109 / 135
第二章 赤の瞳と金の瞳
第109話 再会
しおりを挟む
「や、やっとついた……」
「あはは、お疲れさま」
「お疲れさまじゃないよ、もう――」
フレイルはあちこちに話しかけられて、何度も何度も何度も止まるし、何人もが私を面白そうだとじっと視線を向けてくるし。
後ろに隠れるとフレイルが子ども扱いするし、横に立てば恋人みたいに言うし……。
「守るって言ってたのに」
「え、でも無事ここまでこれたでしょう?」
「そうだけど」
いったい何階上に上がってきたんだろう。壁が本当に白くなった。
「まだ最上階ではないですが、ここにいると思います」
「え、この白さでまだもっと上があるの」
「はい。ここに数字が描かれてるのですが、白の階の何番目かを記してるんです」
「そ、そっか」
階段はもう沢山だ。まるで迷路みたいに上る場所が一階一階違うし、間間で話しかけられる。
「あ、あった。こっちです」
「え?」
「ここにエマ様のお父様の名前がありました」
「そうなの?」
私には何も見えないけれど、フレイルには何かが見えているのかな。指が壁の手前をすーっとなぞっていた。
「ここですね」
連れられてきたのは一つの扉の前。
「どうぞ、僕は水入らずの邪魔にならないようにここにいますね」
「え、あ、うん。でも、これどうやって開けるの?」
「いま開けますね」
スッと長い指が扉をなぞる。どういう仕掛けなんだろう。扉が開いた。
「誰だ?」
竜魔道具で聞いたお父さんの声がした。
「あの……」
「誰かいらっしゃったのですか?」
記憶のかなたにある大好きなお母さんの声。
私は中に歩みだす。自分の姿が違う事も忘れて。
後ろの扉が閉まる。でも、そんな事はいま気になんてならなかった。目の前にずっと待っていた、ずっと会いたかったお父さんとお母さんがいる。
「お前はまさかっ、入ってきちゃダメだ!! エマ!!」
「え?」
抱きつこうとして手を伸ばしていた。なのに、ダメだと言われ空で止まる。
「どうして、お父さん……」
扉がしまった。手を下におろし、肩を落とす。
本当は会いたくなかった?
お父さんは口を抑え、顔を青くしていた。
「遅かったか……」
「どうしました? あなた。今エマって……まさか、この子が」
お母さんは私を見て悩んでいた。だって、髪色も目の色も違うみたいだから。だけど、お母さんも少し記憶と違った。白い髪がまじり、記憶よりずいぶん小さくなっていた。
お父さんはお母さんの言葉に頷いた後こちらへと向き直した。
「……たぶん、エマだ。そうだろう?」
私はこくんと頷く。
マリエルはこちらへおいでと手招きした。足を進め近付くと二人からぎゅっと抱きしめられた。
「お父……さん、お……かあ……さん……」
「エマ! エマ!」
「エマちゃん、会いたかった。こんなに大きくなってしまって。ごめんなさい、ひとりぼっちにして」
お母さんが小さくなった訳じゃなかった。私が大きくなったから小さく思えたんだ。
ぎゅうぎゅうと抱きしめあってひとしきり泣きあった後、一番最初に落ち着いたお父さんは真っ赤な鼻をすすりながら話し出した。
「来てはいけないとしっかり伝えられなくてごめんよ」
そう言って、首に巻かれた何かを見せられた。
「エマはまだされていないかい?」
「何それ?」
「逃げ出せないようにつけられた首輪だよ」
お母さんを見ると同じ物が首に巻かれていた。
「あはは、お疲れさま」
「お疲れさまじゃないよ、もう――」
フレイルはあちこちに話しかけられて、何度も何度も何度も止まるし、何人もが私を面白そうだとじっと視線を向けてくるし。
後ろに隠れるとフレイルが子ども扱いするし、横に立てば恋人みたいに言うし……。
「守るって言ってたのに」
「え、でも無事ここまでこれたでしょう?」
「そうだけど」
いったい何階上に上がってきたんだろう。壁が本当に白くなった。
「まだ最上階ではないですが、ここにいると思います」
「え、この白さでまだもっと上があるの」
「はい。ここに数字が描かれてるのですが、白の階の何番目かを記してるんです」
「そ、そっか」
階段はもう沢山だ。まるで迷路みたいに上る場所が一階一階違うし、間間で話しかけられる。
「あ、あった。こっちです」
「え?」
「ここにエマ様のお父様の名前がありました」
「そうなの?」
私には何も見えないけれど、フレイルには何かが見えているのかな。指が壁の手前をすーっとなぞっていた。
「ここですね」
連れられてきたのは一つの扉の前。
「どうぞ、僕は水入らずの邪魔にならないようにここにいますね」
「え、あ、うん。でも、これどうやって開けるの?」
「いま開けますね」
スッと長い指が扉をなぞる。どういう仕掛けなんだろう。扉が開いた。
「誰だ?」
竜魔道具で聞いたお父さんの声がした。
「あの……」
「誰かいらっしゃったのですか?」
記憶のかなたにある大好きなお母さんの声。
私は中に歩みだす。自分の姿が違う事も忘れて。
後ろの扉が閉まる。でも、そんな事はいま気になんてならなかった。目の前にずっと待っていた、ずっと会いたかったお父さんとお母さんがいる。
「お前はまさかっ、入ってきちゃダメだ!! エマ!!」
「え?」
抱きつこうとして手を伸ばしていた。なのに、ダメだと言われ空で止まる。
「どうして、お父さん……」
扉がしまった。手を下におろし、肩を落とす。
本当は会いたくなかった?
お父さんは口を抑え、顔を青くしていた。
「遅かったか……」
「どうしました? あなた。今エマって……まさか、この子が」
お母さんは私を見て悩んでいた。だって、髪色も目の色も違うみたいだから。だけど、お母さんも少し記憶と違った。白い髪がまじり、記憶よりずいぶん小さくなっていた。
お父さんはお母さんの言葉に頷いた後こちらへと向き直した。
「……たぶん、エマだ。そうだろう?」
私はこくんと頷く。
マリエルはこちらへおいでと手招きした。足を進め近付くと二人からぎゅっと抱きしめられた。
「お父……さん、お……かあ……さん……」
「エマ! エマ!」
「エマちゃん、会いたかった。こんなに大きくなってしまって。ごめんなさい、ひとりぼっちにして」
お母さんが小さくなった訳じゃなかった。私が大きくなったから小さく思えたんだ。
ぎゅうぎゅうと抱きしめあってひとしきり泣きあった後、一番最初に落ち着いたお父さんは真っ赤な鼻をすすりながら話し出した。
「来てはいけないとしっかり伝えられなくてごめんよ」
そう言って、首に巻かれた何かを見せられた。
「エマはまだされていないかい?」
「何それ?」
「逃げ出せないようにつけられた首輪だよ」
お母さんを見ると同じ物が首に巻かれていた。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】結婚初夜。離縁されたらおしまいなのに、夫が来る前に寝落ちしてしまいました
Kei.S
恋愛
結婚で王宮から逃げ出すことに成功した第五王女のシーラ。もし離縁されたら腹違いのお姉様たちに虐げられる生活に逆戻り……な状況で、夫が来る前にうっかり寝落ちしてしまった結婚初夜のお話
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる