花月夜れん

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塁 ― 5

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 似た顔の男の子が僕のいる場所にきた。いや、きたというのだろうか、突然目の前に現れた。

「何でまだいるんだよ! 突き落としたはずなのに。流れていっただろ!!」

 怖い。僕はまた固まってしまう。

「お前が出ていくなんて許さない! 許さない!」

 彼は僕の積んだ白いお山を崩していく。

「……よくも」

 お兄ちゃんと同じ高さになれば、お母さんに会える。それが崩された。僕は怒って、彼と同じ事をする。

「何するんだ!!」

 崩して、崩して、ばらばらにする。崩れていく白い塊たちは次々に消えていく。
 全部、全部。

 わぁぁぁぁん

 彼が泣き出した。僕も負けじと泣き出した。

「「お母さぁぁぁぁぁぁん」」

 彼が呼んだのは僕とおんなじだった。

 ◇

 まだ積み上げてなかったお兄ちゃんの白いのだけは残っていた。それを持って僕は彼から離れようと歩きだした。
 どれだけ歩いても、彼と同じ場所に出てしまう。そして、彼も同じだった。
 二人で話し合う。そして、彼が先に積み上げるという約束で一緒に最初から積み上げだした。
 お兄ちゃんの話を聞かせたら、彼は少し考えてから僕に提案してきたのだ。
 僕のはまだ低かった。お兄ちゃんと変わらない高さだった彼の山を崩したから、しょうがないって思った。
 彼の名前は「生田陽人」。お父さんと同じ名字だった。

 ◇

「この食べ物、お父さんに似てない?」

 背中に大きな赤い亀裂のある食べ物が落ちてきた。顔は落ちてきた時に潰れてしまったみたいだ。

「知らない」

 もう、僕はお父さんを覚えていない。お母さんしかわからない。

「ぼくは食べたくない」

 陽人のお山はもうてっぺんがお兄ちゃんと同じになっていた。

「いいの?」

 僕は食べ物を食べた。食べ物の味を感じている時に、陽人が出てきた。この人は陽人のお父さんだったのかな?
 最後の一口を口にいれた時に、僕のお母さんが出てきた。僕の目から涙が出てきた。

「お母さん、お母さん、おかあさぁぁぁん!!」

 待って、もう一度、お母さん!!
 そう思ったのに、もう食べるところは残ってなかった。

 ◇

 ボタリ

 食べ物が落ちてきた。

「どっちが食べる?」

 僕は陽人に聞く。

「ぼくは行くね――」

 彼は少し前に食べ物になってしまったんだった。
 二つ並んだ食べ物。僕は先に陽人だった食べ物を食べだした。
 正直、――美味しくなかった。

「バイバイ、おにいちゃん……」
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