
小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
羅刹の花嫁 〜帝都、鬼神討伐異聞〜
長月京子
ホラー
自分と目をあわせると、何か良くないことがおきる。
幼い頃からの不吉な体験で、葛葉はそんな不安を抱えていた。
時は明治。
異形が跋扈する帝都。
洋館では晴れやかな婚約披露が開かれていた。
侯爵令嬢と婚約するはずの可畏(かい)は、招待客である葛葉を見つけると、なぜかこう宣言する。
「私の花嫁は彼女だ」と。
幼い頃からの不吉な体験ともつながる、葛葉のもつ特別な異能。
その力を欲して、可畏(かい)は葛葉を仮初の花嫁として事件に同行させる。
文明開化により、華やかに変化した帝都。
頻出する異形がもたらす、怪事件のたどり着く先には?
人と妖、異能と異形、怪異と思惑が錯綜する和風ファンタジー。
(※絵を描くのも好きなので表紙も自作しております)
第7回ホラー・ミステリー小説大賞で奨励賞
第8回キャラ文芸大賞で奨励賞をいただきました。
ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる