そのポーター、実はダンジョンマスターにつき

G.G

文字の大きさ
上 下
21 / 32

第二十話 新しい仲間

しおりを挟む
これは連続投稿すべきじゃないかと思いました。
ぽちっとな。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


アルシオの言葉をすぐに理解できなかった。
何と言った?僕たちを保護?
「君が正体を隠したがっている理由は分かる。サーダイル帝国のガザ侯爵が君を消したがっているんだ。どうやら君が復讐を企んでいると疑っているらしい」
「馬鹿馬鹿しい。僕は仲間達と平和に過ごせれば良いんです」

「君が心底そう願っているのはちゃんと伝わっているよ。害するものに容赦も無い事もね」
「で、僕にどうしろと?」
「君たち、ファミリアを結成しないか?私が後ろ盾になる。拠点はあのねぐらじゃ余りにお粗末だから、誘拐団の使っていたアジトはどうだ?」

ちょっと待て!どうして僕と同じ事を考えているんだ?
アルシオって何者なんだ?
「昨日、ちょうどその相談をしていた所なんです。驚いたな」
「おお、それは話が早い。それで少しお願いがあるんだが」
「はい?」

「実は誘拐されていた人達を元の場所に戻していたんだが、行き場の無い子が三人居てね、できれば君たちに引き受けてほしい」
「はあ?」
「あ、君の一存では決められないだろうから、明日にでもその子達と会ってくれないかな」
「はあ」

この人は苦手だ。
なにか、手の平で転がされている感じがする。

「さて、やっと本題に入れるな。あの誘拐団は各国から懸賞金付きで指名手配されている重罪人でね。今回捕らえた頭目から他の支部の頭目やアジトが聞き出せた。そっちは結果次第だと思うが、取り敢えず今回分の報償だ。金貨二百十二枚」
「……」驚きのあまり声が出ない。前世換算二千百二十万円……

「で、これで少し私のポーター依頼に応えてくれると嬉しいんだけどね。いやいや、強制じゃ無いよ」にっこり。
こいつ、悪魔だ。

その日帰ってからターニャ達と相談した。壊れたねぐらは有り合わせのぼろ布で囲って何とかカモフラージュを続けているけど、本当に潮時だと思う。
ターニャのアルシオへの印象はそんなに悪くなく、結局、話に乗る事にした。

ところで新しく仲間になりそうな三人が気になった。
ダンジョンの目で居場所を探す。領兵詰め所の一室に居た。
ステータスを確認する。

―――――――――――――――――――――――
名前:ヤンニシャリラ(12)
種類:エルフ(呪い)
体力:15
攻撃:12
敏速:28
防御:20
器用:45
知性:113
魔力:1720
スキル:
―――――――――――――――――――――――

おおっ!エルフだ。初めて見る。
でも、見た目ミルカとあまり変わらない。エルフだからか?
魔力が1720もある。なのに何で攫われた?
ああ、スキルが無い。魔法が使えないのか。呪いってあるから、そのせいかも。

―――――――――――――――――――――――
名前:クエンタ(11)
種類:獣人
体力:91
攻撃:23
敏速:84
防御:20
器用:72
知性:55
魔力:21
スキル:遠見lv1
―――――――――――――――――――――――

獣人も初めて見る。年齢にしてはステータスが高い。種族特性なのか。
攻撃が低いのは育ちかもしれない。遠見のスキルがあるって事は逃げ回っていたのかな。

―――――――――――――――――――――――
名前:アリーシェ(18)
種類:人族
体力:88
攻撃:31
敏速:72
防御:68
器用:172
知性:112
魔力:780
スキル:錬成lv2・料理lv1
―――――――――――――――――――――――

この子は普通に人間だ。
魔力は多いが、スキルが錬成だから生産職なのか。

いずれも弱い。アンザックで生き抜くにはステータスを上げる必要がある。
それにはブートキャンプってわけだが、僕がダンジョンマスターってのがばれる。
新入りさんは秘密が守れるだろうか?

