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第一章 聖女と竜
第49話 竜の王子の敗北感(ブレイド視点)
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「今の話を聞いてどう思った?」
この状況はボクの責任だと言う事を伝えた。だから、やっぱりここにいるのはやめておきますと言われたってしょうがないと思った。けど、どこかで期待していた。エマは優しいからきっとボクたちを捨てたりしない。勝手なのはわかってる。
顔を上げたエマの頬は赤く、瞳は潤んでいた。いつものエマとは全然ちがった表情。いや、見た事ある? そう、食べ物を見る時のエマの顔だ。
手が伸びてきて、ボクは食べられた。でも全然力が入ってなくて軽く唇に口があたっただけだった。
ボクはそれの答え方がわからなくて、同じ様にエマの顔に手を添えて唇を交わす。
どうしてだろう。自然とそうしていた。
少しの間そうした後、彼女は唇を離す。ふらりと首を傾げると可愛い笑顔を浮かべた。
「ブレイド、ありがとうー。美味しいねー」
「え、えっと」
ボクが美味しい? いったいどういう意味だろう。答えに困っているとエマの可愛い笑顔がもっと可愛い笑顔になった。
「でも、この前食べたお肉の方がもっと美味しいかなー」
「……えっと、エマ?」
ショックだった。ボクは肉に負けるのか……。敗北感を味わっていると彼女はフラフラしたままソファに倒れる。
「エマ!? エマッ!?」
そうだ。今日は倒れていなかったから油断していた。エマは今日、浄化もして人に戻す力も使っていたんだった。
ボクは慌ててエマを抱き上げる。最初の頃からは考えられないぐらい軽くて小さくなった彼女。
「ルニア! シル!」
どちらかは近くにいるだろうと廊下に出て声をあげる。予想通りルニアがリリーとともに顔を出した。
「どうした? ブレイド」
「どうしました? ブレイド様」
「エマが急に倒れてしまった。ボクが無理をさせてしまったんだろうか」
ルニアが近寄ってきてエマをのぞきこむ。そして、思いっきり笑いだした。
「無理させたって何したんだよ? ブレイド」
「そ、それは……」
いや、口付けはしたけれどあれはエマからで……。違う違う。そっちじゃなくて、今日の浄化の話を。
「ブレイド様、エマ様はもしかしてお酒に酔われておりませんか?」
「え?」
「頬が赤くなっておりますし、よく眠っておいでですけれど」
「でも、酒なんてあそこには」
あそこに置いてあったのはリリーが用意してくれていたお菓子と飲み物だけだった。
「もしかして、香り付けにいれたアレで?」
「リリー、なにか思い当たるのか?」
「ほんの少し、紅茶に香り付けのお酒をいれました。アルコールはとばしているはずなんですけれど」
エマは確かにあの飲み物を飲んでから顔が赤くなっていた。
まさか、ほんの少しでも?
「あー、それだろうな」
ルニアは楽しそうに笑いながらエマの顔を伸ばして遊んでいる。大事な人なのではないのか? この二人の関係もいまいち測りかねる。
「まあ、寝かせておけばいいだろ」
「そうか……。そうだな」
「寝台の用意をしてきますね」
「あ、あぁ……」
大事な話の途中でこんな事になるとは、調子が狂いっぱなしだ。次はお酒を抜いて話そう。
「あぁ、そうだ……」
ボクはある事を思い出す。
この状況はボクの責任だと言う事を伝えた。だから、やっぱりここにいるのはやめておきますと言われたってしょうがないと思った。けど、どこかで期待していた。エマは優しいからきっとボクたちを捨てたりしない。勝手なのはわかってる。
顔を上げたエマの頬は赤く、瞳は潤んでいた。いつものエマとは全然ちがった表情。いや、見た事ある? そう、食べ物を見る時のエマの顔だ。
手が伸びてきて、ボクは食べられた。でも全然力が入ってなくて軽く唇に口があたっただけだった。
ボクはそれの答え方がわからなくて、同じ様にエマの顔に手を添えて唇を交わす。
どうしてだろう。自然とそうしていた。
少しの間そうした後、彼女は唇を離す。ふらりと首を傾げると可愛い笑顔を浮かべた。
「ブレイド、ありがとうー。美味しいねー」
「え、えっと」
ボクが美味しい? いったいどういう意味だろう。答えに困っているとエマの可愛い笑顔がもっと可愛い笑顔になった。
「でも、この前食べたお肉の方がもっと美味しいかなー」
「……えっと、エマ?」
ショックだった。ボクは肉に負けるのか……。敗北感を味わっていると彼女はフラフラしたままソファに倒れる。
「エマ!? エマッ!?」
そうだ。今日は倒れていなかったから油断していた。エマは今日、浄化もして人に戻す力も使っていたんだった。
ボクは慌ててエマを抱き上げる。最初の頃からは考えられないぐらい軽くて小さくなった彼女。
「ルニア! シル!」
どちらかは近くにいるだろうと廊下に出て声をあげる。予想通りルニアがリリーとともに顔を出した。
「どうした? ブレイド」
「どうしました? ブレイド様」
「エマが急に倒れてしまった。ボクが無理をさせてしまったんだろうか」
ルニアが近寄ってきてエマをのぞきこむ。そして、思いっきり笑いだした。
「無理させたって何したんだよ? ブレイド」
「そ、それは……」
いや、口付けはしたけれどあれはエマからで……。違う違う。そっちじゃなくて、今日の浄化の話を。
「ブレイド様、エマ様はもしかしてお酒に酔われておりませんか?」
「え?」
「頬が赤くなっておりますし、よく眠っておいでですけれど」
「でも、酒なんてあそこには」
あそこに置いてあったのはリリーが用意してくれていたお菓子と飲み物だけだった。
「もしかして、香り付けにいれたアレで?」
「リリー、なにか思い当たるのか?」
「ほんの少し、紅茶に香り付けのお酒をいれました。アルコールはとばしているはずなんですけれど」
エマは確かにあの飲み物を飲んでから顔が赤くなっていた。
まさか、ほんの少しでも?
「あー、それだろうな」
ルニアは楽しそうに笑いながらエマの顔を伸ばして遊んでいる。大事な人なのではないのか? この二人の関係もいまいち測りかねる。
「まあ、寝かせておけばいいだろ」
「そうか……。そうだな」
「寝台の用意をしてきますね」
「あ、あぁ……」
大事な話の途中でこんな事になるとは、調子が狂いっぱなしだ。次はお酒を抜いて話そう。
「あぁ、そうだ……」
ボクはある事を思い出す。
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