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第三草
14・焦がれた草ぁぁ!
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ドラゴン。オレが覚えてるなかで一人目、ただの剣士だった頃よりももっと昔にいたとされるそれ。
伝えられた話には、そこにあったはずの魔法皇国が忽然と姿を消した。そこに住んでいたという恐ろしい力を持つ魔法生物達もすべて国とともに消えたそうだ。その中でも最強クラスの魔法生物。
「まさかこの目でみられる日がくるとは――」
いまでは少し大きなとかげがいるくらいだ。
って、感心してる場合じゃないな。チャミちゃんとヨキは!?
大きなドラゴンが目の前に立つチャミちゃんに大きな口を向けた。
ヤバい。
そう思ったけれど、チャミちゃんに牙を向けるドラゴンの瞳が優しく光った。
「どうかな? これなら二人を乗せて向こうまで行けると思うんだけど」
ドラゴンの口からはヨキの子どもらしい声がした。
ぽかんとしているオレにドラゴンが気がついたようで声をかけてきた。
「ユーリ。ほら、ボクカッコいいだろ!」
「あ、あぁ。めちゃくちゃ格好いいよ」
「だろー。ロイスにも見せたかったな」
満足げに歯を見せるドラゴンは、恐ろしいというより、かわいく見えた。
中身がヨキだとわかっているからだろうけれど。
「でも、上に乗って大丈夫なんでしょうか?」
チャミちゃんが言うと、ヨキは上手くチャミちゃんを咥えて背中に乗せた。
「ほら、大丈夫!! ユーリも乗って乗って!」
「あ、あぁ」
上に乗せられる。ツルッとした大きな鱗。背中には頭からまっすぐと真ん中にのびる鬣のような長いふさふさした毛があった。
「ここつかんでも大丈夫か?」
「うん、しっかり持っておいてよ」
落ちないようにそれを手にぐるりと巻き付けて握る。
「いくよー!!」
「え、ちょっとまっ……」
ヨキの体にぐぐっと力が入る。
オレはチャミちゃんの確認と衝撃に備えた。
備えたが…………。
「…………どうやって飛ぶのかな?」
ずるりと力が抜けてしまった。
「そうだよな。飛んだことないよな。えーっと」
ドラゴンか。どうやって飛んでいたんだろう。
たしかにこの巨体に対して翼のサイズが小さい気がする。
「羽ばたいてみては?」
「こうかな」
ヨキはバサバサと動かすが空に浮かぶ様子は見られない。
「風の魔術で補助してあげて」
「え?」
いつの間にかオレの腕の中に小さな女の子がいた。
「うわ、誰だよ! 何でここに」
赤い髪の女の子はぎょろりと紫色の目をこちらに向けた。ぞくりとした。
彼女には額に三つ目の目があった――。
「フェリよ。不服だけど私の力じゃ、ここまでの変化しか出来ないみたい」
「なっ」
「あの、ユーリ。その子は」
チャミちゃんがじぃっと見てくる。驚くのはわかる。オレも驚いてるから。
「フェリ……あー、オレのガイドらしい。ってか、チャミちゃんにも見えるのか」
「はい、はっきりと」
「チャミミ。あなたでもいいから、風の精霊術を翼にかけてあげて」
「え?」
「ドラゴンの飛び方よ! もー、フェリがせっかく教えてるのに。はやくやってなの」
「あ、えっと、はい。風の精霊よ。加護を!風の羽」
ぶわぁっとヨキの翼に風が集まる。以前にかけてもらった時よりも風の勢いが違う気がする。
「本当は親に教えてもらって自分で風魔術をかけるんだけど、この子はまだ魔術が使えないみたいだから、はやめに教えるといいの」
親に教えてもらうという言葉がオレに重くのしかかった。
「わかった」
「なんだか、いけそう」
ヨキが翼をもう一度大きく羽ばたかせると、大きな体がふわっと浮き上がった。
「うわ、すご!! 魔術で飛ぶんだ」
「あとで、魔術の使い方教えあおう。オレの魔術でもチャミちゃんの精霊術でも使えるようにさ」
「それじゃあ行くよ!!」
ぐんっと上昇する。く、くるしい!!
チャミちゃんが風の精霊術で空気の壁をつくってくれてなんとか助かったが、移動するのも大変そうだ。
「うおぉぉぉぉぉぉ!!」
「ど、どうしました? ユーリ」
「あれ、あそこ!!」
なんてこった。食べたかったやつがすぐそこに浮いている!!
「フライングエアーグラス!! 空気に浮かび、空気から栄養をとる草!!」
うさぎの時、ずっと上を流れていくのを涙しながら見てたっけ!!
「あれ、食べていっていいか!?」
チャミちゃんはふふっと笑い、ヨキはいいよーと快く近寄ってくれた。フェリはなんかうでの中で寝てた。
わー、まじか! いったいどんな味なのか。
オレは一生懸命かき集め、服の中にもっさりといれた。フェリが迷惑そうに三つ目のひとつだけで睨んできたが、気になどしない!! あぁ、楽しみだ!!
「あの辺でいいかな」
ヨキが進む方向に、川があった。
「あぁ、あそこに行こう」
地面まで待ちきれず、小さな一本を口の中にほうりこんだ。
草うめぇぇぇぇぇ。
む、これはまさか!! 飛行魔術強化が出来るかもしれない。
さすが、飛ぶ草だ!!!!
伝えられた話には、そこにあったはずの魔法皇国が忽然と姿を消した。そこに住んでいたという恐ろしい力を持つ魔法生物達もすべて国とともに消えたそうだ。その中でも最強クラスの魔法生物。
「まさかこの目でみられる日がくるとは――」
いまでは少し大きなとかげがいるくらいだ。
って、感心してる場合じゃないな。チャミちゃんとヨキは!?
大きなドラゴンが目の前に立つチャミちゃんに大きな口を向けた。
ヤバい。
そう思ったけれど、チャミちゃんに牙を向けるドラゴンの瞳が優しく光った。
「どうかな? これなら二人を乗せて向こうまで行けると思うんだけど」
ドラゴンの口からはヨキの子どもらしい声がした。
ぽかんとしているオレにドラゴンが気がついたようで声をかけてきた。
「ユーリ。ほら、ボクカッコいいだろ!」
「あ、あぁ。めちゃくちゃ格好いいよ」
「だろー。ロイスにも見せたかったな」
満足げに歯を見せるドラゴンは、恐ろしいというより、かわいく見えた。
中身がヨキだとわかっているからだろうけれど。
「でも、上に乗って大丈夫なんでしょうか?」
チャミちゃんが言うと、ヨキは上手くチャミちゃんを咥えて背中に乗せた。
「ほら、大丈夫!! ユーリも乗って乗って!」
「あ、あぁ」
上に乗せられる。ツルッとした大きな鱗。背中には頭からまっすぐと真ん中にのびる鬣のような長いふさふさした毛があった。
「ここつかんでも大丈夫か?」
「うん、しっかり持っておいてよ」
落ちないようにそれを手にぐるりと巻き付けて握る。
「いくよー!!」
「え、ちょっとまっ……」
ヨキの体にぐぐっと力が入る。
オレはチャミちゃんの確認と衝撃に備えた。
備えたが…………。
「…………どうやって飛ぶのかな?」
ずるりと力が抜けてしまった。
「そうだよな。飛んだことないよな。えーっと」
ドラゴンか。どうやって飛んでいたんだろう。
たしかにこの巨体に対して翼のサイズが小さい気がする。
「羽ばたいてみては?」
「こうかな」
ヨキはバサバサと動かすが空に浮かぶ様子は見られない。
「風の魔術で補助してあげて」
「え?」
いつの間にかオレの腕の中に小さな女の子がいた。
「うわ、誰だよ! 何でここに」
赤い髪の女の子はぎょろりと紫色の目をこちらに向けた。ぞくりとした。
彼女には額に三つ目の目があった――。
「フェリよ。不服だけど私の力じゃ、ここまでの変化しか出来ないみたい」
「なっ」
「あの、ユーリ。その子は」
チャミちゃんがじぃっと見てくる。驚くのはわかる。オレも驚いてるから。
「フェリ……あー、オレのガイドらしい。ってか、チャミちゃんにも見えるのか」
「はい、はっきりと」
「チャミミ。あなたでもいいから、風の精霊術を翼にかけてあげて」
「え?」
「ドラゴンの飛び方よ! もー、フェリがせっかく教えてるのに。はやくやってなの」
「あ、えっと、はい。風の精霊よ。加護を!風の羽」
ぶわぁっとヨキの翼に風が集まる。以前にかけてもらった時よりも風の勢いが違う気がする。
「本当は親に教えてもらって自分で風魔術をかけるんだけど、この子はまだ魔術が使えないみたいだから、はやめに教えるといいの」
親に教えてもらうという言葉がオレに重くのしかかった。
「わかった」
「なんだか、いけそう」
ヨキが翼をもう一度大きく羽ばたかせると、大きな体がふわっと浮き上がった。
「うわ、すご!! 魔術で飛ぶんだ」
「あとで、魔術の使い方教えあおう。オレの魔術でもチャミちゃんの精霊術でも使えるようにさ」
「それじゃあ行くよ!!」
ぐんっと上昇する。く、くるしい!!
チャミちゃんが風の精霊術で空気の壁をつくってくれてなんとか助かったが、移動するのも大変そうだ。
「うおぉぉぉぉぉぉ!!」
「ど、どうしました? ユーリ」
「あれ、あそこ!!」
なんてこった。食べたかったやつがすぐそこに浮いている!!
「フライングエアーグラス!! 空気に浮かび、空気から栄養をとる草!!」
うさぎの時、ずっと上を流れていくのを涙しながら見てたっけ!!
「あれ、食べていっていいか!?」
チャミちゃんはふふっと笑い、ヨキはいいよーと快く近寄ってくれた。フェリはなんかうでの中で寝てた。
わー、まじか! いったいどんな味なのか。
オレは一生懸命かき集め、服の中にもっさりといれた。フェリが迷惑そうに三つ目のひとつだけで睨んできたが、気になどしない!! あぁ、楽しみだ!!
「あの辺でいいかな」
ヨキが進む方向に、川があった。
「あぁ、あそこに行こう」
地面まで待ちきれず、小さな一本を口の中にほうりこんだ。
草うめぇぇぇぇぇ。
む、これはまさか!! 飛行魔術強化が出来るかもしれない。
さすが、飛ぶ草だ!!!!
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