痩せる決意をした聖女と食べてやると宣言する竜の王子〜婚約破棄されちゃったけど気になる人に愛されたいからダイエット頑張ります〜

花月夜れん

文字の大きさ
上 下
89 / 135
第二章 赤の瞳と金の瞳

第89話 何が怖いの?

しおりを挟む
「追い出されたぁぁぁぁ」
「それでわたしのとこに連れてこられたのか」
「う゛ん…………」

 話のあと、ブレイドがルニアの部屋に行ってほしいと言ってきた。
 ブレイドにも聞きたい事はいっぱいあったのに。
 皆が私に食べていいよって言ってくれたお菓子の袋を握りしめつつ、私はルニアの部屋で食べる、食べない、今日、明日、明日からと葛藤しながら一個一個と食べていく。

「なんで、急に追い出されるの?」
「あー、それも言ってくれてないのか」
「うん……。って、ほぁ!?」

 ルニアに抱えられる。まるで、仔猫のように持ち運ばれる。
 何、何がおきてるの。こっちは、ブレイドの部屋だ。

「おーい、ブレイド。忘れもんだ」

 ノックに反応して出てきたブレイドにぽいっとパスされる。
 私の扱いちょっと酷くない?
 ブレイド、すごく驚いた顔をしていたけれど、慌てながらもしっかり受け止めてくれてよかった。

「話せる時にちゃんと話しとけ。あとで話せなくなった時につらいぞ」

 じゃあ、とルニアは走って帰っていった。
 残された私はブレイドの顔をうかがう。なんだか苦しそう。

「あの、大丈夫?」
「あ、あぁ大丈夫。ボクもいきなりだった。ごめん」

 謝りながらゆっくりとおろしてくれた。
 私は地面に降り立つと同時にブレイドに聞いた。

「どうして、追い出すの。居てもいいって言ったのはブレイドなのにぃぃ」
「うん、ごめん。ボクが怖かったんだ」
「……怖かった?」
「うん。エマはボクが怖くないのかい?」
「怖い? 何が怖いの?」

 ブレイドは小さく笑いながら続けた。

「だって、食べられるかもしれないんだよ?」
「ん? それがなんでブレイドが怖いって事になるの?」
「ボクが過去のエマを食べたってスピアーは言っていたじゃないか」
「そうだね。でもさ、私はいまエマだし、ブレイドも食べたって言う竜じゃないんだよね」

 たじろぎながら彼は頷く。

「なら、怖がる必要ってあるのかな? だって、ブレイドは最初会った時から竜だったし、私に臭くて食べれないって言って、その次はどんな姿でも食べてやるって言って、――私食べられるのかわらなくない? 今さら、過去の私? が食べられましたって言われても、今だって食べてやるって宣言されてるんだから、何も変わらないよ」

 私はそう考えて、なんだかおかしくて笑ってしまった。
 そう、別に変わらない。過去に私だったらしい人がお願いして食べられた。だけど、それは私じゃないもの。

「ブレイドが好き。だから、何も怖くない」

 瘴気で終わりがくるなら、私も彼にお願いするのかな。
 でも、悲しませるのは嫌だな。

「ボクは怖い。エマがいなくなったら。エマを傷つけたら。エマを食べる事になったら……」

 私はブレイドに近付く。背の高い彼に届くように精いっぱい背のびした。
 もうちょっと痩せてから言うつもりだったのに好きって言ってしまった。もう、こうなれば言ってしまえ。

「ブレイド、大好きだよ。食べてくれるって言うあなたに戻ってください」

 少し久しぶりに私から口付けをした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

はずれのわたしで、ごめんなさい。

ふまさ
恋愛
 姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。  婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。  こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。  そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。

【完結】結婚初夜。離縁されたらおしまいなのに、夫が来る前に寝落ちしてしまいました

Kei.S
恋愛
結婚で王宮から逃げ出すことに成功した第五王女のシーラ。もし離縁されたら腹違いのお姉様たちに虐げられる生活に逆戻り……な状況で、夫が来る前にうっかり寝落ちしてしまった結婚初夜のお話

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜

川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。 前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。 恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。 だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。 そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。 「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」 レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。 実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。 女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。 過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。 二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

処理中です...