痩せる決意をした聖女と食べてやると宣言する竜の王子〜婚約破棄されちゃったけど気になる人に愛されたいからダイエット頑張ります〜

花月夜れん

文字の大きさ
上 下
127 / 135
第二章 赤の瞳と金の瞳

第127話 白い竜を追いかける

しおりを挟む
 追いかけなきゃ!
 もし、彼女が瘴気をばら撒く者だったとしても、これ以上瘴気を出さないでとお願いすれば聞いてくれるかもしれない。
 だって、確かにリアは言ってたもの。
 囲む、喜ぶ? と。私達が助かると思って彼女が瘴気を出してるのかもしれない。なら、私達がとめないと際限なく……。
 心は急いでるんだけれど、お腹が空きすぎて今にも体は倒れてしまいそうだ。

「ブレイド、スピアー、追いかけよう。リアをとめなきゃ。国中が瘴気の中に沈んでしまうかもしれない」

 なんとか二人に動いてもらわないと、今の私じゃあ魔法を使ったってリアに追いつくことは出来ない。きっと途中で気を失って倒れてしまう。

「確かにやな」

 スピアーは翼を広げなおす。ブレイドはまだとまったままだ。

「ブレイド、はやく」
「でも、エマ……浄化して、その……」

 ぐぅぅとお腹がなる。このタイミングで鳴るのは本当にどうかと思うの。
 私は乙女の必需品をポケットから取り出す。
 ブレイドにもらった日持ち抜群のいつでもどこでも干し肉ジャーキーだ。
 これに思いっきり噛り付きながら、ゴーサインを出す。

ふぉれふぇこれでふぁいひょうぶ大丈夫

 ガジガジ噛じればほんの少しは空腹が紛れるはずだ。
 思ったとおり、食べ物を摂取することで倒れることは回避できそうだ。
 ありがとう、ブレイド。ありがとう、干し肉ジャーキー

「行くよ?」
「んぐ」

 食べ終わるまで話せないのが難点だけどそこは我慢してもらおう。というか、ゆっくり話してる時間もないし!

「いた!」

 真っ白な竜は、日の光を反射してキラキラ輝いている。見つけるのは簡単だった。
 そして、彼女が追いかけたのは元婚約者ラヴェルだった。
 片方の腕と片方の足だけが魔物のそれに変わり、それ以外は人間のままの。

「どうして、あなたは死なないの? どうしてあなたからダガーの……、それとリアの匂いがするの?」

 竜から発せられるリアの声。

「は、ははは、白い竜か。お前も我らの国に忠誠を誓わないか? 黒い竜はすべてを国に捧げると言ってこれを渡してきたぞ」
「…………」

 何かを手に持ち振るラヴェル。それを見詰めるリア。二人のやり取り。途中みたいだけど、間に入らせてもらうね!
 ブレイドとスピアー、私の三人は白い竜と元婚約者の間に降り立った。

「リアっ!!」

 光の像では痩せていたけれど、実際はこの前見た丸いラヴェルだった。彼の前に立ち、ごくんと干し肉を飲み込む。ふんっと鼻息を一つして気合いをいれた。

「とまって!! これ以上瘴気を拡げないでっ!!」

 手を広げ、リアにお願いする。だけど、彼女の視線がラヴェルから変わる事はなかった。
 まずは彼をどこかにやらないと駄目なのかな。彼の片足は大きくなって、バランスがとれないのかもしれない。走りにくいなら……。私は拳に力をこめる。
 ラヴェルに直接触りたくはない。ないのだけど、つかつかと歩いてラヴェルのもとに向かった。

「エマ! 私のもとに帰ってくる決心がついたのか!?」

 ラヴェルが腕を開き、迎え入れる素振りをする。
 …………。
 どんどん近付いていって、私は……彼の手前で……、足にも力をこめた。

「そんな訳ないでしょ!!!! 聖女の一撃ホーリーストライクっっっ!!!!」

 いれる必要はないけど、思いっきり頬に一撃をいれた。
 ルニアと一緒に鍛えてるから、少しはパンチ力が上がってるかな。だけど、ブレイドもスピアーも私がパンチした瞬間に合わせて魔法使ったよね……。だって、私がパンチしたくらいであそこまで吹っ飛ぶわけがない!!
 そう、ラヴェルはきれいに弧を描き落下した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】結婚初夜。離縁されたらおしまいなのに、夫が来る前に寝落ちしてしまいました

Kei.S
恋愛
結婚で王宮から逃げ出すことに成功した第五王女のシーラ。もし離縁されたら腹違いのお姉様たちに虐げられる生活に逆戻り……な状況で、夫が来る前にうっかり寝落ちしてしまった結婚初夜のお話

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

処理中です...