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第二章 赤の瞳と金の瞳
第88話 これからどうするか
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一段落ついたのか、スピアーがふぅーと大きく息を吐く。
途端に、フレイルが立ち上がった。
「いや、なんでだよ!! 僕が一番だった。嘘つくな、スピアー!!」
「嘘ちゃうわ! ぜーったいオレが一番やった」
「あー、あのぅ……」
真面目な話のはずなのに、スピアーとフレイルが一番の取り合いを始めてしまい、いまいち要領を得ないところで話が途切れてしまった。しかもところどころ難解というか聞き慣れない言葉があって理解が追いつき難い。
つまり、あれだよね。私達赤い瞳の聖女は力を使えば使うだけ死が早くなるってことでいいんだよね。
ブレイドにがっと腕を掴まれる。すごく焦った顔をしている。
「大丈夫だから、ほんと私は何も出てないからね?」
放っておくと横に控えるルニアもまた、私にむかってきて『秘技瞬間脱衣』を繰り出しそうな構えをしている。
いや、ほんとこんなとこで絶対やめてね?
「エマ、これ以上は――」
あ……、それより先の言葉は言われると困るな。私のいる意味がなくなってしまう。
「ブレイド、私途中で投げ出したりしたくない。残ってる人達はきちんとやりとげるよ。だから、止めないで欲しいな」
別にすぐ死ぬわけではなさそうだし、戻してもらえると信じて待ってる人達がいる。
今やってるのは瘴気の浄化とはまた違うことだから、未来だって違うものかもしれない。
それにしても、食べられてしまう未来がいよいよ実体を持ってきた。
しかも、昔のブレイド(?)はアメリアを食べてしまったあと自分で自分を焼いてしまったという衝撃的な話があった。
フレイルもそこは違うと訂正していないからそうなのかもしれない。
もし、私を食べる事になったら……。同じ様になってしまうのだろうか。出来れば彼にそうなって欲しくない。もしかして、アメリアはスピアーなら大丈夫かもと信じてお願いしたのかな。ブレイドには、お願いしなかったなんて――、これは私の勝手な想像だけれど。
「はい、ちゅーわけでなんか思い出したか? 二人とも」
聞かれて私は考えてみる。頭を動かすために焼き菓子を一つ口に放り込む。
うん、何も思い出せない。やっぱり、私アメリアじゃないのよ。私はエマだもの。昔何があったって言われたって、どうしようもないよ。
ブレイドを見てみる。彼は何か思い出せたのかな。
「…………何も」
視線を下にして、悩んでいた。
そもそも竜って生まれ変わりするんだよね?
ブレイドは、人間から産まれたんだよね。別人(竜)じゃないのかな。アメリアを食べた竜とは――。
「あー、やっぱダメかぁ。エマちゃんはどうや?」
「私、私は……。うん、何もわからないなぁ」
思い出してつらい過去なら思い出さないほうがいいのかもしれない。
「あ、そうだ。スピアー。話にダガーは出てきたけれど、クロウはいなかったの?」
「いや、あの時クロウなんておらんで」
「……そうなんだ」
クロウも私をアメリアと呼んでいた。彼もアメリアと何かあったのだろうか。なんだか、余計に話が見えなくなってしまったような、少し見えたような複雑な気分だ。
ミリアとクロウの事も何かわかるという事もなくて……。
うーんと頭を抱えてしまった。
途端に、フレイルが立ち上がった。
「いや、なんでだよ!! 僕が一番だった。嘘つくな、スピアー!!」
「嘘ちゃうわ! ぜーったいオレが一番やった」
「あー、あのぅ……」
真面目な話のはずなのに、スピアーとフレイルが一番の取り合いを始めてしまい、いまいち要領を得ないところで話が途切れてしまった。しかもところどころ難解というか聞き慣れない言葉があって理解が追いつき難い。
つまり、あれだよね。私達赤い瞳の聖女は力を使えば使うだけ死が早くなるってことでいいんだよね。
ブレイドにがっと腕を掴まれる。すごく焦った顔をしている。
「大丈夫だから、ほんと私は何も出てないからね?」
放っておくと横に控えるルニアもまた、私にむかってきて『秘技瞬間脱衣』を繰り出しそうな構えをしている。
いや、ほんとこんなとこで絶対やめてね?
「エマ、これ以上は――」
あ……、それより先の言葉は言われると困るな。私のいる意味がなくなってしまう。
「ブレイド、私途中で投げ出したりしたくない。残ってる人達はきちんとやりとげるよ。だから、止めないで欲しいな」
別にすぐ死ぬわけではなさそうだし、戻してもらえると信じて待ってる人達がいる。
今やってるのは瘴気の浄化とはまた違うことだから、未来だって違うものかもしれない。
それにしても、食べられてしまう未来がいよいよ実体を持ってきた。
しかも、昔のブレイド(?)はアメリアを食べてしまったあと自分で自分を焼いてしまったという衝撃的な話があった。
フレイルもそこは違うと訂正していないからそうなのかもしれない。
もし、私を食べる事になったら……。同じ様になってしまうのだろうか。出来れば彼にそうなって欲しくない。もしかして、アメリアはスピアーなら大丈夫かもと信じてお願いしたのかな。ブレイドには、お願いしなかったなんて――、これは私の勝手な想像だけれど。
「はい、ちゅーわけでなんか思い出したか? 二人とも」
聞かれて私は考えてみる。頭を動かすために焼き菓子を一つ口に放り込む。
うん、何も思い出せない。やっぱり、私アメリアじゃないのよ。私はエマだもの。昔何があったって言われたって、どうしようもないよ。
ブレイドを見てみる。彼は何か思い出せたのかな。
「…………何も」
視線を下にして、悩んでいた。
そもそも竜って生まれ変わりするんだよね?
ブレイドは、人間から産まれたんだよね。別人(竜)じゃないのかな。アメリアを食べた竜とは――。
「あー、やっぱダメかぁ。エマちゃんはどうや?」
「私、私は……。うん、何もわからないなぁ」
思い出してつらい過去なら思い出さないほうがいいのかもしれない。
「あ、そうだ。スピアー。話にダガーは出てきたけれど、クロウはいなかったの?」
「いや、あの時クロウなんておらんで」
「……そうなんだ」
クロウも私をアメリアと呼んでいた。彼もアメリアと何かあったのだろうか。なんだか、余計に話が見えなくなってしまったような、少し見えたような複雑な気分だ。
ミリアとクロウの事も何かわかるという事もなくて……。
うーんと頭を抱えてしまった。
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