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第二章 赤の瞳と金の瞳
第112話 ごめんなさい
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一瞬の間。
お父さんが話し出した。
「わかった。伝えよう」
その言葉を聞いてお母さんが突然立ち上がり、寝室の扉を開き飛び出した。
「どうしてですかっ! 人様の婚約者がうちの子を好きだってどんな神経でそんな事言えるんですか!? あなたもあなたです。どうしてこんな男の言う事に頷くんですか! こんなもの叩き返してっ」
「エリヤっ! 彼の顔を見てあげなさいっ! これだけ憔悴している。それに指輪を見ろ。指のサイズが落ち着くまでとネックレスにしてくれている。それに、婚約者と言ったのはミリア様であって彼ではない」
「……でも」
お母さんは確認して戸惑っているのだろうか。言葉が続かなかった。
「ここに入るための交換条件だった。ではないのかね?」
「…………」
私がここに来てしまったから……。
聞いた瞬間私は立ち上がり、ブレイドのもとにむかった。
「ブレイド!!」
姿形なんて今はかまっていられない。説明しなきゃ。でも、フレイルはいない。彼に連れてこられたと、言ってしまうとルニアにも迷惑がかかってしまうかもしれない……。
でも、今はただ、ここからいなくなる前に彼に会いたかった。
「エマ!!」
今の私を見て、すぐわかってくれたのが嬉しいなんて思ってしまった。ブレイドは驚くほど憔悴していた。
「ごめんなさい。変な感じのまま出てきてしまって……。すぐに戻るって言っていたのにっ」
話してる途中でブレイドに抱きしめられた。
「無事で良かった」
その言葉でさっきまで不安だった私の気持ちはどこか遠くに吹き飛んでしまった。
「ごめんなさい」
疑ってしまって。置いてきてしまって。もっと強くフレイルに言わなくて……。
色々なごめんなさいがあるのに、私の口からでたのはごめんなさいだけだった。
「エマ、その姿……」
「エマちゃん……」
お父さん、お母さんが驚いていた。そういえば、なんだか髪の色がいつもの私の色に戻っている。
なんだ、変身してたのに私だってわかってくれた訳じゃなかったのか。私は苦笑しながら頭を指で搔いた。
「これ、本当の私」
「そうだな。うん、エマだ……少し丸いな」
お父さんはベシッとお母さんに叩かれてた。丸いけど、これでも頑張って痩せたんだよと思ってたからちょっとスッとした。
「うん、エマちゃん。私のエマちゃんだ」
嬉しそうに泣く二人の前でなかなか離してくれないブレイドに手でポンポンと叩き離れて欲しいと合図する。さすがにずっとこのままは少し恥ずかしい。
「ブレイド君といったかな」
「はい」
お父さんに名前を呼ばれやっと少し離れてくれた。手はがっちり捕まったままだけれど。
「エマを頼む。ここからはやく連れて逃げて欲しい。その瞳がバレるとエマは……。だが、そうだ。連れて帰ってと言ってもここからは出ることは」
そう。フレイルと合流しないと変身の薬はないしここの扉も開かない。さっきブレイドがもらっていたものはミリアを呼ぶ何か。だったら、ここからブレイドは出られてもこの姿の私は外に出られないままだ。
「マリエル! アレは!?」
何かを思い出したようにハッとして、お父さんとお母さんが寝室へと向かう。
戻ってきた二人はお母さんが布、お父さんが書物を手にしていた。
「何それ?」
「今から説明する……うまくいけばいいんだが」
そう言ってからお父さんは書物を近くに置き、お母さんから布を受け取っていた。
お父さんが話し出した。
「わかった。伝えよう」
その言葉を聞いてお母さんが突然立ち上がり、寝室の扉を開き飛び出した。
「どうしてですかっ! 人様の婚約者がうちの子を好きだってどんな神経でそんな事言えるんですか!? あなたもあなたです。どうしてこんな男の言う事に頷くんですか! こんなもの叩き返してっ」
「エリヤっ! 彼の顔を見てあげなさいっ! これだけ憔悴している。それに指輪を見ろ。指のサイズが落ち着くまでとネックレスにしてくれている。それに、婚約者と言ったのはミリア様であって彼ではない」
「……でも」
お母さんは確認して戸惑っているのだろうか。言葉が続かなかった。
「ここに入るための交換条件だった。ではないのかね?」
「…………」
私がここに来てしまったから……。
聞いた瞬間私は立ち上がり、ブレイドのもとにむかった。
「ブレイド!!」
姿形なんて今はかまっていられない。説明しなきゃ。でも、フレイルはいない。彼に連れてこられたと、言ってしまうとルニアにも迷惑がかかってしまうかもしれない……。
でも、今はただ、ここからいなくなる前に彼に会いたかった。
「エマ!!」
今の私を見て、すぐわかってくれたのが嬉しいなんて思ってしまった。ブレイドは驚くほど憔悴していた。
「ごめんなさい。変な感じのまま出てきてしまって……。すぐに戻るって言っていたのにっ」
話してる途中でブレイドに抱きしめられた。
「無事で良かった」
その言葉でさっきまで不安だった私の気持ちはどこか遠くに吹き飛んでしまった。
「ごめんなさい」
疑ってしまって。置いてきてしまって。もっと強くフレイルに言わなくて……。
色々なごめんなさいがあるのに、私の口からでたのはごめんなさいだけだった。
「エマ、その姿……」
「エマちゃん……」
お父さん、お母さんが驚いていた。そういえば、なんだか髪の色がいつもの私の色に戻っている。
なんだ、変身してたのに私だってわかってくれた訳じゃなかったのか。私は苦笑しながら頭を指で搔いた。
「これ、本当の私」
「そうだな。うん、エマだ……少し丸いな」
お父さんはベシッとお母さんに叩かれてた。丸いけど、これでも頑張って痩せたんだよと思ってたからちょっとスッとした。
「うん、エマちゃん。私のエマちゃんだ」
嬉しそうに泣く二人の前でなかなか離してくれないブレイドに手でポンポンと叩き離れて欲しいと合図する。さすがにずっとこのままは少し恥ずかしい。
「ブレイド君といったかな」
「はい」
お父さんに名前を呼ばれやっと少し離れてくれた。手はがっちり捕まったままだけれど。
「エマを頼む。ここからはやく連れて逃げて欲しい。その瞳がバレるとエマは……。だが、そうだ。連れて帰ってと言ってもここからは出ることは」
そう。フレイルと合流しないと変身の薬はないしここの扉も開かない。さっきブレイドがもらっていたものはミリアを呼ぶ何か。だったら、ここからブレイドは出られてもこの姿の私は外に出られないままだ。
「マリエル! アレは!?」
何かを思い出したようにハッとして、お父さんとお母さんが寝室へと向かう。
戻ってきた二人はお母さんが布、お父さんが書物を手にしていた。
「何それ?」
「今から説明する……うまくいけばいいんだが」
そう言ってからお父さんは書物を近くに置き、お母さんから布を受け取っていた。
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