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第三草
12・先に進む為に
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出発した時と同じ様に赤いラインがあった。
乗り越えて先に進み続けると、明るい光が見えた。
「はぁはぁ」
「大丈夫か?」
「すみません、ボク外に出るの久しぶりで」
「そうか、おぶろうか?」
「大丈夫。だけど、あれが外なら少し休ませてもらってもいい?」
「あぁ、休めそうなところが近ければ、その時はおぶっていってやるから」
「ありがとう」
チャミちゃんが横についてくれているので、オレは彼女に目で合図してから先に行かせてもらう。
光の先は、風が気持ちいい場所だった。出発したのは夕方だったはずだが、朝のような明るさだ。
緑、谷、水、空が広がる。ただ、その先に赤い場所がないのが気になる。次の場所はちゃんと見つけられるか。
「はぁ、でもどうするかな」
オレはひとりごちる。下は谷。どう見ても谷。一応ある程度の足場があるもののそれ以外切り立っている崖だ。
橋でもかけてあったのだろうか。杭と繋いでたであろう短い縄のはじだけがそこにあった。
「とりあえず手前で休憩かな」
オレは後ろに振り返る。
「チャミちゃん、ここからおりる方法を考えようか」
魔術で飛ぶとしてもうさぎの魔力では途中で落ちるかもしれない。飛行魔術は難しく、魔力消費も激しい。それを三人同時になんて無理だろう。
チャミちゃんの精霊術に飛行術はあるのかな。
◇
「うーん、フレッシュなのが欲しい」
街に帰る前に摘んだ草はだいぶしなびていた。オレはそれをチャミちゃんとわけあって食べる。チャミちゃんは草がだいぶ食べられなくなってきているのだろうか。少食になった気がする。オレも今回でまた雑味が増えたかもしれない。
ヨキはロイスからもらっていた携帯食だろうか? 小さな焼き菓子を口にいれていた。食生を聞いていないが彼女は何がいいのだろうか。今後のために聞いておこう。人だった時のように、調理が必要になってくるかもしれないな。
「水の精霊よ、少しの水を出して」
チャミちゃんが手をお椀のように広げるとそこに水がちゃぽんとたまった。
「ユーリは出来るのですが、ヨキちゃんは水はどうですか?」
「あ、ボクは、そういうの出来ないから……」
「では、手を同じ形にしてください」
ヨキにも同じ様に水を出していた。女の子同士なら、気軽に話せるだろう。オレ一人だったら危なかった。
正直言うと、女の子は苦手だった。
守れなかった女の子。オレを裏切り者と言った女の子。つらい思い出が頭の中に浮かぶ。
「忘れればいいのに」
あの声が言う。忘れたくないことだってあるんだ。
「オレは下まで一度おりていくしかないかなと思ってるんだけど」
今後の話し合いを始める。余計な考え事に時間をさくつもりはない。
「せっかく心配してるのに」
あの声が拗ねたようにして、……そのままかききえた。
「あの、ガイドが変化の力を使えばいいんじゃないかって」
「ん?」
ヨキのところにも小さな光がいた。チャミちゃんのとは違うのかな?
チャミちゃんの方にも小さな光がある。どうやらそれぞれにいるみたいだ。
オレのガイドはいつ見えるようになるんだろうか。声だけのアイツ。
「変化の力って何だ?」
今この姿が、変化の力じゃないのか?
乗り越えて先に進み続けると、明るい光が見えた。
「はぁはぁ」
「大丈夫か?」
「すみません、ボク外に出るの久しぶりで」
「そうか、おぶろうか?」
「大丈夫。だけど、あれが外なら少し休ませてもらってもいい?」
「あぁ、休めそうなところが近ければ、その時はおぶっていってやるから」
「ありがとう」
チャミちゃんが横についてくれているので、オレは彼女に目で合図してから先に行かせてもらう。
光の先は、風が気持ちいい場所だった。出発したのは夕方だったはずだが、朝のような明るさだ。
緑、谷、水、空が広がる。ただ、その先に赤い場所がないのが気になる。次の場所はちゃんと見つけられるか。
「はぁ、でもどうするかな」
オレはひとりごちる。下は谷。どう見ても谷。一応ある程度の足場があるもののそれ以外切り立っている崖だ。
橋でもかけてあったのだろうか。杭と繋いでたであろう短い縄のはじだけがそこにあった。
「とりあえず手前で休憩かな」
オレは後ろに振り返る。
「チャミちゃん、ここからおりる方法を考えようか」
魔術で飛ぶとしてもうさぎの魔力では途中で落ちるかもしれない。飛行魔術は難しく、魔力消費も激しい。それを三人同時になんて無理だろう。
チャミちゃんの精霊術に飛行術はあるのかな。
◇
「うーん、フレッシュなのが欲しい」
街に帰る前に摘んだ草はだいぶしなびていた。オレはそれをチャミちゃんとわけあって食べる。チャミちゃんは草がだいぶ食べられなくなってきているのだろうか。少食になった気がする。オレも今回でまた雑味が増えたかもしれない。
ヨキはロイスからもらっていた携帯食だろうか? 小さな焼き菓子を口にいれていた。食生を聞いていないが彼女は何がいいのだろうか。今後のために聞いておこう。人だった時のように、調理が必要になってくるかもしれないな。
「水の精霊よ、少しの水を出して」
チャミちゃんが手をお椀のように広げるとそこに水がちゃぽんとたまった。
「ユーリは出来るのですが、ヨキちゃんは水はどうですか?」
「あ、ボクは、そういうの出来ないから……」
「では、手を同じ形にしてください」
ヨキにも同じ様に水を出していた。女の子同士なら、気軽に話せるだろう。オレ一人だったら危なかった。
正直言うと、女の子は苦手だった。
守れなかった女の子。オレを裏切り者と言った女の子。つらい思い出が頭の中に浮かぶ。
「忘れればいいのに」
あの声が言う。忘れたくないことだってあるんだ。
「オレは下まで一度おりていくしかないかなと思ってるんだけど」
今後の話し合いを始める。余計な考え事に時間をさくつもりはない。
「せっかく心配してるのに」
あの声が拗ねたようにして、……そのままかききえた。
「あの、ガイドが変化の力を使えばいいんじゃないかって」
「ん?」
ヨキのところにも小さな光がいた。チャミちゃんのとは違うのかな?
チャミちゃんの方にも小さな光がある。どうやらそれぞれにいるみたいだ。
オレのガイドはいつ見えるようになるんだろうか。声だけのアイツ。
「変化の力って何だ?」
今この姿が、変化の力じゃないのか?
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