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公爵令嬢vs王太子

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 王太子エドワードが、精鋭の宮廷魔導師や近衛騎士を率いて俺たちを襲撃しに来た。もちろん、ここで俺やマクダフを殺すだけでなく、悪役令嬢のルシアとソフィアの身柄を確保するつもりなのだろう。

 そうすることで、王太子は、第一王女フィリアの復活という究極の目的を達成することができる。

 子爵家の屋敷は半分ほど吹き飛ばされ、しかも完全に包囲されている。当主のライラさんをちらりと見る。彼女は重傷のようで、血を流しながら倒れている。

 すぐにでも助けたいところだが、まずは王太子をなんとかしないといけない。

「わざわざお越しいただけるとは助かりました、王太子殿下。こちらからも殿下を諌めに参らないと考えていたところでして」

 俺はあえてとぼけてみせる。王太子は無表情だった。

「クリス・マーロウ、貴様は自分を過信している。我々はアストラル魔法を使えるのだよ」

 かつて帝都を壊滅に追い込んだアストラル魔法。その秘密をマグノリア王国は、アルカディア公爵を拷問することで手に入れた。
 その力を、王太子や聖女アリアは共有している。もちろん脅威には違いない。
 だが――。

「所詮、力は力に過ぎません。殿下は、大戦中、何の実績も挙げることのできませんでした。どうしてそのような方を怖れることがありましょうか」

 俺の言葉に、王太子エドワードはぴくりと眉を上げる。俺は、王太子が一番言われたくないだろうことを言った。
 第一王女フィリアや第三王女ルシアは、宮廷魔導師団団長として、大戦での勝利に大いに貢献した。二人の実力は、王族以外の人間を含めても、群を抜いていた。

 一方で、王太子エドワードは、魔法の才能はなく、軍務に就くこともなく、大戦で前線に立つことはなかった。
 もちろん、これはエドワードが無能だからというわけではない。フィリアやルシアが優秀すぎたのだ。

 けれど、エドワードはそのことを気にしているだろう。
 俺は動揺を誘うために畳み掛ける。

「仮にフィリア殿下を蘇らせたとしても、フィリア殿下は王太子殿下に感謝しないでしょうし、特別な思いもないでしょう。フィリア殿下の意思を継いだのは、宮廷魔導師としての私であり、ルシア様だからです」

「そうだとしても、私は姉上に会いたいのだ。君こそ姉上の弟子だろう。だが、フィリアという師を死から救うこともできなかった」

「そうですね、私は――俺は全知全能の人間ではありません。フィリア殿下は俺にとっても特別な人間だった。けれど……俺にできるのは今生きている人間を守ることだけですよ」

 ルシアとソフィアが俺の後ろで、そっと俺の服の袖をつかむ。
 そう。

 俺はルシアとソフィアを守り、マクダフとともに戦い、そしてクレハを取り戻さなければならない。それが今の俺の義務だ。

 エドワードは薄く笑う。

「一応聞くが、そこの女二人を引き渡すつもりはないか。フィリアの蘇生に協力するというのなら、君の命だけは助けてやろう」

「お言葉ですが、王太子殿下。立場が逆です」
 
 俺の言葉に、王太子は怪訝な顔をする。
 ルシアが一歩前に進み出て、赤い美しい髪をかき上げ、まっすぐにエドワードを見つめる。

「兄上……いえ、エドワード・マグノリア。今、あなたがこの場で降伏すれば、新たな女王たる私に臣として仕えることを認めましょう。そうでなければ、あなたに待っているのは……その非道にふさわしい惨めな死のみです!」

 エドワードは呆然とした様子で、そしてみるみる顔を赤くした。
 彼は腰から剣を抜くと、まっすぐに俺たちに振りかざし、部下たちに号令をかけた。

「次の王であるエドワード・マグノリアの名の下に命じる。あの逆賊共を……始末しろ」

 宮廷魔導師たちが一斉に攻撃魔法を放つが、その攻撃は俺とルシアの防御魔法による術式によって防がれる。

 その次に王太子エドワードが、剣を薙ぎ払うような仕草をする。途端に青く輝く不思議な光が生じる。

 今展開している防御魔法は、通常のエーテル魔法によるもので、アストラル魔法を受け止められない。
 しかし――。

 俺たちの目の前に、新たな光の壁が現れ、王太子の魔法を弾き返した。

「あなたの相手はわたしよ、王太子エドワード!」

 ソフィアが進み出る。その青く美しい瞳は、怒りに燃えていた。

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