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42話

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 信頼できる者を考えたとき、真っ先に浮かぶのはここにはいない者たちばかり。幼少のころによくしてくれていた執事や侍女は引退するか、先代国王の療養地に移っている。そして長年身近にいて接してきたルシアンとクリスティーナは、すでにこの国と発っているだろう。

 執事や侍女は先代国王や王妃に長年仕えていて、彼らの身の回りの世話を何くれとなく行える人材として、療養地にともに向かったのだから、ここにいないのは当然だ。
 だがルシアンとクリスティーナはそうではない。臣下として妻として、ラファエルを支えてくれるはずだった。
 そんな彼らを突き放したのは、ラファエル自身。弱みを見せることもできず、城から追い出し、色あせてしまったことに落胆し、背を向けた。

「僕は、なんのために……」

 完璧な王になろうと思っていたのか。最初はクリスティーナのためだったはずなのに、いつから自分のためになっていたのか。
 どうして色あせてしまったと思ったのか。彼女は変わっていないと信じることができなかったのか。

 もしも信じ続けていれば、今も変わらず彼女はラファエルの横で微笑んでいただろう。
 もっと優しい言葉をかけてあげられていれば、労わり、思いやっていれば。

 だがいくらそんなことを考えても、時間を戻すことはできない。

 ラファエルに残されたのは、誰か味方かもわからない環境だけ。

「……クリスティーナ」

 もしも彼女がまだここにいたのなら、なんと言っただろうか。呆れたのか、怒ったのか。それすらもわからない。
 それでも今、彼女の声を聞きたいと願わずにはいられなかった。どんな小言だろうと、今ならば聞き入れるから、と。

 だが戻ってこいと願ったとしても、彼女は聞き入れることはないだろう。ラファエルのそばにいるよりも死を選び、生き延びてからもラファエルのもとには戻ってこなかった。
 守れるほどラファエルは強くないのだと、そして支え合うほどの信頼関係は築けていなかったのだと、見限られ、突き放された。

 「何が、完璧な王だ……」

 大切だったはずのものを守ることもできず、信頼できる者もいない。
 これのどこが完璧なのか。

 そしてこれからは、なんのために、誰のために王を続けていくのか。
 自らも含めて、少女ひとりすら守れなかったこの地になんの価値があるのか。
 王として立つ意義すらも見失い、ラファエルはただ空虚な笑いだけを漏らした。
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