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45話・ごめんなさい
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リサさんがふらりと倒れ、それをアリストがすぐにぎゅっと抱き締めていた。
「終わった――?」
リードがぽつりと呟く。
そうだ、きっとこれで全部終わったんだ。私は帰れる。
「そうっすね」
見覚えのある男が、こちらに話しかけてきた。見覚えはあるけれど、あの時と、声の違う……。あれ、おかしい。私があの日、そとにいくための結界をはってあげたアリストだ。だけど、リサさんを抱き締めている猫耳のあの人も、アリスト。どういうこと?
「僕は知っている。カナ、君は帰りたいんだよね? 帰る方法はただ一つ、逆転の儀。召喚した者が行う儀式だけだ」
私はカトルを見た。この人が、私の帰り道……。そんな――。
「それは出来ません。カナ様を帰す儀式をすればもう一人の聖女までともに……。他に方法はありませんか?!」
リードが会話に入ってきた。
「その心配はないっすよ。カナとリサはそれぞれよんだ人物が違う」
帽子を被ったその人はそれだけ言って、リサさんのところに行ってしまった。
いつの間にか結界がとけていたようで、カトルは立ち上がり、私のところにきた。
「カナ、私とともに生きてくれるのだろう?」
不安げな顔で聞いてくる。私は、ぎゅっと手に力をいれて彼に答えた。
「ごめんなさい!」
頭を下げて謝る。
「私は、元の世界に大好きな人がいるの。カトルの気持ちには答えられない。元の世界に帰りたい!」
顔をあげ、彼を見ると駄々をこねる子供のような表情をしていた。
「カナは帰さない! 私は、私は!」
「カトル様!!」
メリエルの声が響き渡った。近くにいたんだろうか、すごい勢いで走ってきて、カトルの横についた。そして、その勢いのままカトルの頬をビタンと大きな音がたつくらい思いきり叩いた。
「死んだものは戻ってきません。カナ様は、マナエではありません! 今は忘れてしまっているけれど、貴方が愛を誓ったのは、私の妹、マナエルです!」
「メ……リエ……」
勢いにのまれたのか、カトルはびっくりした顔で、メリエルを見る。
「カナ様には、愛する人がいらっしゃるのです! 貴方はそれを引き離すおつもりなのですか!! 誰よりも引き裂かれる苦しみを知っている貴方が!」
紫色の大きな瞳からポロポロと涙が溢れ落ちる。片手には何か封筒のようなものを握りしめていた。
「私は、二番目でもかまわない。けれど、それはカナ様ではありません。私の許すのはただ一人、妹のマナエだけです」
「…………」
「足りない魔力は、私が支えます! 強くなります! だから、どうかお願いします。愛する者を引き裂くような真似は――――」
叩かれた頬を押さえながら、カトルはふいっと横を向いた。
「少し、話す時間をくれないか――」
ーーー
「カナは、元の世界にもどりたいのか?」
お城の仕事の時の部屋で、メリエル、リード、カトル、私の四人は話していた。
「はい」
「そうか。王にはカナが帰還することの承認をもらってくるよ」
「カトル」
帰れる。やっと帰れるんだ!
「明日にも、儀式を行おう。カナもはやい方がいいだろう」
「はい!」
「挨拶があるようだったら、リード一緒に付いていってあげるといい」
そういうと、カトルは立ち上がりメリエルを連れて部屋の外に出ていった。
部屋には、私とリードだけになった。
「カナ様、ご挨拶はありますか?」
「あ……、猫屋敷の皆に……」
「はい」
いつもと、変わらないはずなのに、緊張してしまう。本人から聞いたわけじゃないのに――。何、考えているんだろう。
ーーー
猫屋敷の皆にお礼を言って、部屋に戻る途中だった。
「カナ様、向こうの世界に戻ったら沢山笑って下さい。私はそれを望みます」
後ろを振り向くと、寂しそうな顔で、リードが微笑んでいた。
見てはいけない顔だった。
「リード――」
私は、あることを思いだし、彼を部屋に招き入れた。
「終わった――?」
リードがぽつりと呟く。
そうだ、きっとこれで全部終わったんだ。私は帰れる。
「そうっすね」
見覚えのある男が、こちらに話しかけてきた。見覚えはあるけれど、あの時と、声の違う……。あれ、おかしい。私があの日、そとにいくための結界をはってあげたアリストだ。だけど、リサさんを抱き締めている猫耳のあの人も、アリスト。どういうこと?
