上 下
46 / 46
第五草

46・赤い羽根

しおりを挟む
 オレ達は、すべて終わって行こうとしているはずだっただった。
 なのに今、目の前で起こっているソレに恐怖して足が止まっていた。

「急げ!!」
「でも、この状態の彼女をあそこまで連れてなんて……」
「姉さん!! 止まってくれ!!」

 赤い羽根が千切れ飛んでいく。羽根の主は苦しみを痛みで上塗りするつもりなのだろうか。悲鳴をあげながら己の赤い羽根を引きちぎっていく。

「ウィル、ウィル!! 怖い。嫌だぁぁぁぁ」
「姉さん!!」

 ウィナは血に濡れていく。

「苦しいよ。どうしてぇ」

 これが、ここでのルール。間に合わなければ化け物になる。彼女は、――間に合わなかった。
 目の前で姿が変わっていく。錯乱状態の彼女は魔術を発動させて自分とその回りに無差別に攻撃をしていた。

「ウィナ! 止まれ! 今ならまだ間に合うかもしれない!」
「ウィル、ウィルぅぅぅ!!」
「聞こえてないか。止まれぇぇっ」
「ユーリ。どうなっちゃうの? ボク、嫌だよっ。こんなの」
「オレだって嫌だ。だが――、どうすれば」

 考える時間なんてない。刻一刻とウィナの姿が変わっていく。

「ユーリ、もう……」

 チャミちゃんは、飛んでくる魔術に対応しながらウィナの姿をじっと見ている。
 もう、ウィナだったと認識できるのは1割残っているかどうかだ。

「ゔぃ……う……」

 彼女が名前を読んだ時、魔術がウィルに向かって飛んだ。それまでウィルを避けるように飛んでいた物が突然明確に彼を狙った。
 オレはソレを回避させるためウィルに体当たりをした。

「なんで、姉さん……」
「ボケっとしてないで、避けろ!!」
「……ゔぃるぅぅぅ」

 また、恨みを買うな。
 オレは集中する。魔術、ラビブロストライクを撃つために。
 出会ったばかりの二人がどうやって生きてきたかオレは知らない。片方がいなくなったらどんな気持ちになるのか。
 ズキリと胸に何かが刺さる。
 オレの守れなかった人達。

「ごめんな」
「ダメです!!」

 チャミちゃんが魔術の射線上に立つ。

「チャミちゃん!!」
「何か、何か……」
「お前、いま姉さんに何するつもりだった!?」

 ウィルがオレの肩に羽をぶつけてくる。手の中で集まっていた魔力が霧散した。
 それならいったいこの状況をどうすればいいんだ?
 二人にぶつけたい言葉をなんとか飲み込む。

「オレは――」

 バンッと何かが当たる音がした。扉が開く音だった。

「…………」
「ウィナ……」

 そこに立っているのはナミネとアレクだった。
 二人の姿を見てウィルが叫んだ。

「お前が、お前達がいなければ姉さんは……っ!!」
しおりを挟む
感想 5

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(5件)

銀タ篇
2022.05.24 銀タ篇

飛ぶ草めっちゃ便利!食べたーい!
ヨキはドラゴンなのに可愛い!
そしてめっちゃ強そう!☺️

花月夜れん
2022.05.24 花月夜れん

はえてた草全部食べてますから!!
うさぎになって色々と試し食いしまくりです。
ヨキは無自覚にやっちゃったのでまだこんな事が出来るなんて知らないかもです。

解除
銀タ篇
2022.05.16 銀タ篇

草でなんでもできる!!凄い!!
草うめぇーは癖になりそう☺️
魔法使う時も草を選ぶのいいですね🌟
チャミちゃんとユーリの2人は可愛らしいっ!✨✨

花月夜れん
2022.05.16 花月夜れん

最強の草を求めて!
あ、違った。チャミちゃんのために今日もユーリ頑張ります( ≧∀≦)ノ

解除
ミドリ
2022.05.16 ミドリ

草食べまくりー(∩︎´∀︎`∩︎)!

花月夜れん
2022.05.16 花月夜れん

草パワー摂取大事(`・ω・´)!!

解除

あなたにおすすめの小説

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後

綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、 「真実の愛に目覚めた」 と衝撃の告白をされる。 王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。 婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。 一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。 文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。 そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。 周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?

思い上がりも程々に。地味令嬢アメリアの幸せな婚約

ごろごろみかん。
恋愛
「もう少し、背は高い方がいいね」 「もう少し、顔は華やかな方が好みだ」 「もう少し、肉感的な方が好きだな」 あなたがそう言うから、あなたの期待に応えれるように頑張りました。 でも、だめだったのです。 だって、あなたはお姉様が好きだから。 私は、お姉様にはなれません。 想い合うふたりの会話を聞いてしまった私は、父である公爵に婚約の解消をお願いしにいきました。 それが、どんな結末を呼ぶかも知らずに──。

