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第二章 赤の瞳と金の瞳
第127話 白い竜を追いかける
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追いかけなきゃ!
もし、彼女が瘴気をばら撒く者だったとしても、これ以上瘴気を出さないでとお願いすれば聞いてくれるかもしれない。
だって、確かにリアは言ってたもの。
囲む、喜ぶ? と。私達が助かると思って彼女が瘴気を出してるのかもしれない。なら、私達がとめないと際限なく……。
心は急いでるんだけれど、お腹が空きすぎて今にも体は倒れてしまいそうだ。
「ブレイド、スピアー、追いかけよう。リアをとめなきゃ。国中が瘴気の中に沈んでしまうかもしれない」
なんとか二人に動いてもらわないと、今の私じゃあ魔法を使ったってリアに追いつくことは出来ない。きっと途中で気を失って倒れてしまう。
「確かにやな」
スピアーは翼を広げなおす。ブレイドはまだとまったままだ。
「ブレイド、はやく」
「でも、エマ……浄化して、その……」
ぐぅぅとお腹がなる。このタイミングで鳴るのは本当にどうかと思うの。
私は乙女の必需品をポケットから取り出す。
ブレイドにもらった日持ち抜群のいつでもどこでも干し肉だ。
これに思いっきり噛り付きながら、ゴーサインを出す。
「ふぉれふぇふぁいひょうぶ」
ガジガジ噛じればほんの少しは空腹が紛れるはずだ。
思ったとおり、食べ物を摂取することで倒れることは回避できそうだ。
ありがとう、ブレイド。ありがとう、干し肉!
「行くよ?」
「んぐ」
食べ終わるまで話せないのが難点だけどそこは我慢してもらおう。というか、ゆっくり話してる時間もないし!
「いた!」
真っ白な竜は、日の光を反射してキラキラ輝いている。見つけるのは簡単だった。
そして、彼女が追いかけたのは元婚約者だった。
片方の腕と片方の足だけが魔物のそれに変わり、それ以外は人間のままの。
「どうして、あなたは死なないの? どうしてあなたからダガーの……、それとリアの匂いがするの?」
竜から発せられるリアの声。
「は、ははは、白い竜か。お前も我らの国に忠誠を誓わないか? 黒い竜はすべてを国に捧げると言ってこれを渡してきたぞ」
「…………」
何かを手に持ち振るラヴェル。それを見詰めるリア。二人のやり取り。途中みたいだけど、間に入らせてもらうね!
ブレイドとスピアー、私の三人は白い竜と元婚約者の間に降り立った。
「リアっ!!」
光の像では痩せていたけれど、実際はこの前見た丸いラヴェルだった。彼の前に立ち、ごくんと干し肉を飲み込む。ふんっと鼻息を一つして気合いをいれた。
「とまって!! これ以上瘴気を拡げないでっ!!」
手を広げ、リアにお願いする。だけど、彼女の視線がラヴェルから変わる事はなかった。
まずは彼をどこかにやらないと駄目なのかな。彼の片足は大きくなって、バランスがとれないのかもしれない。走りにくいなら……。私は拳に力をこめる。
ラヴェルに直接触りたくはない。ないのだけど、つかつかと歩いてラヴェルのもとに向かった。
「エマ! 私のもとに帰ってくる決心がついたのか!?」
ラヴェルが腕を開き、迎え入れる素振りをする。
…………。
どんどん近付いていって、私は……彼の手前で……、足にも力をこめた。
「そんな訳ないでしょ!!!! 聖女の一撃っっっ!!!!」
いれる必要はないけど、思いっきり頬に一撃をいれた。
ルニアと一緒に鍛えてるから、少しはパンチ力が上がってるかな。だけど、ブレイドもスピアーも私がパンチした瞬間に合わせて魔法使ったよね……。だって、私がパンチしたくらいであそこまで吹っ飛ぶわけがない!!
