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(第19話)伊藤がついに現れた。飛んでくるナイフを交わす僕。マコト、無事でいてくれ!
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その時、突然向こうにあるメリーゴーランドが光りだした。
頂上から台にかけて順々にライトアップされ、
まるで王宮のように照らし出す。
開始ベルが遊園地内に鳴り響いた。
金の棒に繋がれた馬たちはゆっくりと回り出した。
そこから明るくお洒落な音楽と温かな光が溢れ出す。
静寂を打ち破りメリーゴーランドだけが狂ったように鳴っていた。
しばらく見惚れていると馬に跨っている人物を見つけた。
「―――マコトぉ!」
僕はベンチから手を離しメリーゴーランドまで駆けつけた。
近づくにつれてマコトの姿がだんだんと見えてくる。
ジーンズ姿のマコトは気絶をして縄に括りつけられていた。
回っているメリーゴーランドまで辿り着いた僕はやっと台にあがれた。
「マコト!今助けに行くよ!」
馬の間を縫ってマコトのもとへと駆けつける。
「マコトっ………マコトっ!」
両肩をつかんで呼びかけるとマコトは顔を上げた。
「違う!オマエは誰だ!」
サングラスをかけた面長の女だった。
険しい顔をした女は縄を解き、後ろからナイフを走らせてきた。
「クッ―――っ!」
迂闊に女の攻撃を受けてしまった。
右手の甲から温かい血が流れ落ちる。
僕は痛みを堪えて女から数歩後退りをした。
「オホホホ……」
マコトの恰好をした女は笑い、ナイフの先を振りかざして見せた。
「貴様はだれだ!マコトをどこへやった!」
僕は犬のように吠えた。
「オホホホ慌てないで。あそこにいるわよ」
女の指さす方向を見ると、馬車の中からマコトの姿が見えた。
下着姿で口にテープをつけられたマコトは
恐怖と寒さに震えて叫び続けている。
「貴様は何が望みなんだ。マコトを今すぐに解放しろ!」
女はフフンと口角をあげる。
「アナタは愛する女がいるというのに浮気をした。
今ここで罰を受けなさい」
女は指をパチンと鳴らすと、どこからともなく黒いフードを深く被った背の高い男が現れた。
男の手からキラリと光るものが見えたので反射的に交わす。
すると僕の後ろにあった馬の鼻面に3本のナイフが突き刺さっていた。
(なんて命中率なんだ……)
脇の下は冷汗でビッショリとなった。
ニヤリとさせた男は懐からまたナイフを投げ飛ばす。
柱の陰に隠れようと思ったが目の前に4本のナイフが飛んできた。
避ける間もなく、背広の両肩と頭上にナイフが刺さり、磔となってしまう。
股すれすれにも最後の1本が突き刺さった。
「ハハハハ。なんて顔をしてるんだよ。小便ちびったんじゃねーのかい?」
風の勢いで男のフードがとれる。
男の顔が露わになり僕は驚愕してしまった。
「よう。久しぶりだなスケオ」
「お、オマエ……伊藤じゃないか!なんでこんなところに!」
伊藤は肩をすくめて嘲笑した。
「オマエだってなんでこんな所にきたんだよお?え?
マコトなんかさ…へへ…。見殺しにしたっていいのにさ。
ノコノコ出てきてオマエもお馬鹿ちゃんだな!」
「な、何を言ってる!マコトは僕の大切な後輩なんだ。
僕には最後まで守る義務がある!」
伊藤は急に、汚い物を見る顔になりペッと吐き捨てた。
「俺はな。前々からお前のことが邪魔だったのさ。
いつも正義のヒーロー面(づら)をしやがって。
俺はそういう良い子ちゃんぶっている所が大っ嫌いだったのさあ!
反吐がでる!
俺の方が仕事ができるし、女にもモテるし、社長からも好かれている。
けど、俺みたいにセコい事をしなくてもオマエは社内の人気を集めている。
俺が日ごろどれだけ惨めな思いをしているのか分かってねーダロ?
世の中はそんなに甘くねーんだ!
いま、その証明をしてやるよ!」
伊藤は狂ったように駆け寄り凶器を投げ飛ばした。
僕は磔になった背広を脱ぎ捨てて避けることに成功した。
「ケケケケ。鬼ごっこかーい?」
伊藤は柱に刺さったナイフを抜き取り、懐にまた入れた。
僕はできるだけ遠くに離れて馬車の後ろに隠れる。
伊藤はクルリと踊ってひょうきんな顔をしていた。
「アッレー!今度はかくれんぼかい!いいぜぇ!ヘヘ!」
目を血走らせた彼は僕が逃げた方向へとナイフを投げ飛ばす。
「どっこだーい。逃げてないでこっちに来いよ!ははーーー!」
彼は奇声をあげて、こちらに向けて投げ飛ばす。
ナイフは僕の隣にある馬の両目と鼻先に突き刺さった。
伊藤はにじり寄ってきた。
僕の心臓はうるさく鳴ってくる。
ついに僕がいる所に向けて彼は投げ飛ばした。
僕は俊敏に避け、柱の後ろにサッと隠れる。
「おーい。スケオくーん。出て来いよー弱虫くーん」
伊藤の影が柱から見える。
手の汗をズボンで拭い、ベルトに差していた護身用のダンベルを掴んだ。
「うぉおおおおおおおおおおおおおお!」
僕は捨て身で飛び出し伊藤の頭を殴りつけた。
見事に命中した。伊藤は呻いて後ろへとぶっ倒れる。
額から血を流し、白目を剥いて泡を口から吹き出していた。
(や、やば。死んだかも)
頭から血の気が引いてくる。
だがこれは正当防衛だ!罪は問われない!
