92 / 135
第二章 赤の瞳と金の瞳
第92話 動かない
しおりを挟む
スピアーとブレイドは話があると言って二人で行ってしまったので私はお父さんからかもしれない竜魔道具の解析を始めた。
「どうやって動かすんだろう」
竜魔道具作りの師匠アルと一緒に悩んでいた。
ミリアから渡されたものだからとても怪しいけれど気になるので動かそうと決めてみたはいいけれど、コレ全然動かない。
「うーん。見た目は変わった形ですがただの竜魔道具に見えますね。でも竜魔石に触れても動かない。起動するのに何かが必要とか……」
「そうか! それだわ」
もし、これを作ったのがお父さんならこのブローチで。私は胸につけていたブローチを外しくっつけたりかざしたりしてみた。うん、動かない、どこにもはまらない。
うーん、うーんと二人で悩んでいるとフレイルとルニアがやってきた。
「エマ様、これ追加分。まだわかりませんか?」
「ありがとう、フレイル。そうなの。動いてくれなくて」
変化薬の追加を作って持ってきてくれた彼は薬を置くと私達の横にやってきてじぃっと見てきた。
「少し触らせてもらってもいいですか?」
「あ、うん。どうぞ」
今のところ何も動かないし、危なくはないだろうとフレイルに渡した。彼は確かめるようにくるくる回したり持ち上げて底を確かめたりしていた。
「エマ様」
「はい?」
「これ、動かしたいですか?」
「何、何? 何かわかったの?」
私は身を乗り出してフレイルに近付く。
「はい、ただですね」
「ただ?」
何かあるのだろうか。フレイルが、少し嫌そうな顔をしていた。
「エマ様、痛いことしても大丈夫ですか?」
…………え? 痛いってなに? 痛いって嫌だな。うん、痛い事しないと開かないなら諦めたほうがいいのかな。
「レイ、お前何言って」
「わー、ルニア姉様誤解です。誤解! でも、僕はその、エマ様にしたくないなぁって思って」
「何だ、言え」
「血です。ここに血を垂らして同じ血を持つ者にだけ反応するようになってるんですよ」
フレイルが指さしているのは何の為にあいているのかわからない穴だった。
「血……」
「その辺の刃物で切ったりして熱が出たりしたら僕が嫌なので、やってみたいと言うなら、僕が魔法で小さく傷をつけてすぐに薬で……。あぁ、でもやっぱりエマ様に傷をつけるなんて……」
「あの、フレイルやってもらっていいかな」
自傷はやれる気がしなくて、ルニアに任せたら怖い事が起きそうだし、アルは私が顔を向けると無理無理と首を振るだけだった。
「うぅ、なら。エマ様、ごめんなさい」
さっきまで、嫌そうにしていたフレイルは手を握ると恍惚の表情になっていた。私は後悔した。
そうだった。彼もまた、私を食べたい一人だった。
「行きます」
それでも、きちんと約束通りの小さな傷からプクリと血がたれてきたので竜魔道具にそれを垂らす。
すぐにフレイルは腰に下げていたいくつかの小瓶から一つ選んで傷口に塗った。
少ししみたけれど、効果はすぐにでていた。血が止まり、傷も消えていた。
「これで大丈夫ですね」
「ありがとう、フレイル」
「いえいえ、エマ様のお役に立てるなら」
フレイルは可愛い笑顔を浮かべる。これが大人の男性だったらきっと誰もが放ってはおかなかっただろう。
まあ、私は彼の大人の姿をしっかり見た事がないのでわからないけれど。
「竜魔石が光ってます」
アルが気がついた。
「本当だ。これは起動できるって合図なのかな」
「おそらく」
私は手のひらに乗るサイズのそれを持ち上げて、起動させた。
目の前に小さな人間が浮かび上がった。
「どうやって動かすんだろう」
竜魔道具作りの師匠アルと一緒に悩んでいた。
ミリアから渡されたものだからとても怪しいけれど気になるので動かそうと決めてみたはいいけれど、コレ全然動かない。
「うーん。見た目は変わった形ですがただの竜魔道具に見えますね。でも竜魔石に触れても動かない。起動するのに何かが必要とか……」
「そうか! それだわ」
もし、これを作ったのがお父さんならこのブローチで。私は胸につけていたブローチを外しくっつけたりかざしたりしてみた。うん、動かない、どこにもはまらない。
うーん、うーんと二人で悩んでいるとフレイルとルニアがやってきた。
「エマ様、これ追加分。まだわかりませんか?」
「ありがとう、フレイル。そうなの。動いてくれなくて」
変化薬の追加を作って持ってきてくれた彼は薬を置くと私達の横にやってきてじぃっと見てきた。
「少し触らせてもらってもいいですか?」
「あ、うん。どうぞ」
今のところ何も動かないし、危なくはないだろうとフレイルに渡した。彼は確かめるようにくるくる回したり持ち上げて底を確かめたりしていた。
「エマ様」
「はい?」
「これ、動かしたいですか?」
「何、何? 何かわかったの?」
私は身を乗り出してフレイルに近付く。
「はい、ただですね」
「ただ?」
何かあるのだろうか。フレイルが、少し嫌そうな顔をしていた。
「エマ様、痛いことしても大丈夫ですか?」
…………え? 痛いってなに? 痛いって嫌だな。うん、痛い事しないと開かないなら諦めたほうがいいのかな。
「レイ、お前何言って」
「わー、ルニア姉様誤解です。誤解! でも、僕はその、エマ様にしたくないなぁって思って」
「何だ、言え」
「血です。ここに血を垂らして同じ血を持つ者にだけ反応するようになってるんですよ」
フレイルが指さしているのは何の為にあいているのかわからない穴だった。
「血……」
「その辺の刃物で切ったりして熱が出たりしたら僕が嫌なので、やってみたいと言うなら、僕が魔法で小さく傷をつけてすぐに薬で……。あぁ、でもやっぱりエマ様に傷をつけるなんて……」
「あの、フレイルやってもらっていいかな」
自傷はやれる気がしなくて、ルニアに任せたら怖い事が起きそうだし、アルは私が顔を向けると無理無理と首を振るだけだった。
「うぅ、なら。エマ様、ごめんなさい」
さっきまで、嫌そうにしていたフレイルは手を握ると恍惚の表情になっていた。私は後悔した。
そうだった。彼もまた、私を食べたい一人だった。
「行きます」
それでも、きちんと約束通りの小さな傷からプクリと血がたれてきたので竜魔道具にそれを垂らす。
すぐにフレイルは腰に下げていたいくつかの小瓶から一つ選んで傷口に塗った。
少ししみたけれど、効果はすぐにでていた。血が止まり、傷も消えていた。
「これで大丈夫ですね」
「ありがとう、フレイル」
「いえいえ、エマ様のお役に立てるなら」
フレイルは可愛い笑顔を浮かべる。これが大人の男性だったらきっと誰もが放ってはおかなかっただろう。
まあ、私は彼の大人の姿をしっかり見た事がないのでわからないけれど。
「竜魔石が光ってます」
アルが気がついた。
「本当だ。これは起動できるって合図なのかな」
「おそらく」
私は手のひらに乗るサイズのそれを持ち上げて、起動させた。
目の前に小さな人間が浮かび上がった。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる