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第二章 赤の瞳と金の瞳
第82話 アレは誰?(元婚約者の母視点)
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「違う、違うわ!!」
アレは私の可愛いラヴェルじゃない!!
部屋の中で私は悩んでいた。
少し前から息子、ラヴェルに違和感しか感じない。あれは私の息子ではない。
今日で確信を持った。急いで王に確認に行く。王はちょうど執務室にいた。
「あなた!!」
「どうした、妃よ。今は重要な……」
「もっと大事な事があるでしょう!! 私達の大切な宝物についてですよ!! まだお気付きになられていないのですか?」
王はペンを置き、こちらに視線を向けた。
「何のことだ?」
「ですから、ラヴェルの事です!! 気がついていないのですか!? 今居るアレはラヴェルではありません。ラヴェルの姿をした別人です! はやく、本物のラヴェルを探して下さい!」
私は王に必死に訴える。
いつものラヴェルなら、二人きりの時私の事を母様とは呼ばない。名前で呼んでくれるのだ。サラ母様と……。
ラヴェルが幼い頃に私がお願いしたのだ。名前で呼んで欲しいと。どんな時だって、妃、王妃ではなくサラと呼んでくれる人が欲しかった。そしてラヴェルは答えてくれていた。
「あの子がどこかで苦しんでいるとしたら、私の心は破裂してしまいます。小さな頃から愛を注ぎ続け大切に育ててきたのに……お願いします。探して!!」
王はゆっくりとまぶたをとじた。そして、目を開けたかと思えばペンを拾い上げまた仕事に戻っていった。
「あなた!?」
「ラヴェルはここにいるではないか。疲れているのではないか? 何が別人だと思わせる。そのような事を言ってラヴェルを傷つけるとは思わないのか?」
「――――っ!!」
父親なら、同じ様に違和感を持ってくれると信じていた。なのに、王はアレをラヴェルだという。
「……失礼しました」
王の執務室から出て走り出す。王は頼りにならない。私が見つけるしかない。
部屋に戻り、鏡台の小物をしまっている場所を開く。
一度だけ探し人を見つける事が出来るという竜魔石を隠し持っているたくさんの宝石の中から取り出す。嫁入り時に父からいただいたいくつかの竜魔石。王族ともなれば誘拐などもあるだろうと渡されていた特殊な魔法の使える石。
「お願い、あの子を。本物のラヴェルを探して!」
竜魔石から煙のようなものがふわりと伸びて窓の外へと伸びていく。窓を開けると煙は王子がいるはずの場所とは違う場所へと伸びていった。
「ほら、やっぱり違うのよ」
私は急いで外出の準備をする。どうせ、私が出ても誰も心配などしないのだもの。
アレは会いに行けば会ってくれるけれど会いにはこなかった。
きっと私に正体がバレないようにと思ったのでしょう。
「私の可愛いラヴェルは私が守るの」
あの子に相応しい嫁を探し、あの子の嫌がる娘を消す手伝いをし……あとはもう少しであの子を王にする事が出来る手はずだった。王は突然復帰すると言い出し、アレが頷きさえしなければ――――!
「待っていてラヴェル。今母が行きます」
あの子は私の言うことをきちんと聞いてくれる大切なお人形さんだもの。
アレは私の可愛いラヴェルじゃない!!
部屋の中で私は悩んでいた。
少し前から息子、ラヴェルに違和感しか感じない。あれは私の息子ではない。
今日で確信を持った。急いで王に確認に行く。王はちょうど執務室にいた。
「あなた!!」
「どうした、妃よ。今は重要な……」
「もっと大事な事があるでしょう!! 私達の大切な宝物についてですよ!! まだお気付きになられていないのですか?」
王はペンを置き、こちらに視線を向けた。
「何のことだ?」
「ですから、ラヴェルの事です!! 気がついていないのですか!? 今居るアレはラヴェルではありません。ラヴェルの姿をした別人です! はやく、本物のラヴェルを探して下さい!」
私は王に必死に訴える。
いつものラヴェルなら、二人きりの時私の事を母様とは呼ばない。名前で呼んでくれるのだ。サラ母様と……。
ラヴェルが幼い頃に私がお願いしたのだ。名前で呼んで欲しいと。どんな時だって、妃、王妃ではなくサラと呼んでくれる人が欲しかった。そしてラヴェルは答えてくれていた。
「あの子がどこかで苦しんでいるとしたら、私の心は破裂してしまいます。小さな頃から愛を注ぎ続け大切に育ててきたのに……お願いします。探して!!」
王はゆっくりとまぶたをとじた。そして、目を開けたかと思えばペンを拾い上げまた仕事に戻っていった。
「あなた!?」
「ラヴェルはここにいるではないか。疲れているのではないか? 何が別人だと思わせる。そのような事を言ってラヴェルを傷つけるとは思わないのか?」
「――――っ!!」
父親なら、同じ様に違和感を持ってくれると信じていた。なのに、王はアレをラヴェルだという。
「……失礼しました」
王の執務室から出て走り出す。王は頼りにならない。私が見つけるしかない。
部屋に戻り、鏡台の小物をしまっている場所を開く。
一度だけ探し人を見つける事が出来るという竜魔石を隠し持っているたくさんの宝石の中から取り出す。嫁入り時に父からいただいたいくつかの竜魔石。王族ともなれば誘拐などもあるだろうと渡されていた特殊な魔法の使える石。
「お願い、あの子を。本物のラヴェルを探して!」
竜魔石から煙のようなものがふわりと伸びて窓の外へと伸びていく。窓を開けると煙は王子がいるはずの場所とは違う場所へと伸びていった。
「ほら、やっぱり違うのよ」
私は急いで外出の準備をする。どうせ、私が出ても誰も心配などしないのだもの。
アレは会いに行けば会ってくれるけれど会いにはこなかった。
きっと私に正体がバレないようにと思ったのでしょう。
「私の可愛いラヴェルは私が守るの」
あの子に相応しい嫁を探し、あの子の嫌がる娘を消す手伝いをし……あとはもう少しであの子を王にする事が出来る手はずだった。王は突然復帰すると言い出し、アレが頷きさえしなければ――――!
「待っていてラヴェル。今母が行きます」
あの子は私の言うことをきちんと聞いてくれる大切なお人形さんだもの。
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