モブ高校生と愉快なカード達〜主人公は無自覚脱モブ&チート持ちだった!カードから美少女を召喚します!強いカード程1癖2癖もあり一筋縄ではない〜

KeyBow
ファンタジー
 1999年世界各地に隕石が落ち、その数年後に隕石が落ちた場所がラビリンス(迷宮)となり魔物が町に湧き出した。  各国の軍隊、日本も自衛隊によりラビリンスより外に出た魔物を駆逐した。  ラビリンスの中で魔物を倒すと稀にその個体の姿が写ったカードが落ちた。  その後、そのカードに血を掛けるとその魔物が召喚され使役できる事が判明した。  彼らは通称カーヴァント。  カーヴァントを使役する者は探索者と呼ばれた。  カーヴァントには1から10までのランクがあり、1は最弱、6で強者、7や8は最大戦力で鬼神とも呼ばれる強さだ。  しかし9と10は報告された事がない伝説級だ。  また、カードのランクはそのカードにいるカーヴァントを召喚するのに必要なコストに比例する。  探索者は各自そのラビリンスが持っているカーヴァントの召喚コスト内分しか召喚出来ない。  つまり沢山のカーヴァントを召喚したくてもコスト制限があり、強力なカーヴァントはコストが高い為に少数精鋭となる。  数を選ぶか質を選ぶかになるのだ。  月日が流れ、最初にラビリンスに入った者達の子供達が高校生〜大学生に。  彼らは二世と呼ばれ、例外なく特別な力を持っていた。  そんな中、ラビリンスに入った自衛隊員の息子である斗枡も高校生になり探索者となる。  勿論二世だ。  斗枡が持っている最大の能力はカード合成。  それは例えばゴブリンを10体合成すると10体分の力になるもカードのランクとコストは共に変わらない。  彼はその程度の認識だった。  実際は合成結果は最大でランク10の強さになるのだ。  単純な話ではないが、経験を積むとそのカーヴァントはより強力になるが、特筆すべきは合成元の生き残るカーヴァントのコストがそのままになる事だ。  つまりランク1(コスト1)の最弱扱いにも関わらず、実は伝説級であるランク10の強力な実力を持つカーヴァントを作れるチートだった。  また、探索者ギルドよりアドバイザーとして姉のような女性があてがわれる。  斗枡は平凡な容姿の為に己をモブだと思うも、周りはそうは見ず、クラスの底辺だと思っていたらトップとして周りを巻き込む事になる?  女子が自然と彼の取り巻きに!  彼はモブとしてモブではない高校生として生活を始める所から物語はスタートする。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

さようなら竜生、こんにちは人生

永島ひろあき
ファンタジー
 最強最古の竜が、あまりにも長く生き過ぎた為に生きる事に飽き、自分を討伐しに来た勇者たちに討たれて死んだ。  竜はそのまま冥府で永劫の眠りにつくはずであったが、気づいた時、人間の赤子へと生まれ変わっていた。  竜から人間に生まれ変わり、生きる事への活力を取り戻した竜は、人間として生きてゆくことを選ぶ。  辺境の農民の子供として生を受けた竜は、魂の有する莫大な力を隠して生きてきたが、のちにラミアの少女、黒薔薇の妖精との出会いを経て魔法の力を見いだされて魔法学院へと入学する。  かつて竜であったその人間は、魔法学院で過ごす日々の中、美しく強い学友達やかつての友である大地母神や吸血鬼の女王、龍の女皇達との出会いを経て生きる事の喜びと幸福を知ってゆく。 ※お陰様をもちまして2015年3月に書籍化いたしました。書籍化該当箇所はダイジェストと差し替えております。  このダイジェスト化は書籍の出版をしてくださっているアルファポリスさんとの契約に基づくものです。ご容赦のほど、よろしくお願い申し上げます。 ※2016年9月より、ハーメルン様でも合わせて投稿させていただいております。 ※2019年10月28日、完結いたしました。ありがとうございました!

ゴミ召喚士と呼ばれたスライム超特化テイマーの僕〜超特化が凄すぎて、最強スライムを育ててしまう〜

伊藤ほほほ
ファンタジー
13歳になる年の始め、子供達は教会に集まる。 人生が決まるに等しい、適性診断があるからだ。 全ての人がモンスターを召喚できる召喚士となり、サモナーとテイマーに分かれる。 これが問題で、一般的にテイマーはハズレ、サモナーはアタリとされていた。 適性診断では、どんなモンスターに特化した召喚士であるのかが分かる。 ここに、夢を語りながら教会へと向かう子供が二人。 主人公のカイト・フェイトと、その幼馴染のラビ・エンローズだ。 どんな召喚士になるのか、気になってしまうのは当然のこと。 同じ学校に通う、顔見知りの子供達が作る列の最後尾に並び、ドキドキしながら順番を待つ。 一人、また一人と診断を終えて出てくる子供の顔は三者三様。嬉しそうな表情ならサモナー、絶望を浮かべていればテイマーになったのだろうと分かりやすい。 そしてついに、二人の順番がやってきた。 まずは、幼馴染のラビ・エンローズから。 「……ねえ、カイトくん? ……ラビね、ドラゴン特化サモナーになっちゃった」  小さく呟き、振り返ったラビの顔は、悲しんでいるのか喜んでいるのかよく読み取れない。口角は上がっているのに涙目で、頬がヒクヒクと動いている。  何が起きたのか理解できず、まるでカイトに助けを求めているようで……。 「す、すごいじゃん!」  幼馴染が、世界最強のドラゴンサモナーになってしまったのだ。手の届かないところへ行ってしまった気がして、カイトには情けない一言を発することしかできない。 「僕だって!」 しかし、カイトも自分を信じて疑わない。 ステータスを見ると、スライム超特化テイマーと表示されていた。 絶望するカイト。世界から色が消え失せて、ショックからか意識を手放す。 親の助言もあり、立ち直ることはできた。 だが、いじめっ子同級生のザンブに決闘を挑まれる。 自分を信じてスライムをテイムし、カイトは困難に立ち向かう。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。