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第二章 赤の瞳と金の瞳

第103話 食べられない瘴気

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 瘴気の壁を越え、瘴気が出る場所へと降下する。
 フレイルとルニアがいた。

「エマ様ぁ!」

 涙目のフレイルが私達に気がついた。
 スピアーが私を持ち上げルニアの立つ場所に飛んだ。

「話はあとや、ブレイドそのままでいけるか」
「あぁ」

 ルニアに私をまかせ、赤竜ブレイド青竜スピアーは瘴気の中へと突入した。
 フレイルがごめんなさいごめんなさいと泣くのでルニアと二人で落ち着いてと宥める。

「どうしたの? フレイル」
「……それが、僕にはあれが食べられなくて」
「え?」
「エマ、聞いてくれ。あれは瘴気の壁と同じなのかもしれない」
「瘴気の壁と?」

 この国を覆う瘴気の壁。瘴気なのだから、竜が食べてしまえばいいのではないかと聞いたことがあった。
 私がここに入ってきた時浄化が出来たし、食べて壁がなくなれば出入りがしやすくなるのでは? そう考えて。
 答えは「出来ない」だった。
 浄化は出来るけれど、竜は食べる事が出来ない瘴気。
 さすがに私一人で国を覆い囲う壁すべてを浄化するのは長い作業になるし、少しずつしてもまたすぐ覆われてしまう。
 瘴気の壁自体は動いていないから、後回しにしていた。
 今、知ってしまった私はあれらすべてを浄化する事が何を意味するか――。

「食べられない!?」
「あかん、なんやこれ!!」

 ブレイド達もフレイルと同じである事がわかる言葉が出ていた。
 竜が食べられないなら、私が浄化するしかない。
 手が震える。知ったあとはずっと守られていた。何も知らなければ普通に戦っていた相手なのに。今は怖い。
 だけど、私にしか出来ない。

「エマっ」

 ルニアの静止を振り切り、私は前に出た。
 大丈夫、まだ大丈夫……。ぎゅっと手を握り祈りを始めた。

「エマ――、やめっっ」
「エマちゃん!?」

 重い。毎日戦ってなかったからかな。こんなに重く感じたことなかったのに。
 久しぶりの感覚。全部全部包み込んで浄化する。ひと握りも残さずに――。

 ブレイドとスピアーの姿が見えた。瘴気は影も形もない。

「よかったぁ」

 久しぶりで失敗しなくて本当によかった。私はホッと息をついた。

「よかった……じゃないよ!!」
「よかったやない!!」
「何してんだ!!」

 頭の上からブレイドとスピアーとルニアの声が降り注いだ。

「な、何って、瘴気の浄化?」

 ブレイドとルニアに服の袖をまくられる。腕が寒いよ!
 何もなかったのかすぐに元に戻してくれたけど、表情は怖いままだ。

「何ともないか? 体おかしいところは?」

 ルニアは私の首とかお腹とかポンポンしながら確かめ続けてる。

「大丈夫だよ。というか、心配しすぎだよ。私、ずっと浄化してたんだからさ。別に今までと変わったりなんて」

 そこまで言って、私の足が言う事をきかなくなった。
 がくりと崩れ落ちる。

「エマ!!」
「エマちゃん」
「エマ!!」
「エマ様!!」

 皆が心配してくれてる。だけど、今は誰も近寄って欲しくない。だって、これは……、これは……。

 ぐぅぅぅぅぅ

 盛大な音が鳴り響いた。
 そう、お腹が空いて力が入らないのだ。

「あ、あはは。ほら、いつも通りでしょ?」

 そう言った途端、私の足……というか体が宙に浮いた。
 ブレイドに抱き抱えられていた。
 だから、なんで気持ち軽い時じゃない日にこうなるのかな!?
 私はまた体重を減らそうと誓いながらブレイドに運ばれた。一週間後位からねっ!!
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