痩せる決意をした聖女と食べてやると宣言する竜の王子〜婚約破棄されちゃったけど気になる人に愛されたいからダイエット頑張ります〜

花月夜れん

文字の大きさ
上 下
47 / 135
第一章 聖女と竜

第47話 いつかは言ってない

しおりを挟む
 静かな時間が流れる。短いような長いような。
 頭の中で私はすごい勢いで駆け回っていたのだけど。
 どどどどどどど、どう答えたらいいのっ!? ヤダって言ったらどうなるんだろう。ブレイドがダイエット手伝ったりしてくれるのだって美味しくなるようにでだもの……。
 はっ、そうだ。ダイエットするって言っておいてお菓子食べてるから怒ってる? あぁ、最初の時にきちんと食べるのお断りしていれば……。
 すぅっと息を吸って笑って見せる。少し引きつっている気がするけれど。

「もちろん。その時がくれば食べてね」

 いつを言わずに誤魔化してみる。今じゃないのよ。そうまだ、まだその時じゃないの。……ただ問題の後回しをしただけなのはわかってる。
 ブレイド、なんだか笑ってませんか? 私の気のせい?

「――――その時がこないで欲しいな」

 小さな小さな声がそう言った。聞き間違い? 聞きたいけれどブレイドはあっちを向いてしまっている。とりあえず、今すぐ食べられる事は回避できたのかしら。
 スカートのひだを手でおさえ座りなおす。ふぅと一息はいて姿勢を整えた。

「お話って私がそろそろ食べられるかどうかの確認だったんですか?」
「あぁ、ごめん。違うんだ。ボクの話をしたくて。エマの話はルニアからある程度聞いているけれどボクの話はしてないからその、ボクの事知りたいって言っただろ?」
「うん。言った。でも、えっと、私の話を聞いてる?」

 ルニアからいったいどんな情報がブレイドに流れているのか。話すなって言っておいたのに、まさか私の気持ちまで面白おかしく伝わってない!?
 頑張って続けていた笑顔がだんだん崩れていくのがわかる。顔を突っ伏して寝てしまおうかしら。

「聞いてる。国を追い出された事や婚約者から婚約を破棄されたことや、聖女の仕事をしていたこと」

 ひとまず、おかしな事は言ってなさそうで笑顔をなんとか保てた。次の一言までは。

「ボクにはやく食べてもらいたいって言ってる事」

 ルニア……、ルニアー!?
 食べられると困るんだって、一緒にいられないよ!? 応援してるの、してないの? いったいどういうつもりで!!

「この国では瘴気の事はボクがするから、エマは無理しなくていいからね」
「ありがとう。でもブレイドも無理はしないで頼ってね」

 違う、今はそこじゃないと思いつつ私は頷く。

「それでエマのことを聞いてばかりだと、不公平かなと思ってさ。ボクの事知っておいて欲しい事があるんだ。ルニアじゃなくて、エマに聞いて欲しい」
「私に? どうして?」

 ルニアに話せば私にも届くのは、わかってるだろうに。
 直接私にということは、どういうことだろう?

「あまり他人に聞かれたくない話もあるからさ」

 あの、私も他人では? よくわからないけれど、私にだけ話したい事があるでいいのかな。それって、期待してもいいのかな。私の事を少しくらいは信頼してくれてるって思っても。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

望まれない結婚〜相手は前妻を忘れられない初恋の人でした

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【忘れるな、憎い君と結婚するのは亡き妻の遺言だということを】 男爵家令嬢、ジェニファーは薄幸な少女だった。両親を早くに亡くし、意地悪な叔母と叔父に育てられた彼女には忘れられない初恋があった。それは少女時代、病弱な従姉妹の話し相手として滞在した避暑地で偶然出会った少年。年が近かった2人は頻繁に会っては楽しい日々を過ごしているうちに、ジェニファーは少年に好意を抱くようになっていった。 少年に恋したジェニファーは今の生活が長く続くことを祈った。 けれど従姉妹の体調が悪化し、遠くの病院に入院することになり、ジェニファーの役目は終わった。 少年に別れを告げる事もできずに、元の生活に戻ることになってしまったのだ。 それから十数年の時が流れ、音信不通になっていた従姉妹が自分の初恋の男性と結婚したことを知る。その事実にショックを受けたものの、ジェニファーは2人の結婚を心から祝うことにした。 その2年後、従姉妹は病で亡くなってしまう。それから1年の歳月が流れ、突然彼から求婚状が届けられた。ずっと彼のことが忘れられなかったジェニファーは、喜んで後妻に入ることにしたのだが……。 そこには残酷な現実が待っていた―― *他サイトでも投稿中

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜

川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。 前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。 恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。 だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。 そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。 「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」 レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。 実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。 女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。 過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。 二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】

雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。 誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。 ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。 彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。 ※読んでくださりありがとうございます。 ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。

処理中です...