2 / 4
こんにちは。
しおりを挟む
朝。
同じような一日が、今日も始まる。
メイドに起こされ、毎朝の習慣を一つ。
「ステータスオープン」
あら、今日のステータスは・・・
人名が並び、その横にハートマークが並ぶ。
…あ、親密度ね…いつの間にほかの要素が混じったか。
ああ、噴水広場の彼か。対象だったのね。しかし、この開放条件えげつないわね…
『一日一回声をかけると百回目で攻略可になる』…いやー、彼モブっぽかったし。その条件を知らず、適当に毎日超えかけをしていた私は偉いわ。
…おばあちゃんに、挨拶はしっかりしなさいって耳にたこが出来るくらい言われたからね…
私おばあちゃんっこだったもので。
遠くなった昔を懐かしみながら、いつものように屋敷を巡りつつ外に出る。
噴水広場の彼はどこかな…ときょろきょろしてみると。
彼はいなくなっていた。その代わりに、別の人間がいることに気づく。
「こんにちは」
人にあったらとりあえず挨拶だよね。人んちにいきなり入ってツボ割ったりたんすの中あさったりしないわよ私は。一応私は地方都市の豪商の娘なんで。そういう、設定なので。世界を救う勇者じゃないの。
内心色々考えつつ、彼がいつもいた位置に立ち尽くす小さな女の子に声をかける。
「こんにちは!お兄ちゃん知らない?いつもここに散歩に来ているって聞いたんだけど」
彼女は私の声かけにすらすらと答えた。会話のキャッチボール。そこに、会話の途中に割り込むとか、会話を終了させるだとかそういうことは一切起こらない。
そうか、この子はあのお兄さんの妹なのね。横目でステータスを表示させ、彼の個人プロフィールを眺める。そこには、先程にはなかった小さな妹の供述が。情報が公開されたんだね。
今度はこういう趣向なのか。昨日まで眺めていた、力だとか知力だとかそういうステータスはなりをひそめ、そこには相手キャラクターと私個人のプロフィール、好感度がずらりと並ぶ。
しばらくはこの世界が続くのだろうな。
もう一度目の前の妹さんに話しかけ、情報が出尽くしたと感じたので他の人たちにも話しかけ、適当に広場をぶらついた後はさっさと屋敷に帰宅して読みかけの本を読んで過ごした。
…こういう趣向はあまり好きではないのだ。
彼らは、私自身を見ているわけではないのだ。それが痛いほど理解できているから、私はこの趣向には共感できなくなってしまった。…昔は、好きだったんだけどね。**といっしょに遊んだ日。私は引っ込み思案だったから、***ばかりで。私は彼女を自宅に呼んで、ひたすら***ばかりしていた。***は、私のことをどう思っていたのだろう。…ああ、頭が痛い。
世界が望まないことをしようとすると、このような頭痛にさいなまれる。これを感じるたびに感じる、胸をかきむしるような孤独。私一人が、この世界の特異点。ああ、望んでこうなったはずなのに。
ギリギリと頭を締め付ける痛みに本を取り落として頭を抱える。だめ、だめ。ふらふらと立ち上がり、そのまま私は自室のベッドへとダイブした。
その瞬間、自分の意識がふわりと遠ざかり、緩やかな眠りの世界に引き込まれていくのを感じる。私の寝つきは、最強に良い。寝れば、全てが回復するから。ああ、この痛みもなくなるだろう。
…心配しているかな、お母さん。…意識が完全に塗りつぶされる前、記憶の彼方においてきたはずの母の顔が、一瞬だけ脳裏に浮かんだ。
同じような一日が、今日も始まる。
メイドに起こされ、毎朝の習慣を一つ。
「ステータスオープン」
あら、今日のステータスは・・・
人名が並び、その横にハートマークが並ぶ。
…あ、親密度ね…いつの間にほかの要素が混じったか。
ああ、噴水広場の彼か。対象だったのね。しかし、この開放条件えげつないわね…
『一日一回声をかけると百回目で攻略可になる』…いやー、彼モブっぽかったし。その条件を知らず、適当に毎日超えかけをしていた私は偉いわ。
…おばあちゃんに、挨拶はしっかりしなさいって耳にたこが出来るくらい言われたからね…
私おばあちゃんっこだったもので。
遠くなった昔を懐かしみながら、いつものように屋敷を巡りつつ外に出る。
噴水広場の彼はどこかな…ときょろきょろしてみると。
彼はいなくなっていた。その代わりに、別の人間がいることに気づく。
「こんにちは」
人にあったらとりあえず挨拶だよね。人んちにいきなり入ってツボ割ったりたんすの中あさったりしないわよ私は。一応私は地方都市の豪商の娘なんで。そういう、設定なので。世界を救う勇者じゃないの。
内心色々考えつつ、彼がいつもいた位置に立ち尽くす小さな女の子に声をかける。
「こんにちは!お兄ちゃん知らない?いつもここに散歩に来ているって聞いたんだけど」
彼女は私の声かけにすらすらと答えた。会話のキャッチボール。そこに、会話の途中に割り込むとか、会話を終了させるだとかそういうことは一切起こらない。
そうか、この子はあのお兄さんの妹なのね。横目でステータスを表示させ、彼の個人プロフィールを眺める。そこには、先程にはなかった小さな妹の供述が。情報が公開されたんだね。
今度はこういう趣向なのか。昨日まで眺めていた、力だとか知力だとかそういうステータスはなりをひそめ、そこには相手キャラクターと私個人のプロフィール、好感度がずらりと並ぶ。
しばらくはこの世界が続くのだろうな。
もう一度目の前の妹さんに話しかけ、情報が出尽くしたと感じたので他の人たちにも話しかけ、適当に広場をぶらついた後はさっさと屋敷に帰宅して読みかけの本を読んで過ごした。
…こういう趣向はあまり好きではないのだ。
彼らは、私自身を見ているわけではないのだ。それが痛いほど理解できているから、私はこの趣向には共感できなくなってしまった。…昔は、好きだったんだけどね。**といっしょに遊んだ日。私は引っ込み思案だったから、***ばかりで。私は彼女を自宅に呼んで、ひたすら***ばかりしていた。***は、私のことをどう思っていたのだろう。…ああ、頭が痛い。
世界が望まないことをしようとすると、このような頭痛にさいなまれる。これを感じるたびに感じる、胸をかきむしるような孤独。私一人が、この世界の特異点。ああ、望んでこうなったはずなのに。
ギリギリと頭を締め付ける痛みに本を取り落として頭を抱える。だめ、だめ。ふらふらと立ち上がり、そのまま私は自室のベッドへとダイブした。
その瞬間、自分の意識がふわりと遠ざかり、緩やかな眠りの世界に引き込まれていくのを感じる。私の寝つきは、最強に良い。寝れば、全てが回復するから。ああ、この痛みもなくなるだろう。
…心配しているかな、お母さん。…意識が完全に塗りつぶされる前、記憶の彼方においてきたはずの母の顔が、一瞬だけ脳裏に浮かんだ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

過程をすっ飛ばすことにしました
こうやさい
ファンタジー
ある日、前世の乙女ゲームの中に悪役令嬢として転生したことに気づいたけど、ここどう考えても生活しづらい。
どうせざまぁされて追放されるわけだし、過程すっ飛ばしてもよくね?
そのいろいろが重要なんだろうと思いつつそれもすっ飛ばしました(爆)。
深く考えないでください。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです
かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。
強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。
これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる