ネカマの僕はネナベの彼女に恋をする。

花月夜れん

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第1章「ゲームとリアル」

トレード

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 落ち着け、僕。キョロキョロと右左を確認する。完全に挙動不審だ。

「あれ、なんで私、リアルの姿に?」

 アイツもどうやらカメラ視点を俯瞰にして確認したようだ。

「じゃあ、もしかして君が柚子ちゃんなの?」

 止めてくれ!! 僕は、僕はっ! 香月悠太だ。柚子はこんな変態じゃない!

 カチャンと音がする。アイツの鎧が身体に合わず大きくてあちこちがぶつかっているようだ。

「ねえ、柚子ちゃん」
「何だよ……」
「私、男物か鎧しか持ってないから、服交換しない?」
「……わかった」

 アイテムトレードは出来るようだ。持っている女物の服を適当に見繕ってアイツに投げた。
 アイツからは、かなり努力しないと出来ないような装備が送られてきた。
 ヤバいな……。本気で作ってるヤツだ。

 衣裳交換のボタンをタップして装備する。羽根の様に軽くそれでいて頑丈な特殊金属でできた神装備だ。カッコいいな……。

「うーん、これ着ちゃっていいの?」

 コクリと僕は頷く。

 ブゥンと電子音とともに、柚子の可愛い衣裳をきた女子が目の前に立った。
 ゆるくパーマがかかっているブラウンに染めた髪を手でかきあげる。

「君、名前は?」

 僕は――。

「私は一条鳴海いちじょうなるみ。マクスウェルの中の人よ。で、君は?」
「僕は悠太。香月悠太」
「ふぅん」

 じろじろとアイツは此方を遠慮なく見てくる。止めてくれ。

「一緒だったんだねぇ」

 は? 何のことだ?

「性別、逆転w」
「別にいいだろ」

 プッと鳴海と名乗った彼女は吹き出した。

「ねえ、悠太君。一緒に街まで行こうか」

 スッと、いい匂いが近づいてくる。

「他にも誰かこの現象になってるかも知れない」
「そうかも知れないが――」
「ユーティ様も巻き込まれてるかもしれないし」

 あぁ、絶賛ここで巻き込まれてるよ!!

「柚子ちゃん、一緒に探してくれないかな?」
「……悠太だ」
「そうだった、ごめんごめん」

 やっぱ、コイツバカだ。

「一人じゃ、心ぼそいから。おねがいします。悠太君」
「呼び捨てでいい。僕もナルミと呼ぶ」
「了解。じゃあさっそく行こうか! ユウタ」
「オーケー」
「「転移トランスポートセンターラックへ!」」

 変な状態で出会った僕達は、リアルに戻るための旅を始めた。
 僕達がどうなったかは、観測する人が戻ってきたらわかるだろう。
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