41 / 49
39話・繋がった
しおりを挟む
ブゥン
小さく何かが揺れる。これは、スマホの……。
私は、動かなくなったスマホを手に取り画面を見た。つかなくなったと思っていた画面に光が灯る。
「何で――?」
圏外表示でもない。何が起こったの?
私は勢いよく起き上がり、通話アプリを起動する。
繋がらないとわかっている。だってここは――。
「カナ」
「タツミ……」
繋がった? この声はタツミだ。タツミだ!
「タツミ! ごめんなさい! 私、私!」
「カ……まって…………、聞きと…………」
声が途切れ途切れだ。せっかく繋がったのにこれじゃあ……。メッセージの方がいい? でも、通話を切ってしまったら――。
「カナ……わ…………お……い……」
ブツンと切れる音がした。
「タツミ……」
何で繋がったの? 私にまた絶望しろとでも言いたいの?
「くくく、そうだよぉ」
嬉しそうに笑う男の子の声がする。
「また、あなたなの……」
「面白かった?」
私はこの子に遊ばれているんだろうか。
「ありがとう。少しだけでも彼の声が聞けて良かったわ」
「じゃあ、この世界を終わらせようよ。オカアサンは向こうに戻るんでしょ?」
「カナ」
ライトの呼ぶ声がする。
「大丈夫。何でもないわ。ライト」
「もうすぐ戻ってくるはずだ」
「本当!?」
先ほどの声は止まり、いまはライトの次の言葉しか聞こえない。
だって、リサさんが戻ってくるって!
「話が正しければ明日の夕方になるだろう」
「それは予言?」
「いや、違う……」
なんだっていい。私はやっと帰れるんだ。明日。明後日?どっちだっていい。やっとやっと。
画面がまた真っ暗になったスマホをぎゅっと握って私は夜が明けるのを待った。
ーーー
何で……。
朝がきて、外が明るい。準備をしないと、と思っているのに。
口が動かない。意識だけがはっきりしているのに、体がついてこない。私はいったいどうなってしまったの?
「はぁー、長かった。でもボク、もうすぐ産まれるよ」
嬉しそうに、男の子が囁く。
「どっちが勝つかな? ねぇ、オカアサン」
ーーー
あの子が勝手に私の体を動かし、カトルのもとに連れていく。扉をノックすると、すぐにカトルがでてきて部屋の中へと迎え入れられた。
「カナ、本当か……」
「はい、私決めました」
私じゃないのに、口が勝手に動き話している。
やめて、私はそんなこと望んでいない。
「カトルとともにこの世界で生きていきます」
私がカトルに抱き締められる。それを私はガラス越しで見ているような状態だ。
リードがカトルの後ろから私をじっと見ているのが見えた。
(違う……、やめて……私は)
「カナ」
とても嬉しそうなカトルの顔が見える。
何で? 今日、リサさんが帰ってくるのに、お願いやめて、こんなことしないで。
私はなんとか体を取り戻そうと必死にもがいた。絶対に諦めたくない。
「カナ! 僕の名前を呼べ」
ライトの声が聞こえる。名前――。手を伸ばし彼の名前を呼ぶ。
お願い、助けて!
(ライト!!)
暖かい光が私を包んだ。
ーーー
どうなったんだろう?
変わらずに私の意思で体は動かせない。糸が切れたマリオネットのよう。ただ、あの子の気配がなくなった。
「カナ、カナ?」
カトルが、声をかけているけれど私の声は出てこない。
(ライト。どうなったの?)
「魔獣の力を半分、指輪を通じて僕に移した――。ただ、実体のない精霊がこの力に耐えられるかどうか、わからない……」
(ライト?)
「僕もカナのように意思を乗っ取られるかもしれないな――」
(そんな……)
「リサが、間に合えばいいけれど。それまでに僕の方がやられるんだろうね」
諦めたように話すライト。もしかして、未来を知っているの?
「知っているというよりは、聞かされた――かな」
そう言ったあと、ライトは喋らなくなった。
夕方まであと数時間。私はこのまま何も出来ずに、何も話せずに……。
カトルに違うとも、帰りたいとも、言えない。リサさんが戻ってきても、二度と会いたくないって言ってしまっているのに――。
私は一人絶望の箱の中に閉じ込められてしまった。
小さく何かが揺れる。これは、スマホの……。
私は、動かなくなったスマホを手に取り画面を見た。つかなくなったと思っていた画面に光が灯る。
「何で――?」
圏外表示でもない。何が起こったの?
私は勢いよく起き上がり、通話アプリを起動する。
繋がらないとわかっている。だってここは――。
「カナ」
「タツミ……」
繋がった? この声はタツミだ。タツミだ!
「タツミ! ごめんなさい! 私、私!」
「カ……まって…………、聞きと…………」
声が途切れ途切れだ。せっかく繋がったのにこれじゃあ……。メッセージの方がいい? でも、通話を切ってしまったら――。
「カナ……わ…………お……い……」
ブツンと切れる音がした。
「タツミ……」
何で繋がったの? 私にまた絶望しろとでも言いたいの?
「くくく、そうだよぉ」
嬉しそうに笑う男の子の声がする。
「また、あなたなの……」
「面白かった?」
私はこの子に遊ばれているんだろうか。
「ありがとう。少しだけでも彼の声が聞けて良かったわ」
「じゃあ、この世界を終わらせようよ。オカアサンは向こうに戻るんでしょ?」
「カナ」
ライトの呼ぶ声がする。
