もふもふうさぎの元最強魔術師~無実追放されたオレ。本当は草うめぇぇして引きこもっていたいけど……。草ぱわーで大事な人を守り、地上を目指す~

花月夜れん

文字の大きさ
上 下
43 / 46
第五草

43・気づき

しおりを挟む
「私、あなたが怪物になると聞かされて……。時間がないからと……。だから、ユーリだけでも先に会えるようにって」

 目を少しうるませながらチャミちゃんが話す。
 どうやら、草を集めるのはオレの為だったらしい。チャミちゃんはオレの残り時間を聞かされてアイツの言うことを聞いてここにいるようだった。

「オレは、チャミちゃんと一緒に行きたいんだ。オレだけが先に行ったって意味がない」

 オレが助かってチャミちゃんが囚われるなんて言語道断だ。オレはチャミちゃんの為にここにいるんだから。

「あ、えっとその」
「大丈夫。まだ前兆はきてないから」

 大切な事を伝えていなかった。

「え、前兆?」
「そう、怪物になる前に必ずあるんだ。体のどこかに黒の模様が浮かぶ。それが合図。一日だけ、猶予があるんだ」
「でも、見えないところだったら」
「あー、それはあるかもだな」
「だったら!! 今すぐ体中確かめさせて下さい」

 オレは固まってしまう。
 いや、あの、チャミちゃん? 体中って――。

「なぁ、で、どうするんだよ。守護者」

 ウィルの声掛けにチャミちゃんの顔が赤くなった。よかった、人前で服を捲られずに済みそうだ。
 いや、まあうさぎだった頃はお互いすっ裸だったけどな……。

「ご、ごめんなさい。人がいたんでした」
「あ、や……。心配なら、オレの見ることが出来ないとこはお願い……していいかな」

 真っ赤なチャミちゃんは目をキョロキョロしながら小さく頷いていた。
 かわりにオレは彼女の背中を確認するとしよう。

「だーかーら、守護者ぁ! どうするんだよ」
「あー、それなんだが」
「ユーリぃ! 捕まえてきた!!」

 ヨキが小さい音に反応する草ヒアーイヤー一匹を捕まえてきた。

「どうするの?」
「代替わりさせる」

 守護者は、代々受け継がれいく。バトンを渡すだけなのだ。
 さっき食べた守護者を思い出す。その中に守護者として動く因子がある。これをこの個体に受け渡せば。

「交代だ」

 オレが触れるとざわざわと毛が震える。小さかった音に反応する草ヒアーイヤーが大きくなる。

「ヨキ、下におろすんだ」
「はーい」

 音に反応する草ヒアーイヤーは二足で立ち上がる。膨張がやんだ。
 って、あれ?

「なんだか、ユーリに似てませんか?」
「似てる……」

 何でだ? オレに似た形をとったソレはゆっくりと森の中へと戻っていった。

「ユーリが守護者に」
「いや、オレはこっちだからな」
「あはは、アレが今度から森の守護者か」
「へっぽこそうだな。大丈夫か?」

 鳥双子に笑われる。代替わりは何年後だろうか。オレはさっさと代替わりすることを祈りながら街へと戻ることにした。

「なんで戻るんだ?」
「……それはな」

 まだ気がついていないのだろう。
 聞いてきた本人、ウィナを後ろから見た時に気がついた。背中から腕に黒い模様が伸びていた――。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...