僕は血のついたダンベルを拾いあげてベルトに差し込んだ。
(つづく)
頂上から台にかけて順々にライトアップされ、
まるで王宮のように照らし出す。
開始ベルが遊園地内に鳴り響いた。
金の棒に繋がれた馬たちはゆっくりと回り出した。
そこから明るくお洒落な音楽と温かな光が溢れ出す。
静寂を打ち破りメリーゴーランドだけが狂ったように鳴っていた。
しばらく見惚れていると馬に跨っている人物を見つけた。
「―――マコトぉ!」
僕はベンチから手を離しメリーゴーランドまで駆けつけた。
近づくにつれてマコトの姿がだんだんと見えてくる。
ジーンズ姿のマコトは気絶をして縄に括りつけられていた。
回っているメリーゴーランドまで辿り着いた僕はやっと台にあがれた。
「マコト!今助けに行くよ!」
馬の間を縫ってマコトのもとへと駆けつける。
「マコトっ………マコトっ!」
両肩をつかんで呼びかけるとマコトは顔を上げた。
「違う!オマエは誰だ!」
サングラスをかけた面長の女だった。
険しい顔をした女は縄を解き、後ろからナイフを走らせてきた。
「クッ―――っ!」
迂闊に女の攻撃を受けてしまった。
右手の甲から温かい血が流れ落ちる。
僕は痛みを堪えて女から数歩後退りをした。
「オホホホ……」
マコトの恰好をした女は笑い、ナイフの先を振りかざして見せた。
「貴様はだれだ!マコトをどこへやった!」
僕は犬のように吠えた。
「オホホホ慌てないで。あそこにいるわよ」
女の指さす方向を見ると、馬車の中からマコトの姿が見えた。
下着姿で口にテープをつけられたマコトは
恐怖と寒さに震えて叫び続けている。
「貴様は何が望みなんだ。マコトを今すぐに解放しろ!」
女はフフンと口角をあげる。
「アナタは愛する女がいるというのに浮気をした。
今ここで罰を受けなさい」
女は指をパチンと鳴らすと、どこからともなく黒いフードを深く被った背の高い男が現れた。
男の手からキラリと光るものが見えたので反射的に交わす。
すると僕の後ろにあった馬の鼻面に3本のナイフが突き刺さっていた。
(なんて命中率なんだ……)
脇の下は冷汗でビッショリとなった。
ニヤリとさせた男は懐からまたナイフを投げ飛ばす。
柱の陰に隠れようと思ったが目の前に4本のナイフが飛んできた。
避ける間もなく、背広の両肩と頭上にナイフが刺さり、磔となってしまう。
股すれすれにも最後の1本が突き刺さった。
「ハハハハ。なんて顔をしてるんだよ。小便ちびったんじゃねーのかい?」
風の勢いで男のフードがとれる。
男の顔が露わになり僕は驚愕してしまった。
「よう。久しぶりだなスケオ」
「お、オマエ……伊藤じゃないか!なんでこんなところに!」
伊藤は肩をすくめて嘲笑した。
「オマエだってなんでこんな所にきたんだよお?え?
マコトなんかさ…へへ…。見殺しにしたっていいのにさ。
ノコノコ出てきてオマエもお馬鹿ちゃんだな!」
「な、何を言ってる!マコトは僕の大切な後輩なんだ。
僕には最後まで守る義務がある!」
伊藤は急に、汚い物を見る顔になりペッと吐き捨てた。
「俺はな。前々からお前のことが邪魔だったのさ。
いつも正義のヒーロー面(づら)をしやがって。
俺はそういう良い子ちゃんぶっている所が大っ嫌いだったのさあ!
反吐がでる!
俺の方が仕事ができるし、女にもモテるし、社長からも好かれている。
けど、俺みたいにセコい事をしなくてもオマエは社内の人気を集めている。
俺が日ごろどれだけ惨めな思いをしているのか分かってねーダロ?
世の中はそんなに甘くねーんだ!
いま、その証明をしてやるよ!」
伊藤は狂ったように駆け寄り凶器を投げ飛ばした。
僕は磔になった背広を脱ぎ捨てて避けることに成功した。
「ケケケケ。鬼ごっこかーい?」
伊藤は柱に刺さったナイフを抜き取り、懐にまた入れた。
僕はできるだけ遠くに離れて馬車の後ろに隠れる。
伊藤はクルリと踊ってひょうきんな顔をしていた。
「アッレー!今度はかくれんぼかい!いいぜぇ!ヘヘ!」
目を血走らせた彼は僕が逃げた方向へとナイフを投げ飛ばす。
「どっこだーい。逃げてないでこっちに来いよ!ははーーー!」
彼は奇声をあげて、こちらに向けて投げ飛ばす。
ナイフは僕の隣にある馬の両目と鼻先に突き刺さった。
伊藤はにじり寄ってきた。
僕の心臓はうるさく鳴ってくる。
ついに僕がいる所に向けて彼は投げ飛ばした。
僕は俊敏に避け、柱の後ろにサッと隠れる。
「おーい。スケオくーん。出て来いよー弱虫くーん」
伊藤の影が柱から見える。
手の汗をズボンで拭い、ベルトに差していた護身用のダンベルを掴んだ。
「うぉおおおおおおおおおおおおおお!」
僕は捨て身で飛び出し伊藤の頭を殴りつけた。
見事に命中した。伊藤は呻いて後ろへとぶっ倒れる。
額から血を流し、白目を剥いて泡を口から吹き出していた。
(や、やば。死んだかも)
頭から血の気が引いてくる。
だがこれは正当防衛だ!罪は問われない!
僕は血のついたダンベルを拾いあげてベルトに差し込んだ。
(つづく)
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