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第五草
44・王と草
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「ユーリ、あの」
うさ耳に戻ったチャミちゃんの耳がちょこちょこ動いている。やっぱりこっちのほうがかわいいなと思ってしまう。
「こっちだ」
オレはまっすぐにある場所に向かう。
「どうしてわかるんだ?」
「お前、ここのこと知ってるのか?」
双子の言葉を素知らぬ顔で躱す。
「いや、全然。でも、こっちだ」
導かれるように近付いていく。そう、もうすぐだ。
大きな扉を遠慮なく開く。そこには生気のない顔をした虫羽の人が数人。中心にはたくさんの白い糸で吊るされた男。
「ひぇっ。ユーリ、なんだかすごい細い顔だよ」
「まるで干からびているみたいですね」
チャミちゃんとヨキはお互いを庇いながら吊るされた男を見ていた。
「こいつだ」
間違いない。こいつがここの王。すべての虫羽と繋がっているヤツだ。
この白い糸は菌糸。これですべての住民と繋がって命令し、死体を動かしているんだろう。
「何か用かな?」
「うわ、喋ったぁ」
ヨキが驚きの声をあげる。そりゃあ驚くよな。ほとんど骨みたいなそれの口がパカパカと動くのだから。
「力の場所に行く許可を取りにきた」
王の前に虫羽達が集まってくる。十数人だろうか。
「許可……、そうだね。その鳥の女には出しても良さそうだ」
王がそう言うや、ウィルが姉の顔を見る。
双子はお互いに驚いた顔をしていた。
「それ以外の人たちにはもう少し手伝ってもらいたいけれど」
オレは身構える。
相手の糸が大きく震えた。直後、虫羽達が飛び出してくる。
「申し訳ないが、それは遠慮させてもらう」
いくらあの森に行くことが叶わないからと言って、オレ達の自由をこいつに使う義理はない。
アレクへの義理はすでに彼の家の前に置いてきた。
「オレはチャミちゃんとヨキを守らなきゃならないんでね!」
「私はユーリ、ヨキちゃんとともに行かなくてはなりません」
「ボクは、ユーリとチャミちゃん二人と一緒に旅するんだ」
オレ達は同時に動き出す。ヨキに向かう連中の中にナミネの姿があった。
「チャミちゃん、ヨキ!! 糸だ。糸を切れ」
「糸?」
人の姿の虫羽達に攻撃するのは躊躇われるのか二人は防御の姿勢だった。
「こういうやつだよ」
ウィルが一人の頭上に手を伸ばし掴み上げる。見えるか見えないか、ほんの少しの細い細いきらめきがそこにあった。
「わかりました!!」
風の精霊でチャミちゃんがそれを切断する。
虫羽達は次々と倒れ、ぴくりとも動かなくなっていく。
「よし、ボクもー」
ヨキが大きく口を開ける。まて、何をするつもりだ。
「切り裂く音」
ヨキが甲高い叫び声を上げるとあちこちに鋭利な傷が入っていく。糸を切ることにも成功していたが――。まわりへの影響が大きかった。
彼女の攻撃は精度をあげなければだめだなとオレは思った。
「負けてられないな!」
オレは口の中が切れていたかった草を思い出す。
この草も食べるのにかなり苦労したなぁ。
「これけっこう痛かったんだぜ!! 鋭利な草の思い出」
魔術で草を具現化させる。鋭利なそれは飛び回り次々に糸を切り裂いていった。
オレのうさぎ姿はやはり、食べた草を連想する魔術の威力が高いようだ。
あと数人というところでざざっと虫羽達は引いていく。自分達の王のもとへと集まる。
「これ以上、兵隊が倒れていくところを見たくないな。わかったよ」
引き止めるのをやめるつもりか?
王の顔が困ったような笑みを浮かべる。
「私が出る」
きらめく糸が羽のように広がり、王はその身を変えた。
大きな大きな蟲の長にふさわしい姿へと――。
うさ耳に戻ったチャミちゃんの耳がちょこちょこ動いている。やっぱりこっちのほうがかわいいなと思ってしまう。
「こっちだ」
オレはまっすぐにある場所に向かう。
「どうしてわかるんだ?」
「お前、ここのこと知ってるのか?」
双子の言葉を素知らぬ顔で躱す。
「いや、全然。でも、こっちだ」
導かれるように近付いていく。そう、もうすぐだ。
大きな扉を遠慮なく開く。そこには生気のない顔をした虫羽の人が数人。中心にはたくさんの白い糸で吊るされた男。
「ひぇっ。ユーリ、なんだかすごい細い顔だよ」
「まるで干からびているみたいですね」
チャミちゃんとヨキはお互いを庇いながら吊るされた男を見ていた。
「こいつだ」
間違いない。こいつがここの王。すべての虫羽と繋がっているヤツだ。
この白い糸は菌糸。これですべての住民と繋がって命令し、死体を動かしているんだろう。
「何か用かな?」
「うわ、喋ったぁ」
ヨキが驚きの声をあげる。そりゃあ驚くよな。ほとんど骨みたいなそれの口がパカパカと動くのだから。
「力の場所に行く許可を取りにきた」
王の前に虫羽達が集まってくる。十数人だろうか。
「許可……、そうだね。その鳥の女には出しても良さそうだ」
王がそう言うや、ウィルが姉の顔を見る。
双子はお互いに驚いた顔をしていた。
「それ以外の人たちにはもう少し手伝ってもらいたいけれど」
オレは身構える。
相手の糸が大きく震えた。直後、虫羽達が飛び出してくる。
「申し訳ないが、それは遠慮させてもらう」
いくらあの森に行くことが叶わないからと言って、オレ達の自由をこいつに使う義理はない。
アレクへの義理はすでに彼の家の前に置いてきた。
「オレはチャミちゃんとヨキを守らなきゃならないんでね!」
「私はユーリ、ヨキちゃんとともに行かなくてはなりません」
「ボクは、ユーリとチャミちゃん二人と一緒に旅するんだ」
オレ達は同時に動き出す。ヨキに向かう連中の中にナミネの姿があった。
「チャミちゃん、ヨキ!! 糸だ。糸を切れ」
「糸?」
人の姿の虫羽達に攻撃するのは躊躇われるのか二人は防御の姿勢だった。
「こういうやつだよ」
ウィルが一人の頭上に手を伸ばし掴み上げる。見えるか見えないか、ほんの少しの細い細いきらめきがそこにあった。
「わかりました!!」
風の精霊でチャミちゃんがそれを切断する。
虫羽達は次々と倒れ、ぴくりとも動かなくなっていく。
「よし、ボクもー」
ヨキが大きく口を開ける。まて、何をするつもりだ。
「切り裂く音」
ヨキが甲高い叫び声を上げるとあちこちに鋭利な傷が入っていく。糸を切ることにも成功していたが――。まわりへの影響が大きかった。
彼女の攻撃は精度をあげなければだめだなとオレは思った。
「負けてられないな!」
オレは口の中が切れていたかった草を思い出す。
この草も食べるのにかなり苦労したなぁ。
「これけっこう痛かったんだぜ!! 鋭利な草の思い出」
魔術で草を具現化させる。鋭利なそれは飛び回り次々に糸を切り裂いていった。
オレのうさぎ姿はやはり、食べた草を連想する魔術の威力が高いようだ。
あと数人というところでざざっと虫羽達は引いていく。自分達の王のもとへと集まる。
「これ以上、兵隊が倒れていくところを見たくないな。わかったよ」
引き止めるのをやめるつもりか?
王の顔が困ったような笑みを浮かべる。
「私が出る」
きらめく糸が羽のように広がり、王はその身を変えた。
大きな大きな蟲の長にふさわしい姿へと――。
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