そう、ラヴェルはきれいに弧を描き落下した。
もし、彼女が瘴気をばら撒く者だったとしても、これ以上瘴気を出さないでとお願いすれば聞いてくれるかもしれない。
だって、確かにリアは言ってたもの。
囲む、喜ぶ? と。私達が助かると思って彼女が瘴気を出してるのかもしれない。なら、私達がとめないと際限なく……。
心は急いでるんだけれど、お腹が空きすぎて今にも体は倒れてしまいそうだ。
「ブレイド、スピアー、追いかけよう。リアをとめなきゃ。国中が瘴気の中に沈んでしまうかもしれない」
なんとか二人に動いてもらわないと、今の私じゃあ魔法を使ったってリアに追いつくことは出来ない。きっと途中で気を失って倒れてしまう。
「確かにやな」
スピアーは翼を広げなおす。ブレイドはまだとまったままだ。
「ブレイド、はやく」
「でも、エマ……浄化して、その……」
ぐぅぅとお腹がなる。このタイミングで鳴るのは本当にどうかと思うの。
私は乙女の必需品をポケットから取り出す。
ブレイドにもらった日持ち抜群のいつでもどこでも干し肉だ。
これに思いっきり噛り付きながら、ゴーサインを出す。
「ふぉれふぇふぁいひょうぶ」
ガジガジ噛じればほんの少しは空腹が紛れるはずだ。
思ったとおり、食べ物を摂取することで倒れることは回避できそうだ。
ありがとう、ブレイド。ありがとう、干し肉!
「行くよ?」
「んぐ」
食べ終わるまで話せないのが難点だけどそこは我慢してもらおう。というか、ゆっくり話してる時間もないし!
「いた!」
真っ白な竜は、日の光を反射してキラキラ輝いている。見つけるのは簡単だった。
そして、彼女が追いかけたのは元婚約者だった。
片方の腕と片方の足だけが魔物のそれに変わり、それ以外は人間のままの。
「どうして、あなたは死なないの? どうしてあなたからダガーの……、それとリアの匂いがするの?」
竜から発せられるリアの声。
「は、ははは、白い竜か。お前も我らの国に忠誠を誓わないか? 黒い竜はすべてを国に捧げると言ってこれを渡してきたぞ」
「…………」
何かを手に持ち振るラヴェル。それを見詰めるリア。二人のやり取り。途中みたいだけど、間に入らせてもらうね!
ブレイドとスピアー、私の三人は白い竜と元婚約者の間に降り立った。
「リアっ!!」
光の像では痩せていたけれど、実際はこの前見た丸いラヴェルだった。彼の前に立ち、ごくんと干し肉を飲み込む。ふんっと鼻息を一つして気合いをいれた。
「とまって!! これ以上瘴気を拡げないでっ!!」
手を広げ、リアにお願いする。だけど、彼女の視線がラヴェルから変わる事はなかった。
まずは彼をどこかにやらないと駄目なのかな。彼の片足は大きくなって、バランスがとれないのかもしれない。走りにくいなら……。私は拳に力をこめる。
ラヴェルに直接触りたくはない。ないのだけど、つかつかと歩いてラヴェルのもとに向かった。
「エマ! 私のもとに帰ってくる決心がついたのか!?」
ラヴェルが腕を開き、迎え入れる素振りをする。
…………。
どんどん近付いていって、私は……彼の手前で……、足にも力をこめた。
「そんな訳ないでしょ!!!! 聖女の一撃っっっ!!!!」
いれる必要はないけど、思いっきり頬に一撃をいれた。
ルニアと一緒に鍛えてるから、少しはパンチ力が上がってるかな。だけど、ブレイドもスピアーも私がパンチした瞬間に合わせて魔法使ったよね……。だって、私がパンチしたくらいであそこまで吹っ飛ぶわけがない!!
そう、ラヴェルはきれいに弧を描き落下した。
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