狸と猫と子犬と子猫

ねこセンサー

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猫は父の不器用さを知る

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 猫も、狸さんちも。実は息子が初孫です。猫は姉さんがすでに他界しているので、従姉妹もできようがないのですが、狸さんにはお姉さんが居られまして。長年付き合っておられる彼氏さんがおられたそうですが、猫と狸さんが結婚してしばらくして、お義姉さんも結婚されました。ただ、夫婦そろって激務の職場なので、なかなかお会いする機会はありませんが…狸さんちって皆激務な方多すぎる…頑張りやさんなのかな。
 
 時々、お義母さんたちはうちまできてくださって、家事の行き届かない猫に代わってお掃除をしてくださったり、家具を買い揃えてくださったりしました。うちに来る頻度が実母より多いため、近所の方には実の親子ですかなんて言われましたが…
 
 結局実家の父には連絡はしましたが、うちにはこないので、休みをかねて実家に行くことになりました。たぬきさんはあとで駅まで迎えに来るね、といって帰省費を渡してくれました。
 
 新幹線に乗ればあっという間につくので…息子がぐずれば、座席にとどまらずに連結部分あたりであやしてやり過ごそうと思っておりましたので、とりあえずいざ実家へ。幸いなことに大きく泣くこともなく、おとなしくしてくれていたので、そのままタクシーに乗り実家へ参りました。
 
 あがって仏壇にご挨拶。猫たちにも挨拶。いきなりの赤ちゃん連れに彼らは少々ビビッて居りましたが…大きなトラブルもなく。リビングのラグの上で、転がり過ぎないようにぬいぐるみやブランケットでバリケードを作って。息子は比較的おとなしくしていてくれました。
 
 帰省して感じたのが、実家にいても、もうくつろぐことがなくなったことでしょうか。
 
 『この家は私の家ではない』そんな認識が私の中で出来上がっているようでした。
 
 自宅が、猫たちのいるここではなく、たぬきさんが待っているあの家になったということ。
 
 『私』が、独立して家庭をもったんだとその時思いました。
 
 子供たちが、猫アレルギーじゃなくて本当に良かった。
 
 猫アレルギーだったら、実家には連れて行けませんでしたよ…
 
 久方ぶりに実家の味を味わい。『濃い…』とは思いましたが(両親はかなりののん兵衛なので自然と味が濃くなるようです)、よその家庭のことなので普通に完食。息子にもご飯。
 
 お風呂は…なんと父が入れてました。実家によると、いつも父と子供たちが一緒に入るようになるのですが、あの寡黙な父が、風呂場で子供たちと談笑している…!!母からそう聞かされ、『マジか』と思いました。そして猫ババ様、台所の隅っこであなた何してるんです。壁の向こうは脱衣所、そして風呂ですね?なーに盗み聞きしようとしてるんですか。
 
 夜はさすがに息子が眠れないらしくてなかなか寝付けず、含み乳させたりして何とかねかしました(どんより)…
 
 さて帰宅しなければ、と思うと父が『駅まで連れて行く』と車へ赴き、なんと後部座席のドアを開けてくれた!ちょっとジーンとしました。
 
 息子抱いてるし、荷物も持ってるから、両手がふさがっていたので助かりましたが。父がまさかそんな思いやりのある行動をしてくれるとは…!!孫って凄いな!
 
 道中も、父の普段の運転とはかけ離れていて、内心びっくりしていました。父は基本的に沸点の低い人なので…車の運転嫌いですし…自然と荒い運転になることが多いのですが、そのときはゆっくり、ゆっくりと揺らさないように心がけているのが伝わる運転でした。
 
 まぁ無口な人なので、道中の会話はありませんでしたが・・・
 
 駅が近づいてくると、ぽつり、ぽつりと父は私に聞いてきました。
 
 「金は足りているのか」
 
 「うん、たぬきさんが余分に持たせてくれたから大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。いつもよくしてもらってるから大丈夫」
 
 「…そうか…」
 
 駅に着き、車を降りて。
 
 「気をつけて帰りなさい」
 
 「お父さんも気をつけてね」
 
 お腹に抱いた息子に、手を振らせて。父の車が見えなくなるまで、見送りました。
 
 …そうですよね、姉が死んだときあんなに錯乱して嘆き悲しんだ人ですから。
 
 残った娘ががどこの馬の骨だかわからんのにホイホイついていって、勝手に子供を産んだと思ったら。
 
 意外に大事にされていて、幸せそうにしているとわかったなら、父としては認めてくれているんでしょうね。
 
 本当に不器用な人ですね。
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