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第1章「ゲームとリアル」
始まりの時計の音
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「ねえ、柚子ちゃんは好きな子とかいる?」
は? なんで教えなきゃならならない。
「いませんねー」
「そっか、私もリアルはまだ好きな人いないんだよな」
それがどうした。僕はヴァーチャルにもリアルにもいねーよ。
「あ、でも気になる人はここにいますね」
柚子スマイルでにこりと笑う。
「え、ラストワールド内で!?どんな人!?」
ここっていってるだろ。気づけよ!
「とても面白い人ですね」
「へー」
まったく気がつかないコイツ。もしかして鈍感か? いったいどう言えば気がつくんだよ。
「あっと、今日はこんな時間か。リアルに戻るね」
「はい、お疲れ様」
そう言って、コイツがログアウトしようとした時だった。
ボーン
古時計の時を告げるような音が、この世界に響き渡った。
「あれ、あれ?」
「どうしたんですか?」
「ログアウトボタンがないよ?」
「えっ?」
急いで僕も確認するために、コンソール画面を開いた。
「ない……」
「どうしたら、バグなのかな」
「運営に連絡しよう」
画面の運営への連絡先をタップする。
ポーーーン
メール失敗のアイコンが届く。
ポーーーン、ポーーーン、ポーーーン
どうなってるんだ?
「柚子ちゃんは出来た?」
「出来ない……」
「私も出来ませんね――」
ボーーーーン
また、時計の音が鳴り響く。
「この音、いったい何なのかな?」
「初めて聞く音だ。もしかして、ゲームのイベント開始か?」
「――イベントなら、終われば普通に戻りますよね」
アイツが何かをタップしている。
「あれ、メンバーチャットも動かない」
どうやらギルドチャットをしようとしていたらしい。柚子はギルドに入っていないから確かめようがないな。
ボーーーーン
三度目の音が響き渡ったその時だった。
「っ!!い、いてええええぇぇ」
急に身体中に痛みが走り、僕は膝をついた。
「いた、いた、いたぁぁぁぁぃ」
アイツも同じ様に痛いのか叫んでいる。
なんだ、この痛みは。全身が塗り替えられていく。柚子の可愛い姿が……、光の粒子になって空に溶けていく。
「っ、ハァハァハァハァ」
痛みが治まり、僕は目を開けた。最初に飛び込んできたのは、見慣れた僕の両腕。可愛い服を着た男の身体。
なんだ、何だこれは――。
「柚子……ちゃん……?」
アイツの声? なんだか、とてもか細い。アイツの姿を見ると、そこにいたのは、厳つい鎧装備を纏った、可愛い女子がいた。
「は、お前誰だよ」
「いやいや、君こそ誰。柚子ちゃんの格好した変態! 柚子ちゃんを何処にやったの!」
そう言われて、自分の姿を確認するために、カメラ視点を俯瞰に切り替えた。
あぁ、こいつどう見ても変態だわ。
フリフリのスカート、背中に天使のはね、ヘアバンドをつけた、見慣れた顔の僕がソコにいた。
「何だよ、これ……」
は? なんで教えなきゃならならない。
「いませんねー」
「そっか、私もリアルはまだ好きな人いないんだよな」
それがどうした。僕はヴァーチャルにもリアルにもいねーよ。
「あ、でも気になる人はここにいますね」
柚子スマイルでにこりと笑う。
「え、ラストワールド内で!?どんな人!?」
ここっていってるだろ。気づけよ!
「とても面白い人ですね」
「へー」
まったく気がつかないコイツ。もしかして鈍感か? いったいどう言えば気がつくんだよ。
「あっと、今日はこんな時間か。リアルに戻るね」
「はい、お疲れ様」
そう言って、コイツがログアウトしようとした時だった。
ボーン
古時計の時を告げるような音が、この世界に響き渡った。
「あれ、あれ?」
「どうしたんですか?」
「ログアウトボタンがないよ?」
「えっ?」
急いで僕も確認するために、コンソール画面を開いた。
「ない……」
「どうしたら、バグなのかな」
「運営に連絡しよう」
画面の運営への連絡先をタップする。
ポーーーン
メール失敗のアイコンが届く。
ポーーーン、ポーーーン、ポーーーン
どうなってるんだ?
「柚子ちゃんは出来た?」
「出来ない……」
「私も出来ませんね――」
ボーーーーン
また、時計の音が鳴り響く。
「この音、いったい何なのかな?」
「初めて聞く音だ。もしかして、ゲームのイベント開始か?」
「――イベントなら、終われば普通に戻りますよね」
アイツが何かをタップしている。
「あれ、メンバーチャットも動かない」
どうやらギルドチャットをしようとしていたらしい。柚子はギルドに入っていないから確かめようがないな。
ボーーーーン
三度目の音が響き渡ったその時だった。
「っ!!い、いてええええぇぇ」
急に身体中に痛みが走り、僕は膝をついた。
「いた、いた、いたぁぁぁぁぃ」
アイツも同じ様に痛いのか叫んでいる。
なんだ、この痛みは。全身が塗り替えられていく。柚子の可愛い姿が……、光の粒子になって空に溶けていく。
「っ、ハァハァハァハァ」
痛みが治まり、僕は目を開けた。最初に飛び込んできたのは、見慣れた僕の両腕。可愛い服を着た男の身体。
なんだ、何だこれは――。
「柚子……ちゃん……?」
アイツの声? なんだか、とてもか細い。アイツの姿を見ると、そこにいたのは、厳つい鎧装備を纏った、可愛い女子がいた。
「は、お前誰だよ」
「いやいや、君こそ誰。柚子ちゃんの格好した変態! 柚子ちゃんを何処にやったの!」
そう言われて、自分の姿を確認するために、カメラ視点を俯瞰に切り替えた。
あぁ、こいつどう見ても変態だわ。
フリフリのスカート、背中に天使のはね、ヘアバンドをつけた、見慣れた顔の僕がソコにいた。
「何だよ、これ……」
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