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第二草
7・必殺ラビブロストライク!!
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あー、水草うめぇ。
ここは街の人達の半分が使ってる水場の源流。大きめの水たまり(いや、池か?)が出来ている。
「あの、何してるんですか? 水が危ないって」
「そうそう、だからオレは自分を治しながら調べてるのだ」
まあ、この体は毒草であろうと問題ないようで、とても便利だ。人にはない器官でもあるのかな?
まあ人だった頃も草は薬草などたまに食べていたが、毒草はさすがに食べてなかったからなぁ。
「器用ですね」
「そうだろ。あ、チャミちゃんも今なら問題ないと思うよ。どうぞ」
「遠慮しておきます」
遠慮されてしまった。美味しいのに。
オレは遠慮された水草をポイと口に放り込む。
「病気の根っこを取り除きにきたんですよね? どこにあるかわかるんですか?」
「急がなくても、もうすぐだと思うよ」
「え?」
ズンッ
大きな音がする。どうやら来たみたいだ。
「何がっ!」
警戒するようにチャミちゃんはすぐ動けるよう体勢をとる。
「こいつが原因」
大きな足が進んできた。出ていた症状と同じ黒い鱗。だが、こっちは本体。
ズンッ
オレはチャミちゃんをつれてその場から離れる。ぎりぎりそこが見える場所まで引っ張っていき、繁みへと体を隠す。
「あ、水場に座って水を飲んでます」
「だよな。水を飲みにきてるだけなんだよな」
気が進まない。あいつはただ、水を飲みに来てるだけなのだ。だけど、その時に原因のものが流れ出して下流についてしまうんだろう。根っこを取り除くには、ここから退散してもらうか、……。
「どうするんですか?」
「こうするしかないよなぁ」
オレは立ち上がって、スケイルフットの方へと走り出した。
「おい、食べ物だぞ!!」
「はぁっ!?」
チャミちゃんが驚きの声をあげている。
スケイルフットはゆっくりととかげのような顔をあげる。なんだかぬめっとしてる。
目が赤くなり、顔がゆっくり傾いた。
「っっと!!」
目の前ででかい口がしまった。
「うわぁ、首だけ伸びるのか。あっぶな」
足でおもいっきり跳び下がってなんとか免れたけれど、首だけならかなりはやい。ただ本体はゆっくりで、うごかない。これを遠くまで誘導は骨が折れるだろう。
「いきなりピンチにならないでくださいよ! ここからどうするか考えているんですか」
「うわ、チャミちゃん来たら危ないよ」
「一人より二人です。手伝います」
チャミちゃんがきたところでやることは変わらないんだよなぁ。
「トドメはオレがするから」
「――わかりました」
それだけで、察してくれたようだ。さすがオレの相棒。一緒に戦う事が出来る、懐かしい感覚。
「風の精霊の加護を! 風の羽」
自分の背中に羽が生えたかのような錯覚がした。トンっと一歩蹴るといつもよりずっとはやく動けた。
「ありがとうチャミちゃん」
これが精霊術。今はもう誰も使えない魔術。自分の魔力で起こす奇跡よりももっとすごい事が出来るらしい。オレの魔術よりも。
「来ますよっ」
「あぁ」
ずるりと首の付け根から別の顔が現れた。全部で三つ。そのうちの一つはなんだか見覚えがあった。
「あー、嫌な偶然がありそうだな」
伸びてきた首をかわして、オレは風の刃で一つを切り落とす。
「チャミちゃん! そっち」
もう一つの首がチャミちゃんのところに向かった。
「大丈夫ですっ」
ジャンプして跳び上がり落下しながら彼女は精霊術を使った。
「暴風刃」
スパスパと切り刻まれていく。ヤバい、こええぇ。
オレの相棒、オレより強くない?
