108 / 135
第二章 赤の瞳と金の瞳
第108話 ながらダイエットの先で
しおりを挟む
「あの、エマ様。何をしているんですか?」
「え、ダイエットよ」
ただたどり着くのを待ってるだけは時間がもったいないと思い、どうせお父さんのところに行くのなら体重はもう関係ない。今から足掻いてもしょうがないけれど、私は動く範囲で運動していた。会ってそうそう「丸くなった」って言われたくないし。今は、変身の薬が効いてるけど……。
「こちらです」
「本当に大丈夫なの?」
数刻もしないうち私は聖女達のいる国クフノシトキへと運ばれた。
ここは赤い瞳の聖女アメリアが誕生したと言われる場所。
その中で大きな建物の上に悠々とフレイルは降り立った。
「ここから中央区研究棟に向かう事が出来ます。任せて下さい」
扉を開け階段を下り、すぐ近くの部屋に入る。私はその後を恐る恐るついていった。
大人の姿のフレイルはどこから出したのか白い衣装を纏い、同じ物を私にも着せる。
「ここは僕用に作られてますから、大丈夫ですよ」
「フレイル用!?」
「はい。僕用の研究室です」
どうしてこんなところにフレイルの部屋があるの?
というか、少し前までハヘラータで働いてるはずだよね?
「僕は竜であることをここの人達に伝えてあります。ずっとずっと前から。普段はここで研究など好き勝手させてもらってまして――。この国の便利な道具なんかは僕が開発してるんです」
にこにこと笑いながらフレイルは部屋の中を漁っている。
確かにまわりを見れば、フレイルの部屋にあるものと同じようなのがたくさん並んでいた。
「ほら、これ見覚えありませんか」
「あ、婚約指輪……」
「そう、僕が作ったエマ様専用の。こっちは予備ですが」
久しぶりに見たその指輪をフレイルは私につけようとする。
あまりにトラウマすぎるそれをつけられまいと手を引くと、腕を掴まれぎゅっと引っ張られた。
「力が強くなる指輪なんです。つけておいて下さい」
「でも……」
「ここがお嫌でしたら反対にでも」
そう言って反対の手を取りスッとつけられてしまった。ぴったりだった。これは薬が切れたとき指から抜けなくなってしまうのではと震える。あれ、そうだ。今飲んでいる薬は違うものなのかな。本体……というか実際の体型に触れられない。
「さぁ、行きましょう」
「フレイル……」
「はい?」
信じていいのかな……。
ううん、彼はルニアの弟なのだから。きっと大丈夫。
「ささっと済ませましょう」
ぎゅっと拳を握り気合をいれる。
うじうじ考えて動かない方が皆に心配をかける時間が増えてしまう。それなら、どーんと一気にしてしまう方がずっといい。
ブレイド、心配してるかな……。気まずい雰囲気で出てきてしまったから余計に気になってしまう。はやく帰らなくちゃ。
「そうですね!! 僕の予想では夫妻は研究棟の上の方の階にいるんじゃないかなと睨んでます。映像の後ろに見えた壁の色が白色だったので」
「壁の色って違うの?」
「はい、下は灰色、上に行くほど白くなって行くんです」
廊下を進む。天井が高く、外は見えない。ところどころ部屋のドアがあるけれど誰ともすれ違わない。
前方に明るい光が見えた。人の声も聞こえる。
「見えてきました。あそこからはたくさん人がいます。けれど心配しないでくださいね。僕が守りますから。エマ様は堂々と僕についてきてください」
フレイルは大きくなっても変わらない笑顔を浮かべていた。
「え、ダイエットよ」
ただたどり着くのを待ってるだけは時間がもったいないと思い、どうせお父さんのところに行くのなら体重はもう関係ない。今から足掻いてもしょうがないけれど、私は動く範囲で運動していた。会ってそうそう「丸くなった」って言われたくないし。今は、変身の薬が効いてるけど……。
「こちらです」
「本当に大丈夫なの?」
数刻もしないうち私は聖女達のいる国クフノシトキへと運ばれた。
ここは赤い瞳の聖女アメリアが誕生したと言われる場所。
その中で大きな建物の上に悠々とフレイルは降り立った。
「ここから中央区研究棟に向かう事が出来ます。任せて下さい」
扉を開け階段を下り、すぐ近くの部屋に入る。私はその後を恐る恐るついていった。
大人の姿のフレイルはどこから出したのか白い衣装を纏い、同じ物を私にも着せる。
「ここは僕用に作られてますから、大丈夫ですよ」
「フレイル用!?」
「はい。僕用の研究室です」
どうしてこんなところにフレイルの部屋があるの?
というか、少し前までハヘラータで働いてるはずだよね?
「僕は竜であることをここの人達に伝えてあります。ずっとずっと前から。普段はここで研究など好き勝手させてもらってまして――。この国の便利な道具なんかは僕が開発してるんです」
にこにこと笑いながらフレイルは部屋の中を漁っている。
確かにまわりを見れば、フレイルの部屋にあるものと同じようなのがたくさん並んでいた。
「ほら、これ見覚えありませんか」
「あ、婚約指輪……」
「そう、僕が作ったエマ様専用の。こっちは予備ですが」
久しぶりに見たその指輪をフレイルは私につけようとする。
あまりにトラウマすぎるそれをつけられまいと手を引くと、腕を掴まれぎゅっと引っ張られた。
「力が強くなる指輪なんです。つけておいて下さい」
「でも……」
「ここがお嫌でしたら反対にでも」
そう言って反対の手を取りスッとつけられてしまった。ぴったりだった。これは薬が切れたとき指から抜けなくなってしまうのではと震える。あれ、そうだ。今飲んでいる薬は違うものなのかな。本体……というか実際の体型に触れられない。
「さぁ、行きましょう」
「フレイル……」
「はい?」
信じていいのかな……。
ううん、彼はルニアの弟なのだから。きっと大丈夫。
「ささっと済ませましょう」
ぎゅっと拳を握り気合をいれる。
うじうじ考えて動かない方が皆に心配をかける時間が増えてしまう。それなら、どーんと一気にしてしまう方がずっといい。
ブレイド、心配してるかな……。気まずい雰囲気で出てきてしまったから余計に気になってしまう。はやく帰らなくちゃ。
「そうですね!! 僕の予想では夫妻は研究棟の上の方の階にいるんじゃないかなと睨んでます。映像の後ろに見えた壁の色が白色だったので」
「壁の色って違うの?」
「はい、下は灰色、上に行くほど白くなって行くんです」
廊下を進む。天井が高く、外は見えない。ところどころ部屋のドアがあるけれど誰ともすれ違わない。
前方に明るい光が見えた。人の声も聞こえる。
「見えてきました。あそこからはたくさん人がいます。けれど心配しないでくださいね。僕が守りますから。エマ様は堂々と僕についてきてください」
フレイルは大きくなっても変わらない笑顔を浮かべていた。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】結婚初夜。離縁されたらおしまいなのに、夫が来る前に寝落ちしてしまいました
Kei.S
恋愛
結婚で王宮から逃げ出すことに成功した第五王女のシーラ。もし離縁されたら腹違いのお姉様たちに虐げられる生活に逆戻り……な状況で、夫が来る前にうっかり寝落ちしてしまった結婚初夜のお話
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる