もふもふうさぎの元最強魔術師~無実追放されたオレ。本当は草うめぇぇして引きこもっていたいけど……。草ぱわーで大事な人を守り、地上を目指す~

花月夜れん

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第四草

24・魔術師と精霊術師

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 上昇して靄へと近づいていく。中の様子は見えない。
 だがあの中にチャミちゃんは居る。

「靄の中に入るぞ!!」
「うん!!」

 勢いをそのままにヨキは中へと進む。
 ……、あの中に入った瞬間襲われるのか?
 オレは、先制攻撃を入れられるように身構みがまえる。
 突入した瞬間、まわりが真っ白になった。

「ユーリ! 光が見える」
「ん?」

 ぶわっと街の光景が広がった。大きな葉がなる植物。その植物で作ったであろう涼しげな家々。仲良く歩く人たち。漁をする人たち。ナツメとフィンと母親と……。
 真っ白な空間を予想していたけれど違った。

「なんだ、これは」
「街に着いちゃったの?」

 いや、違う。触れられないし、今はオレ達は空を飛んでいるはずなんだ。

「幻?」

 怪物らしき姿を見つけた。だが、それは怪物ではなかった。同じ様にそこに映る幻。
 怪物は一人の知らない少女とフィンに襲いかかろうとしていた。
 少女がフィンを守ろうとして、あの赤い光に触れた。

「ユーリ、あれって」

 ヨキと背が同じくらいの少女。確かめたかったがふわと幻影の様に消えてしまう。

「風の精霊よ、私達を包み込んで」

 聞き覚えのある声が聞こえた。チャミちゃんが変化した時の声だった。

「チャミちゃん!!」

 風が渦巻いている。姿は見えない。どこだ!?

「ユーリ、痛いよ」
「何!?」

 見ると、ヨキの体に大きな切り傷が数本走っていた。近寄る者をすべて切り刻む精霊術なのだろうか。

「反対に吹く風をぶつけよう」

 オレは魔術でヨキに防御魔術をかけた。
 空を飛ぶ為の術に相殺風魔術。うさぎの時よりも正確かつ、いくらでも使える気がするが、気を付けるに越した事はない。
 だが、ここどうすればいいんだ? 近寄れば、チャミちゃんの精霊術はより強くなるだろう。

「って、わぁぁぁぁぁぁ!?」

 突然、ヨキが急旋回する。危なく吹っ飛ぶところだった。だが、ヨキがそうした理由はすぐにわかった。

「空飛ぶ蛸か。どういう原理だ?」

 大きな灰色の蛸。それの中央部に人らしき顔があった。

「……なぁ、ヨキ。この前みたいにブレスで攻撃出来たりしないのか」

 牽制に使えないかとオレは考えた。あのサイズが三匹以上いるかもしれないなら、魔術使用も少し考えなくてはいけない。こっちだと草ブーストは使えないからな。

「ブレス? なんの事?」
「え?」

 蛸の腕が容赦なく伸びてくる。オレ達を捕まえようとしているのだろうか。
 動きが大きいので、避けることは出来そうだ。ヨキはかわしながら飛び続けていた。

「ブレス、ほら! 夜鳥をやっつけただろ」
「??」

 本気でわからないようだ。腕を躱しつつ首をひねっている。
 仕方がない。
 オレは蛇以来のあの魔術を使う。

氷の牢獄アイスプリズン

 うさぎの時よりも威力が違う。大きな蛸をまるごと氷で囲う。
 動きが止まったところに氷の刃を発生させた。

氷の刃アイスブレード

 蛸の真ん中にあるものを切断する。フィンに似た不思議な髪色の男の顔と目があった気がした。
 大きな蛸を内包する氷の塊は空に浮くのをやめたのか、地上へと落下していく。

「チャミちゃんのところに行こう」
「どうやって?」
「もっと上からなら中心に入れる場所があるかもしれない」
「わかった!」

 ヨキはぐんっと高度をあげた。ぐんぐんと上を目指す。風が届かないところまで。

「あそこだ!」

 風の切れ間。だがそこには同じ様に侵入しようとする怪物がいた。

「チャミちゃん!!」

 急いで後を追いオレ達も風の中に突入した。
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