「大丈夫。何でもないわ。ライト」
「もうすぐ戻ってくるはずだ」
「本当!?」
先ほどの声は止まり、いまはライトの次の言葉しか聞こえない。
だって、リサさんが戻ってくるって!
「話が正しければ明日の夕方になるだろう」
「それは予言?」
「いや、違う……」
なんだっていい。私はやっと帰れるんだ。明日。明後日?どっちだっていい。やっとやっと。
画面がまた真っ暗になったスマホをぎゅっと握って私は夜が明けるのを待った。
ーーー
何で……。
朝がきて、外が明るい。準備をしないと、と思っているのに。
口が動かない。意識だけがはっきりしているのに、体がついてこない。私はいったいどうなってしまったの?
「はぁー、長かった。でもボク、もうすぐ産まれるよ」
嬉しそうに、男の子が囁く。
「どっちが勝つかな? ねぇ、オカアサン」
ーーー
あの子が勝手に私の体を動かし、カトルのもとに連れていく。扉をノックすると、すぐにカトルがでてきて部屋の中へと迎え入れられた。
「カナ、本当か……」
「はい、私決めました」
私じゃないのに、口が勝手に動き話している。
やめて、私はそんなこと望んでいない。
「カトルとともにこの世界で生きていきます」
私がカトルに抱き締められる。それを私はガラス越しで見ているような状態だ。
リードがカトルの後ろから私をじっと見ているのが見えた。
(違う……、やめて……私は)
「カナ」
とても嬉しそうなカトルの顔が見える。
何で? 今日、リサさんが帰ってくるのに、お願いやめて、こんなことしないで。
私はなんとか体を取り戻そうと必死にもがいた。絶対に諦めたくない。
「カナ! 僕の名前を呼べ」
ライトの声が聞こえる。名前――。手を伸ばし彼の名前を呼ぶ。
お願い、助けて!
(ライト!!)
暖かい光が私を包んだ。
ーーー
どうなったんだろう?
変わらずに私の意思で体は動かせない。糸が切れたマリオネットのよう。ただ、あの子の気配がなくなった。
「カナ、カナ?」
カトルが、声をかけているけれど私の声は出てこない。
(ライト。どうなったの?)
「魔獣の力を半分、指輪を通じて僕に移した――。ただ、実体のない精霊がこの力に耐えられるかどうか、わからない……」
(ライト?)
「僕もカナのように意思を乗っ取られるかもしれないな――」
(そんな……)
「リサが、間に合えばいいけれど。それまでに僕の方がやられるんだろうね」
諦めたように話すライト。もしかして、未来を知っているの?
「知っているというよりは、聞かされた――かな」
そう言ったあと、ライトは喋らなくなった。
夕方まであと数時間。私はこのまま何も出来ずに、何も話せずに……。
カトルに違うとも、帰りたいとも、言えない。リサさんが戻ってきても、二度と会いたくないって言ってしまっているのに――。
私は一人絶望の箱の中に閉じ込められてしまった。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説

聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)
蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。
聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。
愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。
いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。
ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。
それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。
心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。


好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ


だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。

偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら
影茸
恋愛
公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。
あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。
けれど、断罪したもの達は知らない。
彼女は偽物であれ、無力ではなく。
──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。
(書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です)
(少しだけタイトル変えました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる