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第五草
40・ナミネとリーゼ
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「あ、っと」
ヨキのいる場所にいたのはリーゼによく似た蝶の羽の女だった。
「ナミネさん」
彼女の名前を呼んだ。ナミネはその場に佇み首を傾げる。
やはり気のせいではない。リーゼにそっくりだ。
アレクに何か言われてここにいるのだろうか。
「そこ、どいてもらっていいですか?」
ナミネはすっと横に移動する。ただ、そこにいるだけだ。
ただ、後ろから何かをされても困るのでもう一度、遠くに移動するように聞いてみる。
「もう少し向こうまで行ってもらっていいですか?」
「……」
考えるようにしているが、もう一歩だけ彼女は動く。
「アレク様にここにいろと命令されています」
やはり、邪魔するように言われているのかとオレは構える。
「ユーリ、大丈夫だ。こいつは死体だから、簡単な命令しか聞けない」
ウィナがそう言うと中の方に走っていく。
「姉さん!!」
一つあけた場所からウィルの声がする。
「ユーリ、いるのー?」
ヨキの声も向こう側から聞こえた。
「あ、あぁ」
鍵開けの魔術は流石にないが、ここのはとてもわかりやすい。取っ手の下にボタンがありそれを押せば開くようだ。
オレはそれに指を向けた。軽い感触でそれは押し込めた。
じっとただ見ている女の視線だけが気になった。
「止めないのか?」
オレはふっとそんな事を口にしてしまった。
ヨキが顔を出す。のんきに笑う顔を見て暴力など振るわれてはいないようで安心した。
「ここにいるようにしか言われてません」
リーゼに似た顔は無表情で喋る。死人……、さっきウィナが言った言葉が頭に浮かぶ。
リーゼはすでに死んでいるということなのか?
「どうしたの? ユーリ。チャミちゃんのところに行こうよ」
「少しだけ、待っててくれないか」
いったい何をするつもりなのか。自分でもわからない。だが、どうしても確かめたかった。
「変化術」
オレは二人目……。神聖術の使い手、カイの姿になった。
「なぁ、この姿に……、オレ達はどこかで会ったことはないか?」
ナミネの返事を待つ。ほんの少しの時間のはずなのに長く長く感じる。
彼女の唇はゆっくりと動いた。
「この姿は以前この街にきた人の姿を模しているので、たぶんその方とお間違いではないですか?」
そう言った瞬間、どろりと彼女は溶けた。
「この体では細かい作業に向かない為普段は命令に応じた姿をとっています」
彼女の体は大きな芋虫になっていた。体にはぐるりと何か糸のようなものが巻き付いている。
「そ、そうか」
「ね、ユーリ? 今の姿は何? 何?」
パッと姿を元に戻す。
「何でもない。それで、元になった女はどこに?」
「……、時間が終わったので次の場所に向かわせました」
……、そうかこいつらはぎりぎりまで働かせたらきちんと解放してくれるつもりだったのか。だが――。
「悪いがオレ達はぎりぎりなんて待っていられないし、バラバラにされては困るんだよ!!」
持ち時間は皆バラバラだ。つまり解放されるのもバラバラの可能性がある。
「行くぞ、ヨキ」
「ねー、さっきの姿は?」
「後で説明する」
リーゼはこの世界にいる。
オレの探し人がまさかいるとは――。ただ、会えたところで何をいうつもりなのか。
「すまないがこれを開けてもらえないか?」
ウィナが手の羽を掲げながら困っていたのでオレは代わりに開けてやった。
姉弟の再会は予想とは少し違っていた。
「何でとっとと逃げないんだ!! この馬鹿!!」
「!! 姉さんこそ、何でだよ」
抱き合うかと思えば羽のぶつけ合いをしていた。
あれが、愛情表現だったりするんだろうか。
「よし、あとはユーリのとこの耳でか女だけだろ?」
「チャミちゃんな」