チャミちゃんの耳がピクリと動く。
「ユーリ、前を」
スケイルフットの首は切られたはずなのに、減るどころか増えていた。
本体消さないとダメかな。オレは距離をとって詠唱にはいる。
チャミちゃんは首の注意を引くためか、スケイルフットの攻撃範囲内に入り走り出した。
草ストックから魔力増幅する草を選ぶ。手のひらに魔力を集中させる。よし、撃つぞ!!
「必殺っぅぅ! ラビブロストライクぅぅぅぅっ!!!!」
オレが人だった時作った名無しの魔術。魔力を固めて放ちぶつかると膨張爆発するシンプルだけど威力抜群のこれ。目の前にいる相手にも効果は抜群だったようで、大きな体は跡形もなく消えた。
「これで、もう大丈夫なんですか?」
「あ、あぁ」
こいつはたぶん一匹しかいないから……。
「あれ……」
チャミちゃんが何かに気付きスケイルフットがいた場所に近付いた。
戻ってくると手に何かのせている。
「宝石?」
木の部分が焦げてしまっていたが、何かの細工だったのだろうか。
「あの、もしかして……なのですが」
そこまで言ってチャミちゃんは口をつぐんだ。
「……あれ?」
目が回る。なんだこれ。
どさりと後ろに倒れてしまった。
「ユーリ? いったいどうしたんですか?」
チャミちゃんが心配そうにかけよってきた。
うさぎの体は、オレの鍛えていた体じゃないんだった。
「ごめん、魔力使いすぎみたいだ。回復するまで動けないかも」
オレは草ストックから魔力回復草を選んで魔力の自動回復魔術をかける。
もとの魔力がほぼ空なので一番遅いやつになってしまった。
「ごめん。少し時間がかかるかも」
「わかりました」
あぁ、次の場所に急がないとなのに、情けないな。
チャミちゃんが頭の横に座ると頭を持ち上げられた。
ふわっと柔らかい膝の上にオレの後頭部が触れる。
「ありがとう」
「いえ」
顔をじっと見られると気恥ずかしい。ぎゅっと目を閉じると、草の匂いと水が風に揺れる音を感じた。
ここは街の人達の半分が使ってる水場の源流。大きめの水たまり(いや、池か?)が出来ている。
「あの、何してるんですか? 水が危ないって」
「そうそう、だからオレは自分を治しながら調べてるのだ」
まあ、この体は毒草であろうと問題ないようで、とても便利だ。人にはない器官でもあるのかな?
まあ人だった頃も草は薬草などたまに食べていたが、毒草はさすがに食べてなかったからなぁ。
「器用ですね」
「そうだろ。あ、チャミちゃんも今なら問題ないと思うよ。どうぞ」
「遠慮しておきます」
遠慮されてしまった。美味しいのに。
オレは遠慮された水草をポイと口に放り込む。
「病気の根っこを取り除きにきたんですよね? どこにあるかわかるんですか?」
「急がなくても、もうすぐだと思うよ」
「え?」
ズンッ
大きな音がする。どうやら来たみたいだ。
「何がっ!」
警戒するようにチャミちゃんはすぐ動けるよう体勢をとる。
「こいつが原因」
大きな足が進んできた。出ていた症状と同じ黒い鱗。だが、こっちは本体。
ズンッ
オレはチャミちゃんをつれてその場から離れる。ぎりぎりそこが見える場所まで引っ張っていき、繁みへと体を隠す。
「あ、水場に座って水を飲んでます」
「だよな。水を飲みにきてるだけなんだよな」
気が進まない。あいつはただ、水を飲みに来てるだけなのだ。だけど、その時に原因のものが流れ出して下流についてしまうんだろう。根っこを取り除くには、ここから退散してもらうか、……。
「どうするんですか?」
「こうするしかないよなぁ」
オレは立ち上がって、スケイルフットの方へと走り出した。
「おい、食べ物だぞ!!」
「はぁっ!?」
チャミちゃんが驚きの声をあげている。
スケイルフットはゆっくりととかげのような顔をあげる。なんだかぬめっとしてる。
