35 / 97
前編
聞こえません
しおりを挟む
「滝だぁ!」
「でけぇな」
まるでナイアガラの滝みたいな大きな滝。幻だとわかってるけどすごい。流れ落ちる水、音、はねる水滴、全部目の前にあるの。飛んでいる場所より上空から水が溢れ流れ落ちていく。
あそこから入るために、滝の真ん中にサークルポイントがある。
「いくぞ!」
アルベルトの後を追って、滝に入る。
大きな透明パイプのコース。水族館にある透明トンネル水槽みたいな感じのね。上から落ちてくる滝の勢いがかなり恐ろしい。現実じゃ出来なさそうな眺め。
「アルテ! そこ次カーブ」
「お、サンキュー」
あ、ずるになっちゃうかな。このコースはこのレースのためのグリード特製だった。先読み出来るはずがないんだ。
でも、少しくらいならいいよね。
「ここを抜けたら、最後のポイントかな」
「あ、なんだってー?」
「だーかーらー」
ドドドという音に声がかき消されてしまう。
「ここを抜けたら、話しましょう」
「なんだってー?」
もう、電波が遠くて繋がらない電話じゃないんだから!
私は話すのを諦めようとアルテに伝える。まあ、どうせ聞こえないけど。
「今は話しても聞こえませんよね! はやく、コースを抜けましょう」
「何かわからんがわかった!」
まるでコントみたいなやりとりをして、滝のコースを抜ける。
「よし、聞こえるようになったぞ! で、何だって?」
「もういいです。先に進みましょう」
「あぁ、ラストのポイントだな」
「えぇ」
さっきのコースでだいぶ追い付いたようだ。追い付けるように、魔力を強めに調整する。
すると、アルテは私が魔力を強めたのがわかったのか、彼自身の魔力も上げてきた。
「面倒をかけるな」
「バレてました?」
「練習でどんだけやばかったか。さんざん見てるだろ」
「そうでした」
そんな軽口を言い合いながら、アルベルトのハイエアートにどんどん寄せていく。
アナスタシアの黒い髪と、アルベルトの金色の髪が見えてきた。
「さすが、一国の王子ってだけはあるのか」
いや、それはたぶんアナスタシア補正が。言えないけど。
「つえーな! あっちの国のハイエアートでも勝負してみたいぜ」
「おーい、なんか違いませんかー! 今はこのレースで勝つことを考えないと!」
「そうだった」
アルテは、かかっと笑い、アルベルト達のハイエアートを見据えた。
出会い方とかが違えば、彼らは仲良くハイエアートレースをしたりしてたのかな。なんて、私も考えてしまったけれど。
「並ぶぞ!」
「はい」
気合いをいれて、飛んでいく。横に並ぶと、あの【ピッ】を思い出してしまって、少しだけ思い出し笑いしたのは、ばれてないはずだ。
「でけぇな」
まるでナイアガラの滝みたいな大きな滝。幻だとわかってるけどすごい。流れ落ちる水、音、はねる水滴、全部目の前にあるの。飛んでいる場所より上空から水が溢れ流れ落ちていく。
あそこから入るために、滝の真ん中にサークルポイントがある。
「いくぞ!」
アルベルトの後を追って、滝に入る。
大きな透明パイプのコース。水族館にある透明トンネル水槽みたいな感じのね。上から落ちてくる滝の勢いがかなり恐ろしい。現実じゃ出来なさそうな眺め。
「アルテ! そこ次カーブ」
「お、サンキュー」
あ、ずるになっちゃうかな。このコースはこのレースのためのグリード特製だった。先読み出来るはずがないんだ。
でも、少しくらいならいいよね。
「ここを抜けたら、最後のポイントかな」
「あ、なんだってー?」
「だーかーらー」
ドドドという音に声がかき消されてしまう。
「ここを抜けたら、話しましょう」
「なんだってー?」
もう、電波が遠くて繋がらない電話じゃないんだから!
私は話すのを諦めようとアルテに伝える。まあ、どうせ聞こえないけど。
「今は話しても聞こえませんよね! はやく、コースを抜けましょう」
「何かわからんがわかった!」
まるでコントみたいなやりとりをして、滝のコースを抜ける。
「よし、聞こえるようになったぞ! で、何だって?」
「もういいです。先に進みましょう」
「あぁ、ラストのポイントだな」
「えぇ」
さっきのコースでだいぶ追い付いたようだ。追い付けるように、魔力を強めに調整する。
すると、アルテは私が魔力を強めたのがわかったのか、彼自身の魔力も上げてきた。
「面倒をかけるな」
「バレてました?」
「練習でどんだけやばかったか。さんざん見てるだろ」
「そうでした」
そんな軽口を言い合いながら、アルベルトのハイエアートにどんどん寄せていく。
アナスタシアの黒い髪と、アルベルトの金色の髪が見えてきた。
「さすが、一国の王子ってだけはあるのか」
いや、それはたぶんアナスタシア補正が。言えないけど。
「つえーな! あっちの国のハイエアートでも勝負してみたいぜ」
「おーい、なんか違いませんかー! 今はこのレースで勝つことを考えないと!」
「そうだった」
アルテは、かかっと笑い、アルベルト達のハイエアートを見据えた。
出会い方とかが違えば、彼らは仲良くハイエアートレースをしたりしてたのかな。なんて、私も考えてしまったけれど。
「並ぶぞ!」
「はい」
気合いをいれて、飛んでいく。横に並ぶと、あの【ピッ】を思い出してしまって、少しだけ思い出し笑いしたのは、ばれてないはずだ。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。
ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。
毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。
うたた寝している間に運命が変わりました。
gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
光の王太子殿下は愛したい
葵川真衣
恋愛
王太子アドレーには、婚約者がいる。公爵令嬢のクリスティンだ。
わがままな婚約者に、アドレーは元々関心をもっていなかった。
だが、彼女はあるときを境に変わる。
アドレーはそんなクリスティンに惹かれていくのだった。しかし彼女は変わりはじめたときから、よそよそしい。
どうやら、他の少女にアドレーが惹かれると思い込んでいるようである。
目移りなどしないのに。
果たしてアドレーは、乙女ゲームの悪役令嬢に転生している婚約者を、振り向かせることができるのか……!?
ラブラブを望む王太子と、未来を恐れる悪役令嬢の攻防のラブ(?)コメディ。
☆完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる