花月夜れん

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落ちてきた食べ物 ― 4

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 限界だった。だけど、僕と違ってまだ動けるゆめがぺちぺちと僕をたたく。無理だよ。起きたくない。あぁ、そういえばおにいちゃんもそうだった。
 食べ終わった後に残る食べれない固いのを積み上げた白いお山。おにいちゃんの山と同じ高さの僕のお山。隣にはゆめの小さな小さなお山が並ぶ。
 そうだった。もう、僕の番なんだ。

「ゆめ」
「ナに?」

 真っ白な山から赤いゆめの顔を見る。僕みたいな、でも少し違う形になってきたゆめ。

「自分のお山。壊さないようにね。そしたら、……また会えるから……」
「おニちゃ……?」
「僕……もうすぐゆめの食べ物になるから。僕はもう一緒に食べられないから、ゆめ、いっぱい食べな」
「わかっタ。ねムいの? 残してオク?」
「残さなくていいよ。全部食べて、ゆめのお山に登らせておいて。僕のお山にいるおにいちゃんみたいに」
「お二チャン……の、……オニいちゃん?」
「うん」

 僕がどこかに引っ張られていく。バイバイ、またね。一人で置いていくのは心配だな。だけど、僕だって出来たんだから、きっとゆめも出来るよ。

「オ……ニちゃん?」

 動かない初めての落ちてくる食べ物じゃないそれにゆめは戸惑うだろう。だけど、続いていくんだろう。こうやって交代しながら、ずっとずっと、自分の白いお山が積み上がるまで。

 ◇

 女の腹に耳をつけてじっとしていた男の子が顔をあげてにぃと笑う。

「赤ちゃん、動いた!」

 女も気がつかないほどゆっくりと動いたそれを小さな男の子はしっかりと感じとる。

「あら、ほんと。よくわかったわね」
「うん、ぼく知ってるよ。だって、また会おうねって約束したんだ。赤い小さな女の子と」

 とんがった犬歯を見せてから男の子はまた女にぴたとくっつく。

「あっくんは妹がいいの?」
「妹じゃないよ。ゆめだよ」

 女は無邪気に笑う男の子の頭をゆっくりと撫でてあげた。
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