痩せる決意をした聖女と食べてやると宣言する竜の王子〜婚約破棄されちゃったけど気になる人に愛されたいからダイエット頑張ります〜

花月夜れん

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第二章 赤の瞳と金の瞳

第131話 いつか誰かの記憶(アメリア?視点)

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 ◆
「あなたは妹」
「妹」
「そう、私がお姉さん」
「何それアメリア」
「だって、アメリア。私の方がほんの少しだけど背が高いもの」

 いつかそう言って笑いあった。

「名前も一緒だとわかりにくいでしょ。私はアメ、あなたはリア。わかった?」
「リア……?」
「二人ではんぶんこね」

 私と同じ顔、同じ名前のアメリアが笑う。
 ずっと続けば良かったのに。二人で仲良く。ずっとずっと。
 だけど、私が先に限界がきたみたい。もうダメかなって自分でもわかった。なのに、あなたは――。

「二人をお願いね」
「アメ――」

 私がなるはずだった。代わりにアメが瘴気を全部持って身を投げた。戸惑わずさっさといなくなっておけば良かったのに、出来なくて。
 アメには大事な人が、子どもがいたのに。

「――あ、おかえり。アメリア」

 同じ顔、同じ声。だから気が付かない。この人は私がリアだって気がついてない。大好きな人ではないと気がついて欲しかった。

「行こっか。赤ちゃん。えっとメア、メル」

 小さな二人の手を引いて飛び出した。私が頼まれたのは二人。例え気が付かなくても、――あの人はアメのものだから。

「行こう。ブレイド。次の浄化しに行かなきゃ」
「リア、いいのか?」
「うん。アメが眠ってる場所にこの子達連れて行ってあげたい」
「わかった」

 私はあの場所から瘴気の浄化に走り回った。

「母様、見て赤い実がなったよ!」
「母様、これ食べてみて」

 アメが好きだった赤い実を二人は育てていた。
 二人の瞳と同じ赤い実はつやつやで美味しそうな匂いがする。

「ありがとう。ここをこの実でいっぱいにしたいね。すごく美味しいもの」
「うん!」
「そうだね! スピアーお水ちょうだいー」

 いっぱいいっぱい育てよう。そうすればきっとこの実が大好きなアメは目を覚ます。

『わぁ、美味しそう!』

 そう言って。
 だよね、…………アメ。

 ◆

「ごめんね、ブレイド。本当のアメリアじゃなくて」

 食べられるのはアメのはずだった。私がその役をとっちゃった。ブレイド、本当はアメが好きだったんだよね。
 私はスピアー達と約束したもの。ブレイドはアメと約束してたから。私じゃなくて……。
 瘴気を吐き出すアメを浄化しきれなかった。私もアメと同じになるはずだった。
 今日一緒だったのはブレイドだったから。
 なのに、優しいブレイドはアメとの約束だった食べて浄化をしてくれるみたい。

「ありがとう。大好き」
「アメリア――――」

 ごめんね。私で。アメが好きだって知ってるのに好きになってごめんね。

 大好きな二人に私は救われた。今度は私が大好きな人達を守りたい。今度って、あるのかな――――――。

 ◆
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