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第五草

42・草なら

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「それとこれとは話が別なんですーーー!!」
「だから、話はあとで聞くから!!」

 なんだか駄々をこねる子供のようにチャミちゃんは食い下がる。目にもなんだか涙が見える。
 いったい何を言われたんだ。

「とりあえず前回効いたのを」

 睡眠魔術を発動させる。

「効きますように!」

 願いも虚しく、守護者は動きを止めなかった。
 ヨキが横から蹴りをいれるがものともせず跳ね返される。
 どうする?
 やっつけずに動きを止めて逃げる……。
 考えている間も守護者はチャミちゃんを捕まえようとこちらに迫ってくる。

「こうなったら」
「何か手があるの?」
「手伝うけどよ、姉さんが危ないと思ったら俺ら逃げさせてもらうぞ」

 双子はそれぞれ左右に別れ息のあった攻撃を繰り出している。ただ、倒せないという制限で決め手にかける。姉の魔術も弟の物理攻撃も守護者を止めるまでに至らない。

「最終奥義を使う」
「最終奥義!?」

 ごくりと息を呑むウィル。
 まかせろ。オレの最終奥義……。
 オレは守護者にむかい背後をとる。大きな背中にとりつく。
 草地のような感触、そして草の香り。
 そう、こいつもまた草だ。

「黙ってオレにうめぇぇぇぇされてろ!!」

 がぶりと噛み付く。うん、草だ。オレは守護者を取り込む。

「ばっ! 何してるんだ」

 ウィルが叫んでいる。最終奥義とか言って食いかかるとか驚くわなぁ。
 まあ、取り込んでわかった。これならなんとかなりそうだ。
 守護者から離れて少し距離をとる。ヤツの標的がオレに変わったようだ。

「皆、離れてろよ」

 こっちがオレの本命!! 狙いを定めて魔術を放つ。

「必殺っ!!!! ラビブロストライクっっっ!!!!」

 オレは全力で守護者を消した。
 そう、きれいサッパリ跡形もなく。

「おぃ!! このバカっっっっ!!」
「何やってる!! このバカっっっっ!!」

 双子が揃って罵倒してくる。まあ、想定の範囲内だ。それにしてもコイツラ本当揃ってるな。右耳左耳両方痛い……。
 耳を押さえながらオレは説明を始める。

「大丈夫だって。心配ない――」

 チャミちゃんがうさぎの姿に戻ってオレに駆け寄ってきた。

「あなた達、ユーリに何するつもりですか」

 あ、そういえばまだこの二人の経緯をチャミちゃんは知らなかった。
 二人からオレを守るように立つチャミちゃん。
 オレは彼女にぎゅっと抱きついた。
 いや、寄りかかってしまったという方が正しいか。
 忘れてた、ラビブロストライクのあとは休憩がいるんだった。

「ユ、ユーリ!!」

 真っ赤な彼女を押し倒す形になってしまった。ごめん、チャミちゃん。少しだけ、休ませて……。
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