124 / 135
第二章 赤の瞳と金の瞳
第124話 黒竜の竜魔石
しおりを挟む
お父さんが作った竜魔道具と似たような物だろうか。スケールは違いすぎるし、何だかその記憶が正しければこんなに目が輝いてはいなかったような……。
元婚約者ラヴェルの姿をした光の像は眩しいくらい目が光ってる。
「ふふふ、我が国には黒竜がいる。彼の作る竜魔石は素晴らしい力をもっている。いまお前に向かって撃った竜殺しの鉄槌魔法もそうだ。見ろ、竜のような強さを誇ると言われる魔物サラマンダーも一撃だ!」
開いた口を必死に戻しながら私は下を覗き込む。もしかして、試し打ちであの子は撃たれたのだろうか。大きな音がすれば、ブレイドが確かめに来ると思って?
「赤い髪の人間の姿を見て思い出した。マクプンの消された王子の顔をな。瘴気の外で狼煙をあげるつもりだったがちょうど良かった。瘴気が消えてなくなったようだな!! 今なら誰のものでもないだろう? お前を倒しこの地をすべて手中に収める。そしてエマの力を――」
ゾワゾワする。ラヴェルは私ではなく私の力を求めているのか。まったく変わっていない彼の声は冷たい。
光の像が手をあげる。
同時にたくさんの魔法弾が飛んできた。いったいいくつあるのだろう。
「続くとキツイかもしれない……」
数発ずつ避けて潰していく。ただ、魔法を使いすぎるとブレイドが危なくなるのはわかっている。でも、あの弾を放っておくとどうなるのかわからないから、彼は全部潰しているのだろう。だって、避けて飛んでいく先は皆がいる城がある方角だ。
「スピアー、手伝って!!」
「もうやっとるで」
スピアーの方に飛んでいっている分は彼が対応してくれていたみたいだ。ただ、水の魔法だからか竜魔石の塊みたいなものがそのまま落下していっている。
下が街だったらと思うと寒気がする。森でも生き物はいるし……。
「瘴気の壁に守られてたなんて皮肉だな」
ブレイドが呟く。
突然瘴気の壁が消えたから、弟が帰ってきて、ラヴェルが侵攻してきた。
ミリアやクロウまで同時に。
あまりにタイミングが合いすぎている。もしかして、ミリアは瘴気の壁を消すと知らせ回っていたのかな。
「あ、やば……」
スピアーが手で頭を押さえる。
「魔力切れかも」
先に限界がきたのはスピアーだった。
まだ竜魔石の弾は打ち上がってくる。
「ブレイド」
「ボクはまだ行ける」
けれど、ブレイドの額にも汗が見えだしていた。これ以上は危ないかもしれない。
すぐそこまで弾がきては潰していく。
だんだん距離がつまってきていた。
「どうしたら……」
何も出来ない自分に歯がゆさを感じる。彼の背中にぎゅっと掴まっているしかできない。
ほんの少し弾が飛んでこない時間が続いた。
光の像がニヤリと口を歪ませる。
「降参し、エマを渡してくれるなら見逃してやるぞ」
あはははと高らかに笑いながら再び手をあげる。
ブレイドは身構えたけれど、次に同じ位の数がきたらきっと無理だ。
「……瘴気」
リアの声が、彼女からではなくずっとずっと下から響いた気がした。
「……囲む。……喜ぶ?」
声に呼応するように地面がゴウッと鳴った。まるで大きな爆発でもあったかのような――。
元婚約者ラヴェルの姿をした光の像は眩しいくらい目が光ってる。
「ふふふ、我が国には黒竜がいる。彼の作る竜魔石は素晴らしい力をもっている。いまお前に向かって撃った竜殺しの鉄槌魔法もそうだ。見ろ、竜のような強さを誇ると言われる魔物サラマンダーも一撃だ!」
開いた口を必死に戻しながら私は下を覗き込む。もしかして、試し打ちであの子は撃たれたのだろうか。大きな音がすれば、ブレイドが確かめに来ると思って?
「赤い髪の人間の姿を見て思い出した。マクプンの消された王子の顔をな。瘴気の外で狼煙をあげるつもりだったがちょうど良かった。瘴気が消えてなくなったようだな!! 今なら誰のものでもないだろう? お前を倒しこの地をすべて手中に収める。そしてエマの力を――」
ゾワゾワする。ラヴェルは私ではなく私の力を求めているのか。まったく変わっていない彼の声は冷たい。
光の像が手をあげる。
同時にたくさんの魔法弾が飛んできた。いったいいくつあるのだろう。
「続くとキツイかもしれない……」
数発ずつ避けて潰していく。ただ、魔法を使いすぎるとブレイドが危なくなるのはわかっている。でも、あの弾を放っておくとどうなるのかわからないから、彼は全部潰しているのだろう。だって、避けて飛んでいく先は皆がいる城がある方角だ。
「スピアー、手伝って!!」
「もうやっとるで」
スピアーの方に飛んでいっている分は彼が対応してくれていたみたいだ。ただ、水の魔法だからか竜魔石の塊みたいなものがそのまま落下していっている。
下が街だったらと思うと寒気がする。森でも生き物はいるし……。
「瘴気の壁に守られてたなんて皮肉だな」
ブレイドが呟く。
突然瘴気の壁が消えたから、弟が帰ってきて、ラヴェルが侵攻してきた。
ミリアやクロウまで同時に。
あまりにタイミングが合いすぎている。もしかして、ミリアは瘴気の壁を消すと知らせ回っていたのかな。
「あ、やば……」
スピアーが手で頭を押さえる。
「魔力切れかも」
先に限界がきたのはスピアーだった。
まだ竜魔石の弾は打ち上がってくる。
「ブレイド」
「ボクはまだ行ける」
けれど、ブレイドの額にも汗が見えだしていた。これ以上は危ないかもしれない。
すぐそこまで弾がきては潰していく。
だんだん距離がつまってきていた。
「どうしたら……」
何も出来ない自分に歯がゆさを感じる。彼の背中にぎゅっと掴まっているしかできない。
ほんの少し弾が飛んでこない時間が続いた。
光の像がニヤリと口を歪ませる。
「降参し、エマを渡してくれるなら見逃してやるぞ」
あはははと高らかに笑いながら再び手をあげる。
ブレイドは身構えたけれど、次に同じ位の数がきたらきっと無理だ。
「……瘴気」
リアの声が、彼女からではなくずっとずっと下から響いた気がした。
「……囲む。……喜ぶ?」
声に呼応するように地面がゴウッと鳴った。まるで大きな爆発でもあったかのような――。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる