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第二章 赤の瞳と金の瞳
第99話 黒竜の目指す場所(黒竜ダガー視点)
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うわぁぁぁ。うわぁぁぁ。可愛いぃぃー!!
俺はさっきまでこの手にいた彼女の匂いを感じながら幸せ気分だった。かけらじゃない。動いて、話して、笑う。
彼女を前にすると上手く話せないし、緊張しすぎて頭が働かなくなってしまう。もっと一緒にいたかったけれど、今はまだダメだ。
「――アメリア、はやく迎えにいきたいな」
彼女の匂いにブレイドの匂いがついていた。気に入らないけど、我慢しないと。
「逃げましたか」
隊のリーダーの男が駆け寄ってくる。もうアメリアはいないからいつも通りに話せる。
「あぁ、だが一度引き返すぞ」
「は!? 何故ですか?」
「俺の言う事が聞けないのか?」
「いえ、ですが先ほどの竜の言う事を聞くのですか? 勝ったのは黒竜様では――」
「俺の方が強い。だが、あの先に俺の大切なものがある。言う事が聞けないというなら俺はお前らの前から姿を消そう」
「――!! それは、困ります!! 今すぐ引き返す準備を始めさせます」
「そうか。ならば戻る」
彼女が瘴気と関わらないで済む場所を作る。安心して最後まで一緒にいられる国を作る。信用を得て、国を治める者と同じか上の位に立てば……。
瘴気が発生しておらず、他の聖女が入り込んでいない国を――。
俺は手に入れて、彼女を迎えに行く。
たとえそれがどんな困難であろうとも。
さて、戻ったらなんと言い訳しよう。
面倒な人間が国に戻ってきて、俺の計画が少し狂ってしまった。
ローガン将軍の孫という人物。
あれが竜を信じられぬと言わなければ、今回のこれに同行するつもりはなかった。
ただ、今はそれも運命だったのだと思える。
ほんの少しの時間でも、彼女に会えたのだから。
俺はさっきまでこの手にいた彼女の匂いを感じながら幸せ気分だった。かけらじゃない。動いて、話して、笑う。
彼女を前にすると上手く話せないし、緊張しすぎて頭が働かなくなってしまう。もっと一緒にいたかったけれど、今はまだダメだ。
「――アメリア、はやく迎えにいきたいな」
彼女の匂いにブレイドの匂いがついていた。気に入らないけど、我慢しないと。
「逃げましたか」
隊のリーダーの男が駆け寄ってくる。もうアメリアはいないからいつも通りに話せる。
「あぁ、だが一度引き返すぞ」
「は!? 何故ですか?」
「俺の言う事が聞けないのか?」
「いえ、ですが先ほどの竜の言う事を聞くのですか? 勝ったのは黒竜様では――」
「俺の方が強い。だが、あの先に俺の大切なものがある。言う事が聞けないというなら俺はお前らの前から姿を消そう」
「――!! それは、困ります!! 今すぐ引き返す準備を始めさせます」
「そうか。ならば戻る」
彼女が瘴気と関わらないで済む場所を作る。安心して最後まで一緒にいられる国を作る。信用を得て、国を治める者と同じか上の位に立てば……。
瘴気が発生しておらず、他の聖女が入り込んでいない国を――。
俺は手に入れて、彼女を迎えに行く。
たとえそれがどんな困難であろうとも。
さて、戻ったらなんと言い訳しよう。
面倒な人間が国に戻ってきて、俺の計画が少し狂ってしまった。
ローガン将軍の孫という人物。
あれが竜を信じられぬと言わなければ、今回のこれに同行するつもりはなかった。
ただ、今はそれも運命だったのだと思える。
ほんの少しの時間でも、彼女に会えたのだから。
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