痩せる決意をした聖女と食べてやると宣言する竜の王子〜婚約破棄されちゃったけど気になる人に愛されたいからダイエット頑張ります〜

花月夜れん

文字の大きさ
上 下
56 / 135
第一章 聖女と竜

第56話 もう一つの連絡先

しおりを挟む
「ここ!! ここに触ってないよな!?」
「たぶん……?」

 持っていた物をルニアに取られた。さっきまでタネシスがあれで元婚約者に連絡を取っていたそうだ。
 あ、タネシスは助けた私兵団の人。狼男から元にもどせば焦茶色の髪の年上お兄さんだった。

「あの、オレ帰れるんでしょうか」
「あー、そうだな。急いだ方がいいかも」
「え、どうしてですか?」

 ルニアが私を見る。タネシスも一緒になって。何、私の顔になにかついてる?
 芝居に使った洗濯物やご飯の片付けを進めながら私は顔を触って確かめる。何もついてないけど?
 ブレイドが大きくなった竜になった時に本気でタネシスが驚いて大声が出たときに何かこぼしたかもしれない。
 服も念入りに確かめたけれど何もついていない。

「送るのはスピアーとわたしでいいか?」
「は、何でや」
「え、この人がどうやって?」

 知ってる私達にはわかることだけど、スピアーの背に乗っていくつもりみたい。ん、でもまって? スピアーが完全竜の形態って小さくて丸い……。翼だけの姿で両わきに抱えて? 前と後ろに掴まって? なんだかすごくシュールな感じの想像しか浮かばない。ブレイドではどうしてダメなんだろう?

「いいから、行くぞ」

 すごい勢いでルニアに二人は連れて行かれた。
 大の男二人を引きずって連れていける騎士団団長の強さに改めてすごいと思いつつ、理由がわからないまま置いていかれ私は手をルニアのいた方にむけたまま下げられずにいた。

「ボクが連続で国をあけるのを避けてくれたのかな」

 ブレイドがそう言って、腑に落ちる。そうだ、この国をいま守ってるのはブレイドだ。

「スピアーって手伝ってくれるのかな?」
「……なんだかんだ言って、アイツスピアーはエマの為になるなら動いてくれるよ」
「何でそんなことがわかるの?」
「…………何でだろう。ただそんな気がしたんだ」

 自分でも何故かわからないというようにブレイドは笑っていた。

 ◇

 次の日の朝、二人は戻ってきた。
 かなり慌てて……。

「エマ!! ハヘラータに一度戻れるか」
「え……」

 今日はダイエットは? 昨日もサボったよね。だから、今日はしごかれると覚悟をしていたのだけれど。そのために動きやすい服装も選んでいたんだけれど。

「ハヘラータに戻る?」

 それは逆効果ではないでしょうか。またストレスで太ってしまうと思うのですが。
 あ、でもルニアは「一度」って言ってるからここに帰ってこれるんだよね。

「王からの要請なんだ……」
「王様?」

 ルニアの手に昨日みた連絡用竜魔道具に似た物が握られている。

「黙っててごめん。わたしは王のめいで動いていたんだ。詳しくは後で話すから来てくれないか」

 ルニアが王という人間は、私を追い出した王子の父親の事だろう。ハヘラータ現国王の命令。あの日、ルニアは私の事を心配して駆けつけてくれたわけじゃなかったの?
 わからない事だらけだったけど、ルニアが居てくれたから私はいまここにいられるんだ。これだけは間違いなく事実だから、――恩返ししないと。

「わかった。でもちゃんと説明してね」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

はずれのわたしで、ごめんなさい。

ふまさ
恋愛
 姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。  婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。  こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。  そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

攻略対象の王子様は放置されました

白生荼汰
恋愛
……前回と違う。 お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。 今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。 小説家になろうにも投稿してます。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜

川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。 前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。 恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。 だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。 そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。 「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」 レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。 実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。 女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。 過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。 二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

処理中です...