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33話・月と星と光る花
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あれから三日たったけれど、私は外に出して貰えない。
鍵はかかっていないけれど、ずっと部屋の外で誰かが見張っている……。外に行けばすぐにカトルに伝わるようになっているのかもしれない。
私はこのままどうなってしまうんだろう。
彼の思うような聖女になんてなれないし、私はもとの世界に帰りたい。リサさんが帰ってくればきっと……。
ーーー
今日も何もせず暗くなってしまった。私は窓に行き、外を見る。
風の魔法が使えたら、彼らのようにここから空を飛んでいけるのかな。自由に飛んで……、何処に行けばいいというのだろう。異世界だというのに。
自嘲の笑みを浮かべていると、コンコンと窓が小さくなった。
暗闇しか見えないけれど、私はゆっくりと窓を開ける。
「カナ様」
リードの声だ。今ならわかる。闇の精霊の魔法で姿を消しているんだ。
「あまり長くはいられませんが少しだけ、外に散歩にでかけましょう。ずっと、なかにこもっていると、体にも心にも悪いですよ」
でも、私がここからいなくなったら――。
「闇の精霊よ」
部屋の中が見えなくなるくらい暗くなった。
「あとは、カナ様が戻ってくるまで扉に結界を――。外の人間が命令されているのは、カナ様を外に出さないことだけなので……大丈夫とは思いますが――」
「――ライト」
私はいわれるままに、結界をはる。そして彼の声がする場所に手を伸ばした。
ぎゅっと握られて、優しくゆっくりと抱き上げられる。
「行きましょう」
トンッと空を蹴って夜空へと飛び出した。頬を撫でる風が、とても心地いい。
「もうすぐ、また城の中なら自由に動けるようになると思います」
「何故?」
「この前の犯人をすべて捕らえたからです」
「そうなんだ……」
トンと降り立った場所は少しだけお城から離れた小さな原っぱ。小さな花が夜なのに白く綺麗に咲いているのが見える。この花は、見たことある。
「この花は?」
「これは国の名前と同じ、ライトコールという花です。昼よりも夜の方が、光がはっきり見えて綺麗なんですよ」
そっと、花を避けて彼は草の上に座る。私も、彼から少し離れた横に座った。
空を見上げると、星と月が煌めいてとても綺麗だ。
「カナ様、もとの世界に帰りたいですか?」
また、同じ質問。何故彼は、聞きたいんだろう。
「変わりません。私はもといた世界に戻りたい」
「そうですか――」
リードは空を見上げたまま、答える。メリエルと仲がいい、この人になら、話してもいいのかな。
「私はもとの世界に好きな人がいるんです」
「――」
「私は、カトルの横に立つなんて出来ない。あの人に会いたい」
「そうですか。それで――、わかりました。私もメリエル様同様にお手伝いさせていただきます」
リードはこちらを向いて笑う。その顔は少しだけ寂しそうだったのは気のせいかな……。
「喧嘩ばかりの彼氏だけど、大事な人なんです」
「喧嘩ができるということは、いいことです」
「そうですか?」
「ええ」
彼にも誰か想っている人がいるのだろうか? 私は気になって聞いてみた。
「リードにもそんな人がいるんですか?」
彼はふるふると顔を横にふった。
「私には、いません。私の魔力も、意思も、この命もすべてカトル様の物ですから。カトル様、メリエル様、お二人の影として支えていくと決めた時から――。弟ならいるかもしれませんが――」
「……じゃあ、この散歩もカトルが、ということ?」
「…………」
彼は答えずに、少しだけ笑った。
それは、肯定ということなのだろうか。私は彼から視線を外して空を見上げた。
「そろそろ、戻りましょう」
「はい」
何もなかったように、私達は部屋に戻り別れた。
空を飛んでいく彼の姿は闇に隠れ、見えなかった。
鍵はかかっていないけれど、ずっと部屋の外で誰かが見張っている……。外に行けばすぐにカトルに伝わるようになっているのかもしれない。
私はこのままどうなってしまうんだろう。
彼の思うような聖女になんてなれないし、私はもとの世界に帰りたい。リサさんが帰ってくればきっと……。
ーーー
今日も何もせず暗くなってしまった。私は窓に行き、外を見る。
風の魔法が使えたら、彼らのようにここから空を飛んでいけるのかな。自由に飛んで……、何処に行けばいいというのだろう。異世界だというのに。
自嘲の笑みを浮かべていると、コンコンと窓が小さくなった。
暗闇しか見えないけれど、私はゆっくりと窓を開ける。
「カナ様」
リードの声だ。今ならわかる。闇の精霊の魔法で姿を消しているんだ。
「あまり長くはいられませんが少しだけ、外に散歩にでかけましょう。ずっと、なかにこもっていると、体にも心にも悪いですよ」
でも、私がここからいなくなったら――。
「闇の精霊よ」
部屋の中が見えなくなるくらい暗くなった。
「あとは、カナ様が戻ってくるまで扉に結界を――。外の人間が命令されているのは、カナ様を外に出さないことだけなので……大丈夫とは思いますが――」
「――ライト」
私はいわれるままに、結界をはる。そして彼の声がする場所に手を伸ばした。
ぎゅっと握られて、優しくゆっくりと抱き上げられる。
「行きましょう」
トンッと空を蹴って夜空へと飛び出した。頬を撫でる風が、とても心地いい。
「もうすぐ、また城の中なら自由に動けるようになると思います」
「何故?」
「この前の犯人をすべて捕らえたからです」
「そうなんだ……」
トンと降り立った場所は少しだけお城から離れた小さな原っぱ。小さな花が夜なのに白く綺麗に咲いているのが見える。この花は、見たことある。
「この花は?」
「これは国の名前と同じ、ライトコールという花です。昼よりも夜の方が、光がはっきり見えて綺麗なんですよ」
そっと、花を避けて彼は草の上に座る。私も、彼から少し離れた横に座った。
空を見上げると、星と月が煌めいてとても綺麗だ。
「カナ様、もとの世界に帰りたいですか?」
また、同じ質問。何故彼は、聞きたいんだろう。
「変わりません。私はもといた世界に戻りたい」
「そうですか――」
リードは空を見上げたまま、答える。メリエルと仲がいい、この人になら、話してもいいのかな。
「私はもとの世界に好きな人がいるんです」
「――」
「私は、カトルの横に立つなんて出来ない。あの人に会いたい」
「そうですか。それで――、わかりました。私もメリエル様同様にお手伝いさせていただきます」
リードはこちらを向いて笑う。その顔は少しだけ寂しそうだったのは気のせいかな……。
「喧嘩ばかりの彼氏だけど、大事な人なんです」
「喧嘩ができるということは、いいことです」
「そうですか?」
「ええ」
彼にも誰か想っている人がいるのだろうか? 私は気になって聞いてみた。
「リードにもそんな人がいるんですか?」
彼はふるふると顔を横にふった。
「私には、いません。私の魔力も、意思も、この命もすべてカトル様の物ですから。カトル様、メリエル様、お二人の影として支えていくと決めた時から――。弟ならいるかもしれませんが――」
「……じゃあ、この散歩もカトルが、ということ?」
「…………」
彼は答えずに、少しだけ笑った。
それは、肯定ということなのだろうか。私は彼から視線を外して空を見上げた。
「そろそろ、戻りましょう」
「はい」
何もなかったように、私達は部屋に戻り別れた。
空を飛んでいく彼の姿は闇に隠れ、見えなかった。
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