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第三草

18・草も食べられます

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「朝……か……?」

 目に染みる明るい光が木々の隙間から射し込んだ。
 あれからはとくに獣がくることもなく、無事朝を迎えることが出来た。ただ、足はしびれている。
 もう、起こしたっていいよな?

「ヨキ、ほら起きろ」
「うにゅ、お父さん、いってらしゃーい。ボクもう少し寝るよぅ」

 頭をかきながら、もう一度ヨキを起こす。

「ヨキ、朝だぞ」
「あれ、……ユーリ!! おはよう」

 急に飛び起きて顎にダメージをもらった。どうやらヨキはかなりの石頭だ。まあ、消し炭にならずにすんだなら良かった。

「大丈夫ですか? ユーリ」
「あぁ、チャミちゃんもおはよう」
「おはようございます」

 たぶん一緒に起きてくれていたんだろう。チャミちゃんはあくびを何度もしていた。つられてオレもあくびをしてしまう。

「さぁ、行けるところまでいこう」
「そうですね」
「うん!」

 ぐぅぅぅとヨキのお腹からいい音が鳴った。顔を見ると赤くなって照れていた。

「あ、あはは、ごめん。なんかお腹が空いちゃって空いちゃって」

 まあ、体調が急激に治って、竜に変化して、ブレスをはいてと色々あったからな。
 成長期だろうし、何か食べられる事は良いことだ。

「朝ごはんですね。ヨキちゃん」

 草はそこら辺にたっぷり生えているのに、ヨキの飯は用意が大変だな。また、いい感じに何か来てくれるといいが。

「探すか」
「あ、待って。草でもいいよ」
「へ?」
「ボク、草も食べられるよ」
「……そうか」

 それはそれで……、こっちのオレの食う分が狙われる!?

 ◇

「あー、草うめぇー」

 三人で草を食みつつ先に進む。
 ここら辺の草は海に近いせいか塩っぽい味がする。

「見えてきましたね!」
「あれが海!?」

 穴の中にどうして海があるのかわからないが、オレの知ってる海と相違なかった。

「あぁ、あれが海だ」
「すごい水の量ですね」
「なんだかしょっぱい匂いがする」
「そりゃあ、海だからな。塩はあそこで作るんだぜ」
「へー!! どうやって!!」
「いや、どうやってって」

 どうするんだったか。海辺で干してた? うーん。

「っていうか、塩って何?」

 ヨキはそこからか!!

「塩っていうのは~」

 チャミちゃんが代打を打ってくれるようでオレはあたりを見回した。
 街がどこかにあるはずなんだが……。
 海辺は草が少ないなぁ。海藻とか食べられるのかな。って、違う違う。街だ。
 それらしいのは見当たらない。気になるのは白い靄が立ち上っている場所だが……。

「ユーリ! あったか!?」

 塩の講義が終わったようで二人が同じように横であたりを見回す。

「あそこ、何か見えないようになってるみたいですね」
「あぁ、ただ歩いていく前に確かめたいな。無駄足は踏みたくないし」
「ボクが飛んで上から見てみようか?」
「あぁ、そうだな。よし、オレと一緒に飛ぶか」
「うん!」

 ちょうど空を飛ぶ魔術のパワーアップを確認できるしな。オレは草パワーと組み合わせた飛行魔術を発動させるため草を取り出した。

「いくぜ!」

 口に草をセットしてより強力になったはず。味を思い出すよりも本物を咥えておくほうが強い力が出る気がする。あくまで気がするだけだが。

「らふぇふぅらふぁぃんふー」

 言えてないのはしょうがない。口に草があるからな。
 今言ったのは、ラビドラフライングだ。同時にヨキの翼にも魔術をかける。

「うわぁぁぁぁぁぁ」
「うぉぉぉぉぉぉぉ」

 ドラが余計だったか、上にあがるための推進力として小さな爆発を起こしたわけだが……。
 破裂草。種子を撒く際に自身を爆発させることで遠くに飛ばす。頑丈な種子は無事遠くに飛ぶが、これの直撃をくらうとかなり痛い。口にいれると爆発が楽しめるがあまりおすすめしない。小さいが威力は抜群だ。
 食べてる時、チャミちゃんに白い目で見られていた気がするのはいい思い出だ。

「ヨキ、ブレーキをかけるぞ。翼をひろげろ」

 ばさりとヨキの翼が広がる。彼女の翼に逆の力を魔術でかけた。

「うわぁ、だいぶ上がったねぇ」
「だな」

 チャミちゃんが小さい。

「えーっと、街らしき場所は……と……」

 あった。外からは見えなかったがしっかりと街があった。

「ヨキ、おりるか」
「えっと、どうやって?」
「…………」

 うーん、浮き上がったまでは良かったが動けないな。どうする? 泳ぐか?
 フライングエアーグラスのおかげで浮かぶ方はかなり魔力消費が少なくなったと思うが、あとは自由に動き回る力か……。

「ヨキこの前みたいに飛び回れないのか?」
「うーん、なんか違う?」
「む、そうなのか」

 何が違うのだろうか。あぁ、そういえばフェリが何か言ってたな。

「バカなの? ドラゴンが飛ぶのは風の魔術なの」

 ひどい言われようだった。だが、そうか。風の魔術か。

風の通り道ウィンドパス

 ヨキからチャミちゃんまで通る風の道を作る。

「あ、これならあそこまで行けそう」

 ヨキがオレを雑に掴んで戻ってくれた。戻ったオレは毛の流れがすごいことになっていた。
 色々と魔術も改良の余地がありそうだ。
 波打ち際に打ち上がっていた海藻をもしゃもしゃしながらオレは考えていた。
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