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第二章 赤の瞳と金の瞳
第92話 動かない
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スピアーとブレイドは話があると言って二人で行ってしまったので私はお父さんからかもしれない竜魔道具の解析を始めた。
「どうやって動かすんだろう」
竜魔道具作りの師匠アルと一緒に悩んでいた。
ミリアから渡されたものだからとても怪しいけれど気になるので動かそうと決めてみたはいいけれど、コレ全然動かない。
「うーん。見た目は変わった形ですがただの竜魔道具に見えますね。でも竜魔石に触れても動かない。起動するのに何かが必要とか……」
「そうか! それだわ」
もし、これを作ったのがお父さんならこのブローチで。私は胸につけていたブローチを外しくっつけたりかざしたりしてみた。うん、動かない、どこにもはまらない。
うーん、うーんと二人で悩んでいるとフレイルとルニアがやってきた。
「エマ様、これ追加分。まだわかりませんか?」
「ありがとう、フレイル。そうなの。動いてくれなくて」
変化薬の追加を作って持ってきてくれた彼は薬を置くと私達の横にやってきてじぃっと見てきた。
「少し触らせてもらってもいいですか?」
「あ、うん。どうぞ」
今のところ何も動かないし、危なくはないだろうとフレイルに渡した。彼は確かめるようにくるくる回したり持ち上げて底を確かめたりしていた。
「エマ様」
「はい?」
「これ、動かしたいですか?」
「何、何? 何かわかったの?」
私は身を乗り出してフレイルに近付く。
「はい、ただですね」
「ただ?」
何かあるのだろうか。フレイルが、少し嫌そうな顔をしていた。
「エマ様、痛いことしても大丈夫ですか?」
…………え? 痛いってなに? 痛いって嫌だな。うん、痛い事しないと開かないなら諦めたほうがいいのかな。
「レイ、お前何言って」
「わー、ルニア姉様誤解です。誤解! でも、僕はその、エマ様にしたくないなぁって思って」
「何だ、言え」
「血です。ここに血を垂らして同じ血を持つ者にだけ反応するようになってるんですよ」
フレイルが指さしているのは何の為にあいているのかわからない穴だった。
「血……」
「その辺の刃物で切ったりして熱が出たりしたら僕が嫌なので、やってみたいと言うなら、僕が魔法で小さく傷をつけてすぐに薬で……。あぁ、でもやっぱりエマ様に傷をつけるなんて……」
「あの、フレイルやってもらっていいかな」
自傷はやれる気がしなくて、ルニアに任せたら怖い事が起きそうだし、アルは私が顔を向けると無理無理と首を振るだけだった。
「うぅ、なら。エマ様、ごめんなさい」
さっきまで、嫌そうにしていたフレイルは手を握ると恍惚の表情になっていた。私は後悔した。
そうだった。彼もまた、私を食べたい一人だった。
「行きます」
それでも、きちんと約束通りの小さな傷からプクリと血がたれてきたので竜魔道具にそれを垂らす。
すぐにフレイルは腰に下げていたいくつかの小瓶から一つ選んで傷口に塗った。
少ししみたけれど、効果はすぐにでていた。血が止まり、傷も消えていた。
「これで大丈夫ですね」
「ありがとう、フレイル」
「いえいえ、エマ様のお役に立てるなら」
フレイルは可愛い笑顔を浮かべる。これが大人の男性だったらきっと誰もが放ってはおかなかっただろう。
まあ、私は彼の大人の姿をしっかり見た事がないのでわからないけれど。
「竜魔石が光ってます」
アルが気がついた。
「本当だ。これは起動できるって合図なのかな」
「おそらく」
私は手のひらに乗るサイズのそれを持ち上げて、起動させた。
目の前に小さな人間が浮かび上がった。
「どうやって動かすんだろう」
竜魔道具作りの師匠アルと一緒に悩んでいた。
ミリアから渡されたものだからとても怪しいけれど気になるので動かそうと決めてみたはいいけれど、コレ全然動かない。
「うーん。見た目は変わった形ですがただの竜魔道具に見えますね。でも竜魔石に触れても動かない。起動するのに何かが必要とか……」
「そうか! それだわ」
もし、これを作ったのがお父さんならこのブローチで。私は胸につけていたブローチを外しくっつけたりかざしたりしてみた。うん、動かない、どこにもはまらない。
うーん、うーんと二人で悩んでいるとフレイルとルニアがやってきた。
「エマ様、これ追加分。まだわかりませんか?」
「ありがとう、フレイル。そうなの。動いてくれなくて」
変化薬の追加を作って持ってきてくれた彼は薬を置くと私達の横にやってきてじぃっと見てきた。
「少し触らせてもらってもいいですか?」
「あ、うん。どうぞ」
今のところ何も動かないし、危なくはないだろうとフレイルに渡した。彼は確かめるようにくるくる回したり持ち上げて底を確かめたりしていた。
「エマ様」
「はい?」
「これ、動かしたいですか?」
「何、何? 何かわかったの?」
私は身を乗り出してフレイルに近付く。
「はい、ただですね」
「ただ?」
何かあるのだろうか。フレイルが、少し嫌そうな顔をしていた。
「エマ様、痛いことしても大丈夫ですか?」
…………え? 痛いってなに? 痛いって嫌だな。うん、痛い事しないと開かないなら諦めたほうがいいのかな。
「レイ、お前何言って」
「わー、ルニア姉様誤解です。誤解! でも、僕はその、エマ様にしたくないなぁって思って」
「何だ、言え」
「血です。ここに血を垂らして同じ血を持つ者にだけ反応するようになってるんですよ」
フレイルが指さしているのは何の為にあいているのかわからない穴だった。
「血……」
「その辺の刃物で切ったりして熱が出たりしたら僕が嫌なので、やってみたいと言うなら、僕が魔法で小さく傷をつけてすぐに薬で……。あぁ、でもやっぱりエマ様に傷をつけるなんて……」
「あの、フレイルやってもらっていいかな」
自傷はやれる気がしなくて、ルニアに任せたら怖い事が起きそうだし、アルは私が顔を向けると無理無理と首を振るだけだった。
「うぅ、なら。エマ様、ごめんなさい」
さっきまで、嫌そうにしていたフレイルは手を握ると恍惚の表情になっていた。私は後悔した。
そうだった。彼もまた、私を食べたい一人だった。
「行きます」
それでも、きちんと約束通りの小さな傷からプクリと血がたれてきたので竜魔道具にそれを垂らす。
すぐにフレイルは腰に下げていたいくつかの小瓶から一つ選んで傷口に塗った。
少ししみたけれど、効果はすぐにでていた。血が止まり、傷も消えていた。
「これで大丈夫ですね」
「ありがとう、フレイル」
「いえいえ、エマ様のお役に立てるなら」
フレイルは可愛い笑顔を浮かべる。これが大人の男性だったらきっと誰もが放ってはおかなかっただろう。
まあ、私は彼の大人の姿をしっかり見た事がないのでわからないけれど。
「竜魔石が光ってます」
アルが気がついた。
「本当だ。これは起動できるって合図なのかな」
「おそらく」
私は手のひらに乗るサイズのそれを持ち上げて、起動させた。
目の前に小さな人間が浮かび上がった。
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