狸と猫と子犬と子猫

ねこセンサー

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猫の入院、そして近づくお別れ

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入院の経緯はあまりよく覚えていない。とにかく、しばらく休みましょうということで、郊外の病院に入院した。

どちらかと言えば高齢者の方々が多いところだったように思う。

家族は時折見舞いに来た。正直頻度もあまり覚えていない。オクスリスゴイネー。

姉とは、交換日記、交換ノートをしていた。彼女が好きな漫画のノートだった。ホラ、運命の三女神のアレだ。姉は、作者さんのすったもんだを知ったらどうしただろうか。潔癖な人だったから、ノートを投げ捨てたかもしれない。

姉は潔癖だった。崇高な思想の持ち主だったから、イマドキ若者の肉欲話などには顔をしかめていた。不倫なんてもってのほかだ。彼女ならばユニコーンをなで回せただろう。


穏やかに、日々は過ぎた。退屈ではあったが、飽きるほど寝たし、ぼんやりしていた。確か個室だったから、周りに気兼ねすることもなかった。チキンハートなので、大騒ぎするなんてとてもじゃないができない。私は小市民です。

だから、姉の異変には気づけなかった。あとから知ったが、母は危機感を抱いていたらしい。段々と目が離せなくなっていたようだ。そりゃ、娘がわざとやけどしたりしてれば、さすがに気づくだろう。

ただ、うちはしがない中流家庭。精神科に二人入院させるなんて、お財布的にも辛かったんだろう。

夫婦仲も悪かったから、私らに関しての話し合いもあまり行われなかったはずだ。お互い、蛇蝎の如く嫌っていたのだから。

そんな隙を、姉は狙っていたのだろう。

自分が解放される、その瞬間を。

身辺整理を、少しずつ行いながら。




マンションなんか、住むもんじゃない。

高さになれてしまう。すうっと、地面が呼んでいるような気になってしまう。

あそこに飛び込めば、楽になれる。

きっと、苦しまないはず。

だって、あんなに近くに見えるから。






ほら、ね。
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