痩せる決意をした聖女と食べてやると宣言する竜の王子〜婚約破棄されちゃったけど気になる人に愛されたいからダイエット頑張ります〜

花月夜れん

文字の大きさ
上 下
79 / 135
第二章 赤の瞳と金の瞳

第79話 柔らかさ親指二本分

しおりを挟む
 今日はブレイドとスピアーも一緒にできるみたい。それと、フレイルまでいる。

「エマ様の好みの男性はやはりそれなりの体格でなければならないのですね。あぁ、生まれ変わりなんてするんじゃなかったなぁ。子どもの姿からやり直しとか……。なんとか元に戻る薬を発明しないとなぁ」

 それまでに基礎体力だけでもあげておこうとフレイルは気合を入れていた。
 いつ、誰がそんなこと言ったのかな?
 たぶん、言った本人ルニアを見ると「さぁ、始めるぞー!!」とにこやかだ。
 血は繋がってないけど久しぶりに会えたフレイルと一緒に鍛錬できるのが嬉しいのかな。そういえばルニアをここに留めてしまったけれど、彼女にも家族がいるんじゃないか。もしかして、向こうで悪いようにされてたりしないだろうか。聞いてあげたほうがいいのかな。

「ほら、エマ!! まずは柔軟だ」
「はい!!」
「よし、はじめの頃に比べてだいぶ体が柔らかくなってきたな」
「ありがとうございます!」

 最初はもう腹筋、親指一本分も頭が上がらない。背筋、親指一本分も顎が上がらない。前屈、足の指先タッチ? 無理無理。めちゃくちゃ遠いわ!! だったもんなぁ……。
 毎日少しずつでも頑張る事で、体の柔らかさはしっかり変化するみたい。
 まあ、まだ親指二本分進んだだけだけどね!!

「お疲れ様です。エマ様」

 フレイルがお水を持ってきてくれた。

「ありがとう、フレイル」

 子どもらしい可愛い笑顔は見ててほっこりしてしまう。
 少し動いただけでけっこう汗をかいてしまったので水分はしっかりとらないとね。ありがたく持ってきてくれたお水をもらいゴクリと飲み干す。
 気のせいか、フレイルの口がにやりと弧を描く。
 水なのになんだか、甘い?

「っ!? レイ、こら!! 何飲ませてるんだ!?」

 え、お水だよね? 何でルニアびっくりしてるの?
 そういえば、なんだか視界がぐるぐるまわるような……。

「やだなぁ、ルニア姉様。ちゃんと自分で安全確認はしてますよ?」

 フレイルのそんな言葉が耳に入ってきた。

「エマ、こっちの水をはやく!!」

 えっと、なんだか勢いが怖いんですけど――。渡されるままとりあえず水を流し込む。
 少ししてぐるぐるまわるのは治まった。

「いったい、何だったの?」

 皆が私を見てくる。え、何? そんなに見られると照れてしまう。

「「「あーーーーーーっ!」」」

 え、だから何なの? 一斉に叫ばれても何なのかわからない。

「エマ、瞳の色が」

 ブレイドに言われ、私は残ってる水に自分を映す。
 うーん、わからない。

「瞳の色が何?」
「またボクと同じ色になってる」
「え?」
「いや、ブレイド! それだけやないやろ!! エマちゃんがまた細くなっとる!!」
「え?」

 いやいや、ちゃんとお肉はありますよ? ここに……。
 ぷにぷにと自分のお腹を確かめる。あれ、なんか変だ。
 見える情報と触れる情報が一致しない。お肉がある場所に何も見えない。いったいどういうこと?

「あーあ、薄まっちゃったかぁ。せっかく理想の体になれる薬(時間限定)だったのに。エマ様のその様子じゃ、視覚だけになってるようですね。でも、悪くなさそうな結果です。瞳の色が変わったのはもしかして赤い瞳が嫌だったからですか?」
「あ、あのぉ」

 どう反応すればいいのかわからない。私はフレイルの作った薬の実験台にされたって認識で合ってるのかな?

「レーイーーー!!」

 そして、ルニアが怒ってる。すごくすごく怒ってる。
 何も考えず飲んでしまった私のせいでもあるような気がするけれど……。うん、怒るのはお姉さんのルニアに任せよう。
 ルニアがフレイルをつかみ上げようとした時、ブレイドとスピアーが私に覆い被さってきた。
 何が、何でっ!?
 次の瞬間、天井があるはずの場所から空が見えた。冷たい風が一気に入りこんでくる。

「驚きました。瘴気の中でも生活を続ける人達が、いらっしゃるなんて……」

 優しさと冷たさが混在する女の人の声が響く。
 空から、また人が降ってきた。しかも二人も……。
 何なの、空から人が降ってくるのが最近の流行りなの!?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

なにをおっしゃいますやら

基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。 エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。 微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。 エブリシアは苦笑した。 今日までなのだから。 今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

【完結】結婚初夜。離縁されたらおしまいなのに、夫が来る前に寝落ちしてしまいました

Kei.S
恋愛
結婚で王宮から逃げ出すことに成功した第五王女のシーラ。もし離縁されたら腹違いのお姉様たちに虐げられる生活に逆戻り……な状況で、夫が来る前にうっかり寝落ちしてしまった結婚初夜のお話

もう、愛はいりませんから

さくたろう
恋愛
 ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。  王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。

処理中です...