「僕は知っている。カナ、君は帰りたいんだよね? 帰る方法はただ一つ、逆転の儀。召喚した者が行う儀式だけだ」
私はカトルを見た。この人が、私の帰り道……。そんな――。
「それは出来ません。カナ様を帰す儀式をすればもう一人の聖女までともに……。他に方法はありませんか?!」
リードが会話に入ってきた。
「その心配はないっすよ。カナとリサはそれぞれよんだ人物が違う」
帽子を被ったその人はそれだけ言って、リサさんのところに行ってしまった。
いつの間にか結界がとけていたようで、カトルは立ち上がり、私のところにきた。
「カナ、私とともに生きてくれるのだろう?」
不安げな顔で聞いてくる。私は、ぎゅっと手に力をいれて彼に答えた。
「ごめんなさい!」
頭を下げて謝る。
「私は、元の世界に大好きな人がいるの。カトルの気持ちには答えられない。元の世界に帰りたい!」
顔をあげ、彼を見ると駄々をこねる子供のような表情をしていた。
「カナは帰さない! 私は、私は!」
「カトル様!!」
メリエルの声が響き渡った。近くにいたんだろうか、すごい勢いで走ってきて、カトルの横についた。そして、その勢いのままカトルの頬をビタンと大きな音がたつくらい思いきり叩いた。
「死んだものは戻ってきません。カナ様は、マナエではありません! 今は忘れてしまっているけれど、貴方が愛を誓ったのは、私の妹、マナエルです!」
「メ……リエ……」
勢いにのまれたのか、カトルはびっくりした顔で、メリエルを見る。
「カナ様には、愛する人がいらっしゃるのです! 貴方はそれを引き離すおつもりなのですか!! 誰よりも引き裂かれる苦しみを知っている貴方が!」
紫色の大きな瞳からポロポロと涙が溢れ落ちる。片手には何か封筒のようなものを握りしめていた。
「私は、二番目でもかまわない。けれど、それはカナ様ではありません。私の許すのはただ一人、妹のマナエだけです」
「…………」
「足りない魔力は、私が支えます! 強くなります! だから、どうかお願いします。愛する者を引き裂くような真似は――――」
叩かれた頬を押さえながら、カトルはふいっと横を向いた。
「少し、話す時間をくれないか――」
ーーー
「カナは、元の世界にもどりたいのか?」
お城の仕事の時の部屋で、メリエル、リード、カトル、私の四人は話していた。
「はい」
「そうか。王にはカナが帰還することの承認をもらってくるよ」
「カトル」
帰れる。やっと帰れるんだ!
「明日にも、儀式を行おう。カナもはやい方がいいだろう」
「はい!」
「挨拶があるようだったら、リード一緒に付いていってあげるといい」
そういうと、カトルは立ち上がりメリエルを連れて部屋の外に出ていった。
部屋には、私とリードだけになった。
「カナ様、ご挨拶はありますか?」
「あ……、猫屋敷の皆に……」
「はい」
いつもと、変わらないはずなのに、緊張してしまう。本人から聞いたわけじゃないのに――。何、考えているんだろう。
ーーー
猫屋敷の皆にお礼を言って、部屋に戻る途中だった。
「カナ様、向こうの世界に戻ったら沢山笑って下さい。私はそれを望みます」
後ろを振り向くと、寂しそうな顔で、リードが微笑んでいた。
見てはいけない顔だった。
「リード――」
私は、あることを思いだし、彼を部屋に招き入れた。
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