痩せる決意をした聖女と食べてやると宣言する竜の王子〜婚約破棄されちゃったけど気になる人に愛されたいからダイエット頑張ります〜

花月夜れん

文字の大きさ
上 下
117 / 135
第二章 赤の瞳と金の瞳

第117話 帰り着く

しおりを挟む
「本当に連れて帰るのか?」
「うん、あそこに置いておけないよ。もしかしたらお父さんがこの子を私に預かって欲しいのかもしれないし」

 すっかり元気になったブレイドは竜の姿になって私と不思議な女の子リアを背に乗せて空を飛ぶ。飛べるということは風の魔法も使えているみたい。
 リアには竜が魔法の力を回復する力があるのかもしれない。
 本当に不思議な子どもだ。

「寝てる子をあそこに放っておくのも」
「そうだね。まだ近くにアイツもいるかもだったし」
「うん」

 私の服にしがみついてすやすや眠るリアをしっかり抱きしめながら、景色が流れていくのを眺める。
 瘴気の壁が見えてきた。

「帰ったらミリアやクロウがいたりするのかな」
「わからない。ただ壁があるかぎり入ってくる人数は限られているだろうし、今のボクなら問題なく対応出来る。それに」
「それに?」
「スピアーがあそこに残ってくれてるから」

 照れくさそうにブレイドは話していた。

「今回エマの場所がわかったのもスピアーのおかげだった」
「あ、そっか……。もしかしてブローチ?」
「うん」

 いつも身につけてるブローチはスピアーが魔法をいつでも使えるようにしてくれている。指輪は持ってなかったけれど、ブローチはあったからわかったんだ。
 彼は嘘をつかずブレイドに私の居場所を教えて自分は留守番に回ってくれている。
 損な役割なのに――。あとでお礼を言っておこう。食べられたくはないけれど、信用くらいはしてもいいのかな。

「エマを譲るつもりはないけれど、スピアーには借りを返さないと」
「そうだね」

 上空に到着すると、ホッとした。

「あ、フレイルの事……、何て言おう」
「この前だって一人で飛んできたんだ。大丈夫だろう」
「そっか。そうだよね」

 下からルニアの私を呼ぶ声が聞こえた。

「エマー!」
「ルニアー!」

 今回は急いでいる風がなくて、どうやらミリアもクロウもきてないのと私にしか浄化できない瘴気はなかったみたいだ。

「おかえり、いたずら小僧はどこいきよったー?」

 竜の姿のスピアーはそう言って、大きなあくびをしていた。

「スピアー、ありがとう。今から話すね。でも……」
「ん、でも?」

 ぐぅぅぅ。
 いい音がなる。

「え、違う。私じゃないから!!」

 確かに私いつもこんな感じだけど今日はお母さんのご飯をしっかり食べてきたから!

「お、なんや。ちっちゃいのがおる……」
「そ、そう!! そうなの。今回のお腹の音はこの子。だから、はやく何か食べさせてあげなきゃ――」
「なんや、エマちゃんまで子どもおったんか。ますますアメリアとそっくりの境遇やな」
「じゃないから!! 私の子どもじゃないから!!」

 目を丸くしてたスピアーが人の姿に変身する。近付いてくるとリアに手を伸ばした。

「くるかー?」

 眠たそうにしていたけれどリアはスピアーの腕に掴まった。
 スピアーはぐいっと持ち上げて肩車をしてあげていた。

「……スピアー」

 リアはスピアーの名前を呼んだあと彼の頭をしっかりと持ち、嬉しそうに笑っていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

望まれない結婚〜相手は前妻を忘れられない初恋の人でした

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【忘れるな、憎い君と結婚するのは亡き妻の遺言だということを】 男爵家令嬢、ジェニファーは薄幸な少女だった。両親を早くに亡くし、意地悪な叔母と叔父に育てられた彼女には忘れられない初恋があった。それは少女時代、病弱な従姉妹の話し相手として滞在した避暑地で偶然出会った少年。年が近かった2人は頻繁に会っては楽しい日々を過ごしているうちに、ジェニファーは少年に好意を抱くようになっていった。 少年に恋したジェニファーは今の生活が長く続くことを祈った。 けれど従姉妹の体調が悪化し、遠くの病院に入院することになり、ジェニファーの役目は終わった。 少年に別れを告げる事もできずに、元の生活に戻ることになってしまったのだ。 それから十数年の時が流れ、音信不通になっていた従姉妹が自分の初恋の男性と結婚したことを知る。その事実にショックを受けたものの、ジェニファーは2人の結婚を心から祝うことにした。 その2年後、従姉妹は病で亡くなってしまう。それから1年の歳月が流れ、突然彼から求婚状が届けられた。ずっと彼のことが忘れられなかったジェニファーは、喜んで後妻に入ることにしたのだが……。 そこには残酷な現実が待っていた―― *他サイトでも投稿中

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜

川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。 前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。 恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。 だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。 そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。 「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」 レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。 実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。 女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。 過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。 二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】

雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。 誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。 ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。 彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。 ※読んでくださりありがとうございます。 ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。

処理中です...