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第五草
43・気づき
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「私、あなたが怪物になると聞かされて……。時間がないからと……。だから、ユーリだけでも先に会えるようにって」
目を少しうるませながらチャミちゃんが話す。
どうやら、草を集めるのはオレの為だったらしい。チャミちゃんはオレの残り時間を聞かされてアイツの言うことを聞いてここにいるようだった。
「オレは、チャミちゃんと一緒に行きたいんだ。オレだけが先に行ったって意味がない」
オレが助かってチャミちゃんが囚われるなんて言語道断だ。オレはチャミちゃんの為にここにいるんだから。
「あ、えっとその」
「大丈夫。まだ前兆はきてないから」
大切な事を伝えていなかった。
「え、前兆?」
「そう、怪物になる前に必ずあるんだ。体のどこかに黒の模様が浮かぶ。それが合図。一日だけ、猶予があるんだ」
「でも、見えないところだったら」
「あー、それはあるかもだな」
「だったら!! 今すぐ体中確かめさせて下さい」
オレは固まってしまう。
いや、あの、チャミちゃん? 体中って――。
「なぁ、で、どうするんだよ。守護者」
ウィルの声掛けにチャミちゃんの顔が赤くなった。よかった、人前で服を捲られずに済みそうだ。
いや、まあうさぎだった頃はお互いすっ裸だったけどな……。
「ご、ごめんなさい。人がいたんでした」
「あ、や……。心配なら、オレの見ることが出来ないとこはお願い……していいかな」
真っ赤なチャミちゃんは目をキョロキョロしながら小さく頷いていた。
かわりにオレは彼女の背中を確認するとしよう。
「だーかーら、守護者ぁ! どうするんだよ」
「あー、それなんだが」
「ユーリぃ! 捕まえてきた!!」
ヨキが小さい音に反応する草一匹を捕まえてきた。
「どうするの?」
「代替わりさせる」
守護者は、代々受け継がれいく。バトンを渡すだけなのだ。
さっき食べた守護者を思い出す。その中に守護者として動く因子がある。これをこの個体に受け渡せば。
「交代だ」
オレが触れるとざわざわと毛が震える。小さかった音に反応する草が大きくなる。
「ヨキ、下におろすんだ」
「はーい」
音に反応する草は二足で立ち上がる。膨張がやんだ。
って、あれ?
「なんだか、ユーリに似てませんか?」
「似てる……」
何でだ? オレに似た形をとったソレはゆっくりと森の中へと戻っていった。
「ユーリが守護者に」
「いや、オレはこっちだからな」
「あはは、アレが今度から森の守護者か」
「へっぽこそうだな。大丈夫か?」
鳥双子に笑われる。代替わりは何年後だろうか。オレはさっさと代替わりすることを祈りながら街へと戻ることにした。
「なんで戻るんだ?」
「……それはな」
まだ気がついていないのだろう。
聞いてきた本人、ウィナを後ろから見た時に気がついた。背中から腕に黒い模様が伸びていた――。
目を少しうるませながらチャミちゃんが話す。
どうやら、草を集めるのはオレの為だったらしい。チャミちゃんはオレの残り時間を聞かされてアイツの言うことを聞いてここにいるようだった。
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オレが助かってチャミちゃんが囚われるなんて言語道断だ。オレはチャミちゃんの為にここにいるんだから。
「あ、えっとその」
「大丈夫。まだ前兆はきてないから」
大切な事を伝えていなかった。
「え、前兆?」
「そう、怪物になる前に必ずあるんだ。体のどこかに黒の模様が浮かぶ。それが合図。一日だけ、猶予があるんだ」
「でも、見えないところだったら」
「あー、それはあるかもだな」
「だったら!! 今すぐ体中確かめさせて下さい」
オレは固まってしまう。
いや、あの、チャミちゃん? 体中って――。
「なぁ、で、どうするんだよ。守護者」
ウィルの声掛けにチャミちゃんの顔が赤くなった。よかった、人前で服を捲られずに済みそうだ。
いや、まあうさぎだった頃はお互いすっ裸だったけどな……。
「ご、ごめんなさい。人がいたんでした」
「あ、や……。心配なら、オレの見ることが出来ないとこはお願い……していいかな」
真っ赤なチャミちゃんは目をキョロキョロしながら小さく頷いていた。
かわりにオレは彼女の背中を確認するとしよう。
「だーかーら、守護者ぁ! どうするんだよ」
「あー、それなんだが」
「ユーリぃ! 捕まえてきた!!」
ヨキが小さい音に反応する草一匹を捕まえてきた。
「どうするの?」
「代替わりさせる」
守護者は、代々受け継がれいく。バトンを渡すだけなのだ。
さっき食べた守護者を思い出す。その中に守護者として動く因子がある。これをこの個体に受け渡せば。
「交代だ」
オレが触れるとざわざわと毛が震える。小さかった音に反応する草が大きくなる。
「ヨキ、下におろすんだ」
「はーい」
音に反応する草は二足で立ち上がる。膨張がやんだ。
って、あれ?
「なんだか、ユーリに似てませんか?」
「似てる……」
何でだ? オレに似た形をとったソレはゆっくりと森の中へと戻っていった。
「ユーリが守護者に」
「いや、オレはこっちだからな」
「あはは、アレが今度から森の守護者か」
「へっぽこそうだな。大丈夫か?」
鳥双子に笑われる。代替わりは何年後だろうか。オレはさっさと代替わりすることを祈りながら街へと戻ることにした。
「なんで戻るんだ?」
「……それはな」
まだ気がついていないのだろう。
聞いてきた本人、ウィナを後ろから見た時に気がついた。背中から腕に黒い模様が伸びていた――。
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