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第二章 赤の瞳と金の瞳
第93話 記憶と違うけれど
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「もしかして、お父さ……ん?」
ぽよんとしたお腹。記憶の中のお父さんはスッキリと細見だった。
二重顎。記憶の中のお父さんはシャープな顎だった。
たるんだ頬。記憶の中の(略)。
まるっとした体型。き(略)。
…………誰!?
『これが見えたということはエマなんだな。見違えたかもしれないがエマのお父さんだよ』
浮かび上がった小さな丸い人はそう言った。
え、やっぱりお父さんなの? いったい何があったの!?
『これは一方的に映像と音声を送るタイプの道具でね。エマの事が見えないのは寂しいけど』
だから、何があったの? 聞きたいけれど、どうやらこれは会話できる類のものではないらしい。
『体重の増減はしっかりわかってるから、僕達はキミがしっかり成長していってたことは知ってるよ。大きくなったね。エマ。ちょっと大きすぎる時もあったけど、今はいい感じだね。身長はお母さんくらいになったのかなぁ。見たかったなぁ』
……。今なんて言ったの? 体重の増減?
『あぁ、体重の増減っていうのはね、キミがつけてるブローチが測定器になっていて、ほらこれで毎日決まった時間に送られてくるんだ。お母さんがキミを身籠った時、体重の増減がすごくてつけた機能だったんだけど、成長記録にもなるからーってそのまま』
開いた口が塞がらない。生きていてくれて嬉しいのだけど、体重、体重……。
『あぁ、そうそう。それでね、キミの気持ちに少しでも寄り添いたくて太ってみたはいいのだけど、なかなか元に戻らなくてさ。困ったもんだよ』
お父さんの姿、私が原因なの!?
なら、私これからも頑張って痩せなくちゃ。お父さんを痩せさせるためにっ。
『話がだいぶそれてしまったね。とりあえず、僕とお母さんは生きてるよ。エマ迎えに行けなくてごめんよ。僕達はハヘラータから追放されてしまったんだ。帰りたくても帰れない。エマはまだハヘラータにいるのかな。あぁ、でもミリアさんの言い方だともしかしてハヘラータから出られたのかな。……もどかしいな。会って話がしたい』
私だって、話したいよ。いっぱいいっぱい話したい事があるよ。お父さん、お母さん!!
置いていかれた訳じゃなかった。会いたいと、迎えにきたいと思ってくれてたんだ。
私は涙が出そうになって鼻をぎゅっとつまんだ。
向こうから見える訳ではないけど、心配させたくなかった。
『本当、今すぐ会いたいよ……』
お父さんはそう言ったあとひとしきり話すと突然言葉が途切れてしまった。
口は動いている。きちんと音声を拾えなかったのだろうか。口だけ動かし首を振る。何を言っているのかわからなかった。
『それじゃあ、もしこれが全部見られて僕達に会いたかったら、少し痩せてからおいで。ここはごはんが美味しくて太ってしまうからね』
お父さんの姿が消えていく。まだ全然聞きたいこと聞けてないよ。すがるように手を伸ばしたけれど、触れる事も叶わず消えてしまった。
ぼんやりとしながら竜魔道具を手に取る。もう一度と竜魔石に触れるが動かなかった。
「お父さん……」
「エマの父様、来るなって言ってたな」
「え? いつ?」
「口だけ動かしてた時だ。エマくるな。絶対に来ちゃだめだってずっと言ってた。これを作るとき誰かに聞かれたりしてたのかもしれないな」
「どういうこと?」
「会いにこさせようとしてるヤツの命令で作ったのか、判断が難しいけど。なんとか伝えたかったんじゃないのか。エマにさ」
「そんな……」
私は手に持った竜魔道具をぎゅっと抱きしめた。
ぽよんとしたお腹。記憶の中のお父さんはスッキリと細見だった。
二重顎。記憶の中のお父さんはシャープな顎だった。
たるんだ頬。記憶の中の(略)。
まるっとした体型。き(略)。
…………誰!?
『これが見えたということはエマなんだな。見違えたかもしれないがエマのお父さんだよ』
浮かび上がった小さな丸い人はそう言った。
え、やっぱりお父さんなの? いったい何があったの!?
『これは一方的に映像と音声を送るタイプの道具でね。エマの事が見えないのは寂しいけど』
だから、何があったの? 聞きたいけれど、どうやらこれは会話できる類のものではないらしい。
『体重の増減はしっかりわかってるから、僕達はキミがしっかり成長していってたことは知ってるよ。大きくなったね。エマ。ちょっと大きすぎる時もあったけど、今はいい感じだね。身長はお母さんくらいになったのかなぁ。見たかったなぁ』
……。今なんて言ったの? 体重の増減?
『あぁ、体重の増減っていうのはね、キミがつけてるブローチが測定器になっていて、ほらこれで毎日決まった時間に送られてくるんだ。お母さんがキミを身籠った時、体重の増減がすごくてつけた機能だったんだけど、成長記録にもなるからーってそのまま』
開いた口が塞がらない。生きていてくれて嬉しいのだけど、体重、体重……。
『あぁ、そうそう。それでね、キミの気持ちに少しでも寄り添いたくて太ってみたはいいのだけど、なかなか元に戻らなくてさ。困ったもんだよ』
お父さんの姿、私が原因なの!?
なら、私これからも頑張って痩せなくちゃ。お父さんを痩せさせるためにっ。
『話がだいぶそれてしまったね。とりあえず、僕とお母さんは生きてるよ。エマ迎えに行けなくてごめんよ。僕達はハヘラータから追放されてしまったんだ。帰りたくても帰れない。エマはまだハヘラータにいるのかな。あぁ、でもミリアさんの言い方だともしかしてハヘラータから出られたのかな。……もどかしいな。会って話がしたい』
私だって、話したいよ。いっぱいいっぱい話したい事があるよ。お父さん、お母さん!!
置いていかれた訳じゃなかった。会いたいと、迎えにきたいと思ってくれてたんだ。
私は涙が出そうになって鼻をぎゅっとつまんだ。
向こうから見える訳ではないけど、心配させたくなかった。
『本当、今すぐ会いたいよ……』
お父さんはそう言ったあとひとしきり話すと突然言葉が途切れてしまった。
口は動いている。きちんと音声を拾えなかったのだろうか。口だけ動かし首を振る。何を言っているのかわからなかった。
『それじゃあ、もしこれが全部見られて僕達に会いたかったら、少し痩せてからおいで。ここはごはんが美味しくて太ってしまうからね』
お父さんの姿が消えていく。まだ全然聞きたいこと聞けてないよ。すがるように手を伸ばしたけれど、触れる事も叶わず消えてしまった。
ぼんやりとしながら竜魔道具を手に取る。もう一度と竜魔石に触れるが動かなかった。
「お父さん……」
「エマの父様、来るなって言ってたな」
「え? いつ?」
「口だけ動かしてた時だ。エマくるな。絶対に来ちゃだめだってずっと言ってた。これを作るとき誰かに聞かれたりしてたのかもしれないな」
「どういうこと?」
「会いにこさせようとしてるヤツの命令で作ったのか、判断が難しいけど。なんとか伝えたかったんじゃないのか。エマにさ」
「そんな……」
私は手に持った竜魔道具をぎゅっと抱きしめた。
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