「そのチャミちゃんを見つけたら、ばっくれようぜ」
ウィルとウィナは同じ顔で笑っていた。
ヨキのいる場所にいたのはリーゼによく似た蝶の羽の女だった。
「ナミネさん」
彼女の名前を呼んだ。ナミネはその場に佇み首を傾げる。
やはり気のせいではない。リーゼにそっくりだ。
アレクに何か言われてここにいるのだろうか。
「そこ、どいてもらっていいですか?」
ナミネはすっと横に移動する。ただ、そこにいるだけだ。
ただ、後ろから何かをされても困るのでもう一度、遠くに移動するように聞いてみる。
「もう少し向こうまで行ってもらっていいですか?」
「……」
考えるようにしているが、もう一歩だけ彼女は動く。
「アレク様にここにいろと命令されています」
やはり、邪魔するように言われているのかとオレは構える。
「ユーリ、大丈夫だ。こいつは死体だから、簡単な命令しか聞けない」
ウィナがそう言うと中の方に走っていく。
「姉さん!!」
一つあけた場所からウィルの声がする。
「ユーリ、いるのー?」
ヨキの声も向こう側から聞こえた。
「あ、あぁ」
鍵開けの魔術は流石にないが、ここのはとてもわかりやすい。取っ手の下にボタンがありそれを押せば開くようだ。
オレはそれに指を向けた。軽い感触でそれは押し込めた。
じっとただ見ている女の視線だけが気になった。
「止めないのか?」
オレはふっとそんな事を口にしてしまった。
ヨキが顔を出す。のんきに笑う顔を見て暴力など振るわれてはいないようで安心した。
「ここにいるようにしか言われてません」
リーゼに似た顔は無表情で喋る。死人……、さっきウィナが言った言葉が頭に浮かぶ。
リーゼはすでに死んでいるということなのか?
「どうしたの? ユーリ。チャミちゃんのところに行こうよ」
「少しだけ、待っててくれないか」
いったい何をするつもりなのか。自分でもわからない。だが、どうしても確かめたかった。
「変化術」
オレは二人目……。神聖術の使い手、カイの姿になった。
「なぁ、この姿に……、オレ達はどこかで会ったことはないか?」
ナミネの返事を待つ。ほんの少しの時間のはずなのに長く長く感じる。
彼女の唇はゆっくりと動いた。
「この姿は以前この街にきた人の姿を模しているので、たぶんその方とお間違いではないですか?」
そう言った瞬間、どろりと彼女は溶けた。
「この体では細かい作業に向かない為普段は命令に応じた姿をとっています」
彼女の体は大きな芋虫になっていた。体にはぐるりと何か糸のようなものが巻き付いている。
「そ、そうか」
「ね、ユーリ? 今の姿は何? 何?」
パッと姿を元に戻す。
「何でもない。それで、元になった女はどこに?」
「……、時間が終わったので次の場所に向かわせました」
……、そうかこいつらはぎりぎりまで働かせたらきちんと解放してくれるつもりだったのか。だが――。
「悪いがオレ達はぎりぎりなんて待っていられないし、バラバラにされては困るんだよ!!」
持ち時間は皆バラバラだ。つまり解放されるのもバラバラの可能性がある。
「行くぞ、ヨキ」
「ねー、さっきの姿は?」
「後で説明する」
リーゼはこの世界にいる。
オレの探し人がまさかいるとは――。ただ、会えたところで何をいうつもりなのか。
「すまないがこれを開けてもらえないか?」
ウィナが手の羽を掲げながら困っていたのでオレは代わりに開けてやった。
姉弟の再会は予想とは少し違っていた。
「何でとっとと逃げないんだ!! この馬鹿!!」
「!! 姉さんこそ、何でだよ」
抱き合うかと思えば羽のぶつけ合いをしていた。
あれが、愛情表現だったりするんだろうか。
「よし、あとはユーリのとこの耳でか女だけだろ?」
「チャミちゃんな」
「そのチャミちゃんを見つけたら、ばっくれようぜ」
ウィルとウィナは同じ顔で笑っていた。
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