4 / 22
落ちてきた食べ物 ― 4
しおりを挟む
限界だった。だけど、僕と違ってまだ動けるゆめがぺちぺちと僕をたたく。無理だよ。起きたくない。あぁ、そういえばおにいちゃんもそうだった。
食べ終わった後に残る食べれない固いのを積み上げた白いお山。おにいちゃんの山と同じ高さの僕のお山。隣にはゆめの小さな小さなお山が並ぶ。
そうだった。もう、僕の番なんだ。
「ゆめ」
「ナに?」
真っ白な山から赤いゆめの顔を見る。僕みたいな、でも少し違う形になってきたゆめ。
「自分のお山。壊さないようにね。そしたら、……また会えるから……」
「おニちゃ……?」
「僕……もうすぐゆめの食べ物になるから。僕はもう一緒に食べられないから、ゆめ、いっぱい食べな」
「わかっタ。ねムいの? 残してオク?」
「残さなくていいよ。全部食べて、ゆめのお山に登らせておいて。僕のお山にいるおにいちゃんみたいに」
「お二チャン……の、……オニいちゃん?」
「うん」
僕がどこかに引っ張られていく。バイバイ、またね。一人で置いていくのは心配だな。だけど、僕だって出来たんだから、きっとゆめも出来るよ。
「オ……ニちゃん?」
動かない初めての落ちてくる食べ物じゃないそれにゆめは戸惑うだろう。だけど、続いていくんだろう。こうやって交代しながら、ずっとずっと、自分の白いお山が積み上がるまで。
◇
女の腹に耳をつけてじっとしていた男の子が顔をあげてにぃと笑う。
「赤ちゃん、動いた!」
女も気がつかないほどゆっくりと動いたそれを小さな男の子はしっかりと感じとる。
「あら、ほんと。よくわかったわね」
「うん、ぼく知ってるよ。だって、また会おうねって約束したんだ。赤い小さな女の子と」
とんがった犬歯を見せてから男の子はまた女にぴたとくっつく。
「あっくんは妹がいいの?」
「妹じゃないよ。ゆめだよ」
女は無邪気に笑う男の子の頭をゆっくりと撫でてあげた。
食べ終わった後に残る食べれない固いのを積み上げた白いお山。おにいちゃんの山と同じ高さの僕のお山。隣にはゆめの小さな小さなお山が並ぶ。
そうだった。もう、僕の番なんだ。
「ゆめ」
「ナに?」
真っ白な山から赤いゆめの顔を見る。僕みたいな、でも少し違う形になってきたゆめ。
「自分のお山。壊さないようにね。そしたら、……また会えるから……」
「おニちゃ……?」
「僕……もうすぐゆめの食べ物になるから。僕はもう一緒に食べられないから、ゆめ、いっぱい食べな」
「わかっタ。ねムいの? 残してオク?」
「残さなくていいよ。全部食べて、ゆめのお山に登らせておいて。僕のお山にいるおにいちゃんみたいに」
「お二チャン……の、……オニいちゃん?」
「うん」
僕がどこかに引っ張られていく。バイバイ、またね。一人で置いていくのは心配だな。だけど、僕だって出来たんだから、きっとゆめも出来るよ。
「オ……ニちゃん?」
動かない初めての落ちてくる食べ物じゃないそれにゆめは戸惑うだろう。だけど、続いていくんだろう。こうやって交代しながら、ずっとずっと、自分の白いお山が積み上がるまで。
◇
女の腹に耳をつけてじっとしていた男の子が顔をあげてにぃと笑う。
「赤ちゃん、動いた!」
女も気がつかないほどゆっくりと動いたそれを小さな男の子はしっかりと感じとる。
「あら、ほんと。よくわかったわね」
「うん、ぼく知ってるよ。だって、また会おうねって約束したんだ。赤い小さな女の子と」
とんがった犬歯を見せてから男の子はまた女にぴたとくっつく。
「あっくんは妹がいいの?」
「妹じゃないよ。ゆめだよ」
女は無邪気に笑う男の子の頭をゆっくりと撫でてあげた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
パラサイト/ブランク
羊原ユウ
ホラー
舞台は200X年の日本。寄生生物(パラサイト)という未知の存在が日常に潜む宵ヶ沼市。地元の中学校に通う少年、坂咲青はある日同じクラスメイトの黒河朱莉に夜の旧校舎に呼び出されるのだが、そこで彼を待っていたのはパラサイトに変貌した朱莉の姿だった…。
夜葬の村
中岡 始
ホラー
山奥にひっそりと存在する「夜葬の村」。
この村では、死者を普通の墓に埋葬せず、「夜葬」と呼ばれる奇妙な儀式が行われているという。
新聞記者・相沢直人は、その噂の真相を確かめるため、村へ足を踏み入れる。そこでは、村人たちが外部の人間を極端に警戒し、夜ごとに不気味な儀式を執り行っていた。そして村の墓地には、墓石の代わりに木の板が立ち並び、そこには「夜葬された者たち」の名前が刻まれていた。
取材を進めるうちに、村に関わった者たちが次々と奇妙な現象に巻き込まれていく。
山道で道に迷った登山者が見つけたのは、土の中から覗く自分自身の手。
失踪した婚約者を探す女性が辿り着いたのは、彼の名が刻まれた木の墓標。
心霊YouTuberが撮影した白装束の少女は、カメラからも記憶からも完全に消え去る。
村の医者が往診に訪れると、死んだはずの男が「埋めるな」と呟く。
──そしてある日、村は突如として消失する。
再び村を訪れた相沢直人が見たものは、もぬけの殻となった集落と、増え続けた木の板。
そこに刻まれた名前の最後にあったのは、「相沢直人」。
なぜ、自分の名前がここにあるのか?
