8 / 135
第一章 聖女と竜
第8話 聖女の世話役は戸惑う(世話役視点)
しおりを挟む
◆
聖女がお代わりになりました。それはそれは驚くほどあっけなく。
初日は何事もなく終わる事ができホッと胸をなでおろしました。運良く忙しくない一日だったのです。
そして二日目の朝がまいりました。
「さすが、私が見初めただけある。すごいよ。今日も頑張ってくれ」
「はい、おまかせください。貴方様のためですもの」
目の前でいちゃい……仲睦まじい会話をされているのは新しい聖女といずれこの国を背負って立つ王子でございます。
ここは聖女が休むためにある部屋。瘴気が溢れ出し始めるまではここで日常生活を送ることになります。私はこの部屋のお世話役でございます。
以前こちらにいらっしゃったエマ様はこの二人に追い出されました。少しふt……いえふくよかなあの方はそれ以外は気になるような点はなく、優しくほがらかで可愛らしいお方でした。ただ、祈りの後は決まってものすごく食べていらっしゃいました。最初は気にならないほどだったのが年々増えていき、このままではお体に障ると思ってはいました。けれど、王子からは何も言われず、ただただ祈り、食べるを繰り返す日々でございました。
「良かったですね。今日も朝から来てくださって」
「当たり前でしょう? 私は未来の王妃よ」
私は愛想笑いを浮かべます。エマ様は本当に可哀想な。このように毎日王子が感謝や激励を述べておられれば少しは違ったかもしれませんのに。
さて、今日も仕事が始まります。まずは祈りの前のおきよめから――。
ドンドンドンッ
扉が大きな音をたてています。いったい何事が起こったのでしょう。
「聖女様、浄化をお願い致しますっ!! 瘴気の噴き出しがはじまりました」
いつもよりはやいソレでした。ですが慌てたりはいたしません。たまにあることなのですから。エマ様ならばすぐに駆けつけて浄化し朝のルーティンに戻られます。
あの人よりもすごい聖女だとうかがっておりますゆえ。もっと簡単に終わらせてしまうことでしょう。
「お聞きの通りです。お願い致します」
「えー、昨日浄化したばかりじゃない!!」
この方は何を言っているのでしょうか。毎日瘴気は噴き出してくるものです。はやく対処をしなければ大変なことになってしまうと知っているでしょうに。
「二日連続なんて、信じられなぁーい!」
二日連続? 毎日ですよ? いつ始まる、何度来るかなど決まっていないのですから。多い時は一日に何度も噴き出したりしますよ? 本当に何を言っているのでしょうか。
「さあ、行きましょう」
何かの癖なのでしょうか。聖女は右手の親指の爪を噛みカリカリと音をさせています。
彼女は本当にエマ様よりもすごい聖女なのでしょうか?
ブツブツと呟くその言葉に私は一抹の不安を覚えます。
「……名簿にも載らない野良女がやってる位だから苦もなく出来るって聞いてたのに……なんなの……」
◇
聖女がお代わりになりました。それはそれは驚くほどあっけなく。
初日は何事もなく終わる事ができホッと胸をなでおろしました。運良く忙しくない一日だったのです。
そして二日目の朝がまいりました。
「さすが、私が見初めただけある。すごいよ。今日も頑張ってくれ」
「はい、おまかせください。貴方様のためですもの」
目の前でいちゃい……仲睦まじい会話をされているのは新しい聖女といずれこの国を背負って立つ王子でございます。
ここは聖女が休むためにある部屋。瘴気が溢れ出し始めるまではここで日常生活を送ることになります。私はこの部屋のお世話役でございます。
以前こちらにいらっしゃったエマ様はこの二人に追い出されました。少しふt……いえふくよかなあの方はそれ以外は気になるような点はなく、優しくほがらかで可愛らしいお方でした。ただ、祈りの後は決まってものすごく食べていらっしゃいました。最初は気にならないほどだったのが年々増えていき、このままではお体に障ると思ってはいました。けれど、王子からは何も言われず、ただただ祈り、食べるを繰り返す日々でございました。
「良かったですね。今日も朝から来てくださって」
「当たり前でしょう? 私は未来の王妃よ」
私は愛想笑いを浮かべます。エマ様は本当に可哀想な。このように毎日王子が感謝や激励を述べておられれば少しは違ったかもしれませんのに。
さて、今日も仕事が始まります。まずは祈りの前のおきよめから――。
ドンドンドンッ
扉が大きな音をたてています。いったい何事が起こったのでしょう。
「聖女様、浄化をお願い致しますっ!! 瘴気の噴き出しがはじまりました」
いつもよりはやいソレでした。ですが慌てたりはいたしません。たまにあることなのですから。エマ様ならばすぐに駆けつけて浄化し朝のルーティンに戻られます。
あの人よりもすごい聖女だとうかがっておりますゆえ。もっと簡単に終わらせてしまうことでしょう。
「お聞きの通りです。お願い致します」
「えー、昨日浄化したばかりじゃない!!」
この方は何を言っているのでしょうか。毎日瘴気は噴き出してくるものです。はやく対処をしなければ大変なことになってしまうと知っているでしょうに。
「二日連続なんて、信じられなぁーい!」
二日連続? 毎日ですよ? いつ始まる、何度来るかなど決まっていないのですから。多い時は一日に何度も噴き出したりしますよ? 本当に何を言っているのでしょうか。
「さあ、行きましょう」
何かの癖なのでしょうか。聖女は右手の親指の爪を噛みカリカリと音をさせています。
彼女は本当にエマ様よりもすごい聖女なのでしょうか?
ブツブツと呟くその言葉に私は一抹の不安を覚えます。
「……名簿にも載らない野良女がやってる位だから苦もなく出来るって聞いてたのに……なんなの……」
◇
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
44
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる