花月夜れん

文字の大きさ
上 下
8 / 22

塁 ― 3

しおりを挟む
「賽の河原?」
「じゃないかなってオレは思ってる」

 ここの事を色々と教えてくれる人の歯を角みたいにつけるお兄ちゃん。名前は教えてくれなかった。
 どうせ、死んでるんだ。もう名前に意味なんてないだろう。彼はそう言った。

 べちゃり

 次の食べ物が落ちてきた。

「お兄ちゃんはもう食べないの?」
「うん、いいよ。気にしないで食べな」

 ここでは食べ物はこれしかない。だから、僕は食べる。死んだら、お母さんに会えない。
 彼が教えてくれた、賽の河原。なら、ここはまだ境目なんじゃないか。僕は死んでなんかない。生きなきゃ。

 ◇

「悪かった!! 俺が悪かったから! 離婚するなんて言わないでくれよ」
「どの口が言うの!? これで三度目よ! もう私はあなたを信じない!」

 男は女に叩きつけられた紙を呆然と眺めていた。
 ふらふらと歩きだし、ワードローブからネクタイを取り出す。
 ガクッと落ちる感覚がして息が出来なくなる。

 ◇

 女の人は何を怒ってたんだろう。男の人はこんなに悲しいのに何で何度も繰り返したんだろう。
 首が斜めになった食べ物。わからないとでも言いたそうにずっと首を傾げていた。

「お兄ちゃん、これをお山にすればいいんだよね」

 お兄ちゃんは無言でこくりと首を動かす。元気がない。食べないと、こんな風になるのはよく知ってる。だって、僕も何回も何回もお腹が空いたから。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

パラサイト/ブランク

羊原ユウ
ホラー
舞台は200X年の日本。寄生生物(パラサイト)という未知の存在が日常に潜む宵ヶ沼市。地元の中学校に通う少年、坂咲青はある日同じクラスメイトの黒河朱莉に夜の旧校舎に呼び出されるのだが、そこで彼を待っていたのはパラサイトに変貌した朱莉の姿だった…。

夜葬の村

中岡 始
ホラー
山奥にひっそりと存在する「夜葬の村」。 この村では、死者を普通の墓に埋葬せず、「夜葬」と呼ばれる奇妙な儀式が行われているという。 新聞記者・相沢直人は、その噂の真相を確かめるため、村へ足を踏み入れる。そこでは、村人たちが外部の人間を極端に警戒し、夜ごとに不気味な儀式を執り行っていた。そして村の墓地には、墓石の代わりに木の板が立ち並び、そこには「夜葬された者たち」の名前が刻まれていた。 取材を進めるうちに、村に関わった者たちが次々と奇妙な現象に巻き込まれていく。 山道で道に迷った登山者が見つけたのは、土の中から覗く自分自身の手。 失踪した婚約者を探す女性が辿り着いたのは、彼の名が刻まれた木の墓標。 心霊YouTuberが撮影した白装束の少女は、カメラからも記憶からも完全に消え去る。 村の医者が往診に訪れると、死んだはずの男が「埋めるな」と呟く。 ──そしてある日、村は突如として消失する。 再び村を訪れた相沢直人が見たものは、もぬけの殻となった集落と、増え続けた木の板。 そこに刻まれた名前の最後にあったのは、「相沢直人」。 なぜ、自分の名前がここにあるのか? 夜葬された者たちは、どこへ消えたのか? 本当に滅びたのは、村なのか、それとも── この村では、「死んだ者」は終わらない。 そして、夜葬は今も続いている……。

究極?のデスゲーム

Algo_Lighter
ホラー
気がつくと、見知らぬ島に集められた参加者たち。 黒いフードを被った謎のゲームマスターが告げる—— 「これは究極のデスゲームだ」。 生き残るのはただ一人。他の者に待つのは"ゲームオーバー"のみ。 次々に始まる試練、迫りくる恐怖、そして消えていく敗者たち。 しかし、ゲームが進むにつれて、どこか違和感を覚え始める主人公・ハル。 このデスゲーム、本当に"命がけ"なのか……? 絶望と笑いが交錯する、予測不能のサバイバルゲームが今、幕を開ける!

ゾバズバダドガ〜歯充烏村の呪い〜

ディメンションキャット
ホラー
主人公、加賀 拓斗とその友人である佐々木 湊が訪れたのは外の社会とは隔絶された集落「歯充烏村」だった。 二人は村長から村で過ごす上で、絶対に守らなければならない奇妙なルールを伝えられる。 「人の名前は絶対に濁点を付けて呼ばなければならない」 支離滅裂な言葉を吐き続ける老婆や鶏を使ってアートをする青年、呪いの神『ゾバズバダドガ』。異常が支配するこの村で、次々に起こる矛盾だらけの事象。狂気に満ちた村が徐々に二人を蝕み始めるが、それに気付かない二人。 二人は無事に「歯充烏村」から抜け出せるのだろうか?

凶兆

黒駒臣
ホラー
それが始まりだった。

タクシー運転手の夜話

華岡光
ホラー
世の中の全てを知るタクシー運転手。そのタクシー運転手が知ったこの世のものではない話しとは・・

百物語 厄災

嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。 小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。

神隠しの子

ミドリ
ホラー
【奨励賞受賞作品です】 双子の弟、宗二が失踪して七年。兄の山根 太一は、宗二の失踪宣告を機に、これまで忘れていた自分の記憶を少しずつ思い出していく。 これまで妹的ポジションだと思っていた花への恋心を思い出し、二人は一気に接近していく。無事結ばれた二人の周りにちらつく子供の影。それは子供の頃に失踪した彼の姿なのか、それとも幻なのか。 自身の精神面に不安を覚えながらも育まれる愛に、再び魔の手が忍び寄る。 ※なろう・カクヨムでも連載中です

処理中です...