目が赤くなり、顔がゆっくり傾いた。
「っっと!!」
目の前ででかい口がしまった。
「うわぁ、首だけ伸びるのか。あっぶな」
足でおもいっきり跳び下がってなんとか免れたけれど、首だけならかなりはやい。ただ本体はゆっくりで、うごかない。これを遠くまで誘導は骨が折れるだろう。
「いきなりピンチにならないでくださいよ! ここからどうするか考えているんですか」
「うわ、チャミちゃん来たら危ないよ」
「一人より二人です。手伝います」
チャミちゃんがきたところでやることは変わらないんだよなぁ。
「トドメはオレがするから」
「――わかりました」
それだけで、察してくれたようだ。さすがオレの相棒。一緒に戦う事が出来る、懐かしい感覚。
「風の精霊の加護を! 風の羽」
自分の背中に羽が生えたかのような錯覚がした。トンっと一歩蹴るといつもよりずっとはやく動けた。
「ありがとうチャミちゃん」
これが精霊術。今はもう誰も使えない魔術。自分の魔力で起こす奇跡よりももっとすごい事が出来るらしい。オレの魔術よりも。
「来ますよっ」
「あぁ」
ずるりと首の付け根から別の顔が現れた。全部で三つ。そのうちの一つはなんだか見覚えがあった。
「あー、嫌な偶然がありそうだな」
伸びてきた首をかわして、オレは風の刃で一つを切り落とす。
「チャミちゃん! そっち」
もう一つの首がチャミちゃんのところに向かった。
「大丈夫ですっ」
ジャンプして跳び上がり落下しながら彼女は精霊術を使った。
「暴風刃」
スパスパと切り刻まれていく。ヤバい、こええぇ。
オレの相棒、オレより強くない?
チャミちゃんの耳がピクリと動く。
「ユーリ、前を」
スケイルフットの首は切られたはずなのに、減るどころか増えていた。
本体消さないとダメかな。オレは距離をとって詠唱にはいる。
チャミちゃんは首の注意を引くためか、スケイルフットの攻撃範囲内に入り走り出した。
草ストックから魔力増幅する草を選ぶ。手のひらに魔力を集中させる。よし、撃つぞ!!
「必殺っぅぅ! ラビブロストライクぅぅぅぅっ!!!!」
オレが人だった時作った名無しの魔術。魔力を固めて放ちぶつかると膨張爆発するシンプルだけど威力抜群のこれ。目の前にいる相手にも効果は抜群だったようで、大きな体は跡形もなく消えた。
「これで、もう大丈夫なんですか?」
「あ、あぁ」
こいつはたぶん一匹しかいないから……。
「あれ……」
チャミちゃんが何かに気付きスケイルフットがいた場所に近付いた。
戻ってくると手に何かのせている。
「宝石?」
木の部分が焦げてしまっていたが、何かの細工だったのだろうか。
「あの、もしかして……なのですが」
そこまで言ってチャミちゃんは口をつぐんだ。
「……あれ?」
目が回る。なんだこれ。
どさりと後ろに倒れてしまった。
「ユーリ? いったいどうしたんですか?」
チャミちゃんが心配そうにかけよってきた。
うさぎの体は、オレの鍛えていた体じゃないんだった。
「ごめん、魔力使いすぎみたいだ。回復するまで動けないかも」
オレは草ストックから魔力回復草を選んで魔力の自動回復魔術をかける。
もとの魔力がほぼ空なので一番遅いやつになってしまった。
「ごめん。少し時間がかかるかも」
「わかりました」
あぁ、次の場所に急がないとなのに、情けないな。
チャミちゃんが頭の横に座ると頭を持ち上げられた。
ふわっと柔らかい膝の上にオレの後頭部が触れる。
「ありがとう」
「いえ」
顔をじっと見られると気恥ずかしい。ぎゅっと目を閉じると、草の匂いと水が風に揺れる音を感じた。
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