――従魔契約が結べます。
なに?相手は人間だぞ。
――問題ありません。相手が受け入れるなら生命体、疑似生命体であれば可能です。
うーむ、条件はつけられるか?例えば秘密厳守に限るとか。
――可能です。
なら良いか。全縛りだとさすがに人道にもとるからな。僕はこれから仲間になる人達に、隷従するような縛りを掛けたくない。

翌日、全員で詰め所に行き、三人に会う。
詰め所の裏の簡易宿舎の一室。二段ベッドの片側に三人が座っていた。
アルシオはその横に腰を下ろす。
僕たちはその向かいに腰掛けた。

「この人達が君たちを受け入れてくれる人達だ。さあ、自己紹介兼状況説明といこうかな」
アルシオが三人に促す。

「アリーシェと言います。夫と一緒に錬成工房を営んでいました。でも、先日あの賊がなだれ込んできて、工房はメチャクチャ、夫は目の前で…………」
アリーシェは手で顔を覆い、必死に涙を堪える。
「すみません、もう工房も建て直す余力も無く、途方に暮れるばかりです。何ができるか分かりませんが、お役に立てるよう頑張りますので、よろしくお願いいたします」

「俺、クエンタ。村じゃ尻尾無しって馬鹿にされて、誰も相手にしてくれねえ。あげくは追い回して虐めるんだ。そいで、腹あ決めて村を飛び出したまでは良かったんだけど、あいつらに捕まっちまった。村には戻る気はねえ。仲間に入れてくれたら一生懸命やる。お願いだ」
ぴょこんと頭を下げた。なるほど、お尻には兎の尻尾のように、チョコンと丸いものがくっついている。それで尻尾無しか。

「わたしはヤンニシャリラ。エルフなのに魔法が使えません。それで誘拐団に売られました。もう里には戻れません。こんなわたしでも引き取って頂けるでしょうか?」
目を伏せて不安そうに肩を落とす。いや、耳を垂らす。自由に動くんだな、あの耳。

オルトが立ち上がってまず、僕たちの紹介をする。
それからターニャが立ち上がって言った。
「過去の事情も能力も関係ない。仲間のために体を張る覚悟はあるかい?」
三人が一斉に頷いた。

「それじゃあ、これから皆仲間だ!」
「よーし、皆でファミリアの登録に行こう!」
「ちょっと待て。ファミリアの名前、決めてない。今、皆で決めよう」
「えー、そんなの聞いてない」
「昨日言ってくれれば考えといたのに」

そう言えばそうか。
「決めなきゃ駄目なの?」
「うん。ファミリアの名前は家名になるんだ。だから絶対」
「急に言われてもなあ。家名かあ。貴族みたいだね」
「アッシュは何か考えてんだろ?」

まあ、考えてはいた。
何かダンジョンに関わるような。メイズとかラビリンスとか。
でも、ちょっとまんま過ぎるかな。というわけで。
「アースブリーズなんてどうかな。僕の故郷で“大地の風”みたいな意味があるんだ」
「おっ、なんか良さげ」
「アッシュにしちゃあな」
おい、今の誰だ?

「じゃあ、わたし、ミルカ・アースブリーズ?」
「僕はダイン・アースブリーズ」
「オルト・アースブリーズ。うん、本当の家族になったみたいだ」
「はは、決まりみたいだな。皆、それで良い?」
皆が一斉に頷いた。

それからアルシオを先頭に九人が後に続き、役所に登録に向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

お布団から始まる異世界転生 ~寝ればたちまちスキルアップ、しかも回復機能付き!?~

雨杜屋敷
ファンタジー
目覚めるとそこは異世界で、俺は道端でお布団にくるまっていた 思わぬ″状態″で、異世界転生してしまった俺こと倉井礼二。 だがしかし! そう、俺には″お布団″がある。 いや、お布団″しか″ねーじゃん! と思っていたら、とあるスキルと組み合わせる事で とんだチートアイテムになると気づき、 しかも一緒に寝た相手にもその効果が発生すると判明してしまい…。 スキル次第で何者にでもなれる世界で、 ファンタジー好きの”元おじさん”が、 ①個性的な住人たちと紡ぐ平穏(?)な日々 ②生活費の為に、お仕事を頑張る日々 ③お布団と睡眠スキルを駆使して経験値稼ぎの日々 ④たしなむ程度の冒険者としての日々 ⑤元おじさんの成長 等を綴っていきます。 そんな物語です。 (※カクヨムにて重複掲載中です)

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

処理中です...