夜葬された者たちは、どこへ消えたのか?
本当に滅びたのは、村なのか、それとも──
この村では、「死んだ者」は終わらない。
そして、夜葬は今も続いている……。
究極?のデスゲーム
Algo_Lighter
ホラー
気がつくと、見知らぬ島に集められた参加者たち。
黒いフードを被った謎のゲームマスターが告げる—— 「これは究極のデスゲームだ」。
生き残るのはただ一人。他の者に待つのは"ゲームオーバー"のみ。
次々に始まる試練、迫りくる恐怖、そして消えていく敗者たち。
しかし、ゲームが進むにつれて、どこか違和感を覚え始める主人公・ハル。
このデスゲーム、本当に"命がけ"なのか……?
絶望と笑いが交錯する、予測不能のサバイバルゲームが今、幕を開ける!
ゾバズバダドガ〜歯充烏村の呪い〜
ディメンションキャット
ホラー
主人公、加賀 拓斗とその友人である佐々木 湊が訪れたのは外の社会とは隔絶された集落「歯充烏村」だった。
二人は村長から村で過ごす上で、絶対に守らなければならない奇妙なルールを伝えられる。
「人の名前は絶対に濁点を付けて呼ばなければならない」
支離滅裂な言葉を吐き続ける老婆や鶏を使ってアートをする青年、呪いの神『ゾバズバダドガ』。異常が支配するこの村で、次々に起こる矛盾だらけの事象。狂気に満ちた村が徐々に二人を蝕み始めるが、それに気付かない二人。
二人は無事に「歯充烏村」から抜け出せるのだろうか?
百物語 厄災
嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。
小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
羅刹の花嫁 〜帝都、鬼神討伐異聞〜
長月京子
ホラー
自分と目をあわせると、何か良くないことがおきる。
幼い頃からの不吉な体験で、葛葉はそんな不安を抱えていた。
時は明治。
異形が跋扈する帝都。
洋館では晴れやかな婚約披露が開かれていた。
侯爵令嬢と婚約するはずの可畏(かい)は、招待客である葛葉を見つけると、なぜかこう宣言する。
「私の花嫁は彼女だ」と。
幼い頃からの不吉な体験ともつながる、葛葉のもつ特別な異能。
その力を欲して、可畏(かい)は葛葉を仮初の花嫁として事件に同行させる。
文明開化により、華やかに変化した帝都。
頻出する異形がもたらす、怪事件のたどり着く先には?
人と妖、異能と異形、怪異と思惑が錯綜する和風ファンタジー。
(※絵を描くのも好きなので表紙も自作しております)
第7回ホラー・ミステリー小説大賞で奨励賞
第8回キャラ文芸大賞で奨励賞をいただきました。
ありがとうございました!
神送りの夜
千石杏香
ホラー
由緒正しい神社のある港町。そこでは、海から来た神が祀られていた。神は、春分の夜に呼び寄せられ、冬至の夜に送り返された。しかしこの二つの夜、町民は決して外へ出なかった。もし外へ出たら、祟りがあるからだ。
父が亡くなったため、彼女はその町へ帰ってきた。幼い頃に、三年間だけ住んでいた町だった。記憶の中では、町には古くて大きな神社があった。しかし誰に訊いても、そんな神社などないという。
町で暮らしてゆくうち、彼女は不可解な事件に巻き